■奇想天外な「どうぶつ奇想天外」

また、「どうぶつ奇想天外」(TBS系列/毎週土曜夜8時放映)を見てしまった。
そして、考えさせられた。まったく、考えさせられる番組だ。
特に「実験」シリーズには、かなり考えさせられる。
先日見た時には、犬の実験を敢行していた。
中に人間が入ったニセモノ電柱を用意し、そこに犬がオシッコすると、
「がー」とか言ってニセ電柱が犬を追いかける。
犬、ビックリ。スタジオ大爆笑。
……。
この実験から、我々は何を学びとればよいのだろうか。
別の放送では、伊豆・波勝崎のサル苑で実験していた。
バナナを多数ぶらさげたニセ電柱登場。
サル大喜びで「うっきー」とバナナに飛びついた瞬間、
「がー」とニセ電柱がサルを追い回す。
サル、ビックリ。スタジオ大爆笑。
でも、電柱が転んだら、サル、その隙にバナナ奪取に成功! スタジオ、それはそれで大爆笑。
……。この実験は、我々に何を投げかけているのだろうか。
本日放映分では、天才チンパンジーが実験台になっていた。
天才チンパンジーの目の前に好物のリンゴやバナナが置かれ、
飼い主が「待て! 食べちゃダメだぞ」と部屋を出る。
チンパンジー、辛抱たまらずリンゴをかじる。
すると、部屋の照明が消え、赤や緑のランプが瞬くという怪奇現象発生!
リンゴをかじったチンパンジーに反省を促す目的らしい。
チンパンジー一瞬ビビり、同室している犬にしがみつく。
が、チンパンジーなもんで、すぐまたリンゴをかじる。
すると、部屋の家具が動くという怪奇現象発生!
チンパンジー一瞬ビビり、同室している犬にしがみつく。
が、何せチンパンジーなもんで、すぐまたリンゴをかじる。
すると──。
…………。この実験には、どのような学術的意義があるのだろうか。
そういった意味では、実にいろいろ考えさせられる「実験」である。
まさか、ただ動物をビックリさせて喜んでいるわけではあるまい。
──「動物がビックリするサマを見ておかしがる」以上の意味を汲み取りなさい。
──ただ表面的におかしがっていてはダメですよ。
──さあ、考えましょう。
つまり番組は、我々に考えるきっかけを与えてくれているわけである。
ありがたいんだか、何だか……。
そういえば、「どうぶつ奇想天外」にはもう一つ気になることがある。
番組前半は、いつも上記のような「考えさせられる」実験を流し、
後半は真面目な動物ドキュメントという構成が常だ。
このドキュメントもの、たいてい小島一慶がナレーションをしているのだが、
人間におきかえた感情移入が激しいのだ。特に悲しい親子モノでそれは顕著になる。
生まれたての子ヌーがライオンに襲われ、母ヌーの目がアップになる。
「母の目には、悲しみの涙が浮かんでいるかのようでした」
乾期かなんかで置き去りにされた子ライオン。みゃーみゃーと心細げに鳴く。
「『お母さん、僕を置いて、いったいどこに行ってしまったの?』。悲しみに満ちた子ライオンは、
そう泣いているかのようでした」
……。
「かのようでした」って言やあ何言ってもいいのかよー!!
い、いや、こんな浅い反応ではいけない。
我々は、感情移入たっぷりのナレーションから、もっと深い何か、
もっと有意義な何かを汲み取らなければならない。
いったい何を……? 分からない。まだ、分からない。
そういえば、「どうぶつ奇想天外」にはもう一つだけ気になることがある。
アフリカもので登場する、羽仁進監督の存在である。
何の監督なのかよく分からないのだが、番組中では何の紹介もなく、
もう「羽仁」=監督なのだ。知ってて当然のことなのだろうか。
黒澤明=監督つうぐらい、知っているべき事柄なのだろうか。
しかも監督、よく画面に登場する。監督なのに。
分からない。
あ、もう一つだけ気になることがあった。
司会、みのもんた……?
みの……?
こ、これはどう解釈したらいいのだ!
分からない。僕には分からないことが多いが、
この番組の分からなさ加減は群を抜いている。
だから僕は来週も、「どうぶつ奇想天外」を見てしまうのである。
もうすぐ30歳なんだけど。

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