■ある陰謀の暴露

怪しいことが多すぎる世の中だが、僕が今もっとも怪しんでいるのは自動改札機である。
あの機械、切符吸入から切符排排出までが早すぎねーか? と思うわけである。
一瞬なんてもんじゃない。
切符がまだ全部入りきらないうちから、向こう側で頭を出しちゃってる。ような感じだ。
いくらなんでも早すぎる。
幾度となく、切符が出てくる前に先回りしてやろうとトライしたが、不可能であった。
走ってみたところで、とてもではないが追いつかない。ベン・ジョンソンも真っ黒、あいや、真っ青だ。
思えば、駅で自動改札機を修理している光景をしょっちゅう見かける。
パカッと開かれた自動改札機のメカニズムは、めちゃくちゃ複雑そうである。
何か知んないけど、歯車とかベルトとかICとかギッシリと詰まっている。
いかにもすぐに修理が必要になりそうな高度なテクノロジーが使われているようだ。
しかも、黒々としている。怪しい。
ただ切符や定期券などの磁気を読み取っているだけにしては、いちいち大げさ過ぎるではないか。
間違いない。あれは次元変換による瞬間移動装置だ。
「ザ・フライ」という映画をご存じの方は、思い出したかもしれない。
大きな壺の中にジェフ・ゴールドブラムが入ると、レーザーがシパパパパーッと閃光を放ち、
ボワワーンと煙が湧き、ジェフは消えてしまう。
そして、2メートルほど離れた同型の壺の中から、ボワワーンとジェフ再登場。
次元変換瞬間移動、成功! というシーンを──。
映画では、ジェフと、紛れ込んでいたハエが融合し、怖いハエ男になってしまう。
僕はこのシーンと、精力絶倫となったハエ男が際限なく恋人に挑みかかり、
もう、ヒイヒイ言わせちゃってるシーンだけを覚えている。
うらやましい。ハエ男。ヒイヒイですよ、ヒイヒイ。
下半身の悩みはさておき、SF映画の中の空想科学かと思われていた次元変換瞬間移動装置が、
こんなかたちで日常生活に入り込んでいたとは、背筋が寒くなる。
影の黒幕が誰かは知らないが、まったくもってうまいことやったもんである。
でも、何を企んでるのか全然分かんない。
切符を次元変換瞬間移動したから、何だって言うんだ。
便利になるだけじゃん。
わけの分からない陰謀は即刻やめてもらいたい。
わけ分かんないのはオレか。
大丈夫か、オレ。