■ヨーロッパのかほり

仕事でヨーロッパに行ってきた。
詳細は当分後に報告するかもしんないけど、たぶんしないと思う。
なぜこんなにも自分にとって更新が面倒なのか、最近ちょっと分かった。
ホームページって、結局原稿を書く作業じゃん。
だから仕事とあまりにも近いのである。
ふだん、いやがる体を無理矢理Macに縛りつけ、
死にものぐるいでだましだまし原稿を書いているわけですが、
その間隙を縫ってまた原稿を書くのは結構しんどいものがあるわけです。
と、言い訳をしてみたところで、ヨーロッパの話。
フランス、スペイン、イタリアと順調に仕事を終え、
イタリアはミラノのマルペンサ国際空港にようやくたどり着いた。
ちょっとした空港ストがあって飛行機が飛ぶかどうか不安だったし、
「午前中はミラノの街でも散策してみっか、なんかオシャレな感じだしー」
なあんて立ち寄ってみたのだが、結局ミラノも池袋も同じで、
街には人がたくさんいるもんだからそれだけで疲れきってしまい、
小1時間ほどでミラノをあとにし、ほーほーのてーで空港に向かったわけである。
エアフランスのカウンターで、午後8時55分発のパリ行きが飛ぶかどうか確認する。
「この飛行機、ホントに飛ぶかなあ?」
チケットを見せると、受け付けのお姉さんは極めてにこやかに対応してくれた。
「あら、この便で行くと、パリ−成田便への乗り継ぎがギリギリね。
ちょっと待ってて。変更できるかどうか確認してみるから」
素晴らしい!
前日に空港ストの情報を聞いた時、いろんな人から、「格安チケットは絶対に変更できないんだよ」、
「ああかわいそうに」、「いいじゃん、イタリアでゆっくりすれば」とか言われて絶望していた僕にとって、
お姉さんは天使のように見えた。
どこかに電話をしたり、隣のおばさんと話し合ったお姉さんは、天使の微笑みを浮かべながら、
「大丈夫よ、ひとつ前の便に変えておくわね。ボーディングは6時30分からよ」
わお! 2時間も早まったじゃねーか。
お姉さんにお礼を言ってカウンターを離れた僕は、ちょっといい気分でソファーに腰を下ろした。
出発予定まであと4時間近くある。
でも、僕はなぜか空港で時間をつぶすのが苦ではない。
都会で1時間過ごすなら、空港でのんびり4時間つぶした方がまだましだ。
そして、伸びをしながらふう、とため息をつこうとした瞬間である。
ここでちょっとため息をついてみてもらいたい。
人は「んふー」と息を吐く前に、同じぐらい息を吸うものだ。
僕も人類のはしくれとして、スタンダードに息を深く吸い込んだ。
その瞬間、常軌を逸した衝撃が僕を襲い、めまいがしてぶっ倒れそうになった。
強烈な匂いが、僕の鼻孔から脳を直撃し、神経を刺激しまくりやがったのである。
すげーくさい。強力だ。パワフルだ。破滅的壊滅的なくささ!
なんだ! なんなのだ! いったいナニゴトが起こったというのだ……!
もしや毒ガステロかなんかか!
遠ざかる意識を何とか呼び戻しながら、僕は世紀末的悪臭の源を探した。
目がしばしばしてよく見えない。
細目であたりをサーチすると、おわ〜〜〜ッ!
なんと向かいの太ったおばさんが気分よさそうに靴を脱いでいるではないか!
丸太のようなおばさんの素足は、真っ直ぐ僕に向かって投げ出されている。
しかも目測では、僕の鼻の穴がおばさんの足の裏から最も近い距離にある。
ああ、これが熟成されたヨーロッパの香りなのね……。
そういえば高校の頃、デートすることを「アシクサ」と言ってたなあ……。
高校生は金もクルマもないから、デートと言えばとにかく歩き回る。
で、足が臭くなるから「アシクサ」……。
そして僕は、意識を失……っちゃえればよかったんだが、
そうも都合よくいかず、そっとそのソファーから立ち去ったのだった。
しかし都合13日間のヨーロッパ取材の中で、
僕のホームページに一番ふさわしいのは本当にこのネタだろうか。
久々の更新なのに、これでよかったのだろうか。
書き終えた今、若干の不安が胸をよぎっている。