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ラーメンの麺(かんすい無くしてラーメンなし)

「拉麺」は何故中国の北方生まれなのか?その育った背景には土壌との深い関わり合いがある。次のような物語として今日に語り継がれている。
 いまから数百年前のこと、ある寒村にひとりのお百姓さんが住んでいた。ある日の事、彼は山から湧き出る清水を使って麺を打っていた。打つうちになにかいつもの麺と違う、具体的に言うと、今日の麺は、いつもにくらべて実に伸びがよいのである。きめもなめらかなのである。今日は何の気なしに山の湧き水を使った。その違いだけだけなのにどうしてこんなに仕上がりに差があるのだろう・・・と彼は考える。
 なにしろ大昔のことである。この山の水に大量のアルカリ性の物質が含まれていて、そのアルカリ質が麺ののびをよくし、なめらかな仕上がりにしているなどという事は知る由もなかった。それから何回も試してみた。その度に前のように素晴らしい出来栄えなのである。何故だろう?いくら考えても答えは出てこない。
ただ自信を持っていえることは、この山の湧き水を使って打てば間違いなくおいしい、麺ができるということである。かれは他の村人達にも勧めた。すると彼のいう通りいままでより数段おいしい麺ができあがる。
 ところでもう一人知恵者がいた。たしかに村人達のいう通り、格段においしいとにかくのびがいいのである。彼は麺を前に沈思黙考の日が続く。これだけのびのある生地であれば、これまでとは違う麺作りの方法があるのではないかということである。
 そうして、ある日閃いたのであるあれだけのびるのであれば、「拉(ラー)」という引っ張る方法が使えるはずだ。早速試してみた、すると麺生地は面白いようにのびる。しかもなめらかですばらしい拉麺の誕生を見たのである。
普通であればこれで話はめでたしめでたしになるのだが、もう一人こだわり屋がいてこれは山の湧き水にその秘密が隠されているに違いないと確信する。
彼は水脈探検にでかける。毎日水脈を求めて山道を歩く孤独との戦いであった。
 するとある日、目の前に湖が広がる。その湖は山間に満々と水をたたえていた。これが水源地に違いない。早速調査を開始する。そしてある日「わかった!」のである。鹹湖(カンコ)であることが。つまりその湖はアルカリ性物質が大量に含まれた湖であり、それが湧き水になっていることを発見するのである。そして煮詰めて固形化したのである。これが鹹石の誕生である。こうして固形化することにより中国全土に運び出される事になる。
 明治43年に開店した「来来軒」は開店当初から鹹石を使っている。札幌の「竹家食堂」でも横浜の荷札がついた鹹石が店の隅に置いてあったという。
カンスイ・鹹水の作用は化学的に見ると、炭酸カリウムの作用に他ならないのです。
カンスイの主成分は炭酸カリウムとたんさんタトリウムで、これにリン酸を配合して作られる。成分規格が作られると同時にカンスイは「かんすい」と平仮名で書かれるようになった。かんすいを使用した麺を中華麺の定義であったが最近では無かんすいのラーメンが登場している。