無題〜前編〜
光「翼〜、つばさ〜、つ〜ば〜さ〜?」
かとり「おう、どうした?」
光「あっオーナー、翼をみなかった?」
かとり「買い物が有るとかでサングロイアに行ったぞ」
光「私を残して…ひどいなぁ」
かとり「まぁたまには良いじゃないか、それよりAKの準備が出来てるぞ、
早く行って調整を済ませてこい、後で俺が連れていってやる」
光「うん、それじゃ約束だよっ!」
一方翼はサングロイア市に有るスーパーで買い物をしていた。
翼「やっぱりシチューにはジャガイモが必要だよ…」
などと言いながら様々な物をカートに積まれたかごに詰め込みレジに持っていった。
店員「あらお嬢ちゃんお使い? えらいわねぇ〜」
翼「いえお使いじゃないんです」
店員「あらじゃ自分で料理するの?」
翼「うん、今日は特別なの」
店員「あらら、じゃ頑張ってね。 はいお釣り」
翼「ありがとう、じゃあ」
と、何故か顔を赤らめながらレジを抜け、スーパーの袋に今購入した物を納め、外に置いてある自分の自転車の前かごに荷物を載せた。 この自転車は基地とサングロイア市を毎日往復するヘリコプターに便乗させていたのだった。12才の子供には少々きつい荷物を載せた自転車はふらふらしながら郊外に向かう。
光「ふぅ〜、今日の調整は時間掛かっちゃった」
かとり「ご苦労さん、それじゃサングロイアに行くか」
光「ちょっと待って、シャワーを浴びてから行くよ」
かとり「それじゃヘリポートで待っているからすぐに来いよ」
光「は〜い」
翼は自転車を降りてそれを押している、重い荷物を載せた状態ではとても丘を登ることは出来ない。 彼女の視線はただ一件のビルに注がれている…ただ丘の中腹にビルはそこにしかないがそんな事は気にしちゃいけない。
翼はようやくそのビルに辿り着き、その前に自転車を止め玄関の前に立つ。
翼「……来ちゃった」
ぽつりと呟く、暫くドアの前でたたずんでいたが意を決し、チャイムを押し込んだ。
SE「ぴんぽ〜ん」
翼はドキドキしながら反応を待った…だが、何時まで経ってもドアが開く様子がない、
不審に思った彼女はドアノブに手を掛けてみる、するとそれは鍵が掛かって無くなんの
抵抗もなく開いた。 中には誰も存在せず、電気も全て消されていた。
彼女はいぶかしみつつも中に入り、暫く当たりを見渡していた。 本当に誰もいないようだ。 翼はキッチンが有るとおぼしき方向に行き、先ほど買った荷物を下ろし。
おもむろに鍋を取り出した…。
光「本当にどこに行ったんだろうね? 翼は」
かとり「まぁ大丈夫だろう、その気になれば携帯電話で位置も解るし」
光「だね」
かとり「光ちゃんは自分の好きなように遊べばいいさ」
光「はーい」
キッチン中で翼は格闘していた。 翼自身は料理が趣味なのだが、腕自体はそんなに上手ではない。 が、この料理を食べるのはただの相手ではない、その事を意識して普段より更に懇切丁寧に調理をしている。
ほぼ料理が終わった頃ドアがガチャガチャ音を立て始めた、翼が鍵を掛けたため相手が中に入れなくなっているのだ。 翼はドアに走り寄り鍵を解除した…。
|