1 巻 (まだ平和に旅してた頃に書いた捏造なので、今となっては色々とアレですがご容赦ください)
2話 チィ 何か、いいことに使いたかったんだ。何か嬉しいことに。 強すぎて持て余し気味だった、オレの力。 こんな使い方じゃなく、なんでもいいから、何か、優しくて温かいものに。 だから、こっそりやってみたんだ。 ちょっとだけ寂しくてさ。暇だったし。なんとなーく、創ってみようかなって。 もうかわいいだけのペットを創るのはやめて、オレの、家族を。 そしたら出来た。ちゃーんと上手にできたよ。 こんなことも出来ちゃうんだなー、ってなんだか怖くなって、1度でやめといたけど…… そうしてチィが生まれた。 家族。 小さかった頃にちょっとだけ甘えてみたかった、優しいお姉さんみたいな子が出来上がった。 自分の家族。 ちょっとだけ寂しいとき、辛いとき。 『仕事』 をしてきた夜。 いつでも傍にいてくれて、なんでも話せる人がいてくれたらな…… なんて思ったんだ。 でもいざ出来上がってみたら、これが可愛くてさ。 辛い話なんか、一切耳に入れないようにして、甘やかしたくなっちゃって。 いつでも幸せに、笑っていて欲しくて。 自分が甘えたかったはずが反対に甘えられて、でもそれがなんだか嬉しくて。 柔らかい髪を撫でてあげるとすごく喜んでくれて、いつもこっちが癒されてた。 オレ、チィを作って、本当によかったよ。 1人残していくことになるなんて、考えたこともなかった。ずっと一緒にいるつもりだった。 大切だった主と、大切な家族。 一緒に眠ってたら、少しは寂しくないかな。 王が目覚めそうになったら、その前にしっかり起きられる? チィは寝ぼすけじゃないから、大丈夫だよね。 その時はちゃんとオレに教えてね。 その時が…… チィの声が聞ける、最後になるかも知れないけど。 甘えたかったのなら、お母さんみたいな人が出来上がるのでは?(←セルフツッコミ) まぁ、ある程度の年になってから作ったのなら、それも恥ずかしいってことで。 過去が出てないのに見切り発車です。何のお仕事してるんでしょうね? あまりいい事じゃなさそう妄想で。 正式に過去編が出たら削除しなきゃかもしれませんが、出来杉君すぎて友達がいない子供時代を設定。 魔法生物は、『創り出せても、普通はペット止まり』 説。アニメEDのヤツみたいな。あれをチィに作り替えた、でもよし。 『ファイは王に作られた』 説も、それはそれで萌えかも、と、密かに思ってます。
18.5.31
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2話 出会い 最初から予定が狂った。杖が残り、イレズミが消えた。 そして…… 道連れができた。 人を自由に異世界を渡らせることのできる術者は、この人だけだと聞いていたから、先客がいてもおかしくはなかったけど。 まさか、同行することになるとは思わなかったよー。 魔女さんだけがいるかと思いきや、隣を見れば、ほぼ同時に着いたらしい黒い人。 何かをお願いしに来たんじゃないのかな? ひどく傍若無人でケンカ腰。うるさいよー。 それから、オレ達のことなんか構ってられない風に、なにやら切羽詰った感じの少年。 必死な様子で、ぐったりした女の子を抱えてしゃがみ込んでいる。 たった今出会ったばかりのこの人達と、一緒に移動しろって言うの……? オレ、逃げなくちゃいけないのに。 目的が違うのに、一緒に旅なんかできるのかな……? 背中を覆っていたイレズミが、ふわりと一瞬で剥がれ落ちていく。 あうー。これ施すの、……結構大変だったんだけどなー。 重さなんてないはずのそれが剥がれたとき、いろいろな枷までもが一緒に外れた気がした。 押さえがなくなって、感覚が鋭くなって。 魔力を使い果たした今のヘロヘロ状態じゃなかったら、自然に力が溢れてしまいそうな…… 困るよ。 力が回復しても、無意識のうちに魔法を使ってしまわないよう、しっかり抑えとかなきゃ。 もしもあの人が追ってきたら、この子達まで巻き込んでしまうよ。 大変だ。抑えのきかない状態で力を撒き散らしたら、どんな痕跡が残ってしまうことか。 世界を渡ることができても、行った先をあの人に知られたら元も子もないんだけど…… 全ては必然って言われても…… そんなの本当かな。 本当に一緒に行かなきゃいけないのかな。 一緒に行動する必要性が、これから本当に出てくるのかな。 こんな子供と、それから、この熱血な黒い人と。 どうやら一目惚れじゃないみたい? ファイのイレズミは、やっぱり一針一針彫られたのか、それとも魔法で一瞬でプリントできたのか。 広範囲だからなー。彫ったら痛いよなー。 ……まさか、王様が手ずから彫ったりしてないでしょうね?
18.5.31
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3話 必然 渡された魔法生物は、『渡る世界をコントロールできない』って言ってたけど…… 最初に送り込まれた先が魔女さんの知り合いの家ってことは、最初の1回はサービスってことなのかなぁ? 改めて、道連れになったメンバーを観察する。 シャオランと名乗る少年がしっかり抱きかかえた、助けたいっていう女の子は抜け殻だ。 記憶も想いも、かわいそうに命もほとんど残っていない。 でも…… とても深い。なんて深いんだろう。 この小さな身体の中に詰まっていた力は、きっとオレの力なんかより、ずっと大きくて強い。 この子は、とても強靭で、大きくしなやかな器。 一体どうして、それが全て飛び散ってしまうような事態に陥ってしまったんだろう。 それが魔法絡みの事件なら、なるべく近づきたくないんだけどな…… 幼なじみで、お姫様だって言ってたっけ。 気を失ってる間もしっかりと抱きしめて離さないなんて、この子のこと、よっぽど大事なんだねー。 それから、終始仏頂面な黒い人。 全体的な色だけじゃなくて、名前も黒くて笑っちゃったー。 魔女さんの所にいた時と同じく、ここでも自分以外の全員を警戒しまくってて、話にならない。 人を異世界に送れるほど力のある人が身近にいたっていうのに、魔法生物には全然免疫がないみたい。 モコナって子が何か行動を起こすたびに、ギョッと目を剥くので面白い。こんなに可愛いのにねー。 やっぱり、狭い世界にいちゃダメだよね。 今日1日だけで、オレより大きな力を持った人に2人も会っちゃった。 そしてあとの2人は、オレなんかと比べ物にもならないくらい、強い意志と生命力に溢れてる。 魔法はもう使わないつもりだから、そうすると、もしかしてこの中ではオレが1番弱いかもー。 わー、なんか、初めての経験だなぁ。 『この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ』 なーんて魔女さんが言ってたけど、そんなのなんだか嫌だ。 必然とか運命とか、そんなの信じてない。 次元の魔女さんが対価にイレズミを所望した。 →魔力を抑えるものがなくなったから、感覚が鋭くなった。 →微かに力の欠片らしきものを感じ取れたから、引っ掛かっていた羽根を見つけた。 →羽根のおかげで、女の子は助かった。 ……こういうのが、魔女さんの言う必然なの? じゃあもう、オレはこれでお役目御免、ってことでいいんじゃないのかな。 それなら、あの黒い人にも、これから何かやることがあるっていうのかな。 この子の羽根探しに関わるつもりはないって、こんなにはっきり宣言してるのに。 それともまさか、オレに関係してくる、とか……? そしてオレ自身にも、何かこの人に係わる、他の役目があるっていうのかな……? あーなんか、とりとめのない話に。 侑子さんの言うとおりに小狼に説明しながら、自分では全然信じていないファイだといい。 もっともらしく小狼を納得させたあげく、「良くわかんないんだけどねー」って言うのがたまらんです。 ショックを受けた様子の黒鋼が笑える。実は内心感心してたのかも。
18.6.6
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4−5話間 同室 得体が知れない、なんて言われちゃったよ。 でも、それはお互い様でしょー。 「お世話になってるのに、贅沢言わないのー。空き部屋だって、そんなにある訳じゃないんだろうし」 オレだって、君みたいな人と一緒に寝る予定はなかったよ。 君みたいな、真っ直ぐで、熱い人と。 オレとは正反対だよね。 目的がハッキリしてて、他には目もくれない。 ……と見せかけて、実は何も見逃さない。 目的達成の手段を得るためかな。それとも、普段から危険と隣り合わせの生活だったのかな。 常にアンテナは張り巡らせてるんだね。 でも取り敢えず敵じゃないんだから、そんなに警戒心剥き出しにしなくてもいいんじゃないのー? わざと威嚇してるのかな。フトンもそんなにあからさまに離して敷いちゃったりしてさ。 オレ、今日は一生分の魔力を使い果たして疲れ切ってるはずなのにー。 こんなに強力な対抗意識をガンガン向けられたら、気になって眠れないよー。 「ねーねー黒たん」 「妙な呼び方すんな!」 あーもう。夜なのに、声大きいよ。 「明日は黒たんも一緒に行くよねー?」 「……」 「ね?」 「……あの白いのが、羽根が見つからなきゃ移動しないって言うからな。しょうがねえ」 「そのためにも、頑張って探そうね。早く見つかるといいねー」 「……」 「そんなに警戒しないでよー。オレ黒ぴーを襲ったりしないよ?」 「……どうだかな」 ちぇー。やっぱり全然信用されてない。 そりゃあ、やろうと思えば殺れるけど、さ。 今は誰かに危害を加えるような気力も体力もないし、ハッキリ言って興味もないんだ。 暇だから手伝うのは構わない、って言うのは本当なんだけどね。小狼君大変そうだし。 でも基本的に、オレは自分のことだけで手一杯なんだよ。 他人になんか、係わっている余裕はない。ないはずなのに…… うー、むこうが気になるよう〜。 オレ、誰かと一緒に旅するなんて初めてだ。 考えてみたら、チィ以外の誰かと同じ部屋で寝るのも初めてだよ。 この相容れない空気。 チィには自分の意思も個性もあったけど、結局はオレの分身だったんだって、よくわかったよ。 時々かわいいワガママを言ったりもしたけれど、決してオレと対立したりはしなかったもの。 困っちゃったな。 1人で逃げる気マンマンだったから、急に道連れって言われても、正直君たちとどう接していいのかわからないんだ。 次元を渡る魔法具が生き物だった、ってだけでも予想外なのに、他に3人も一緒だなんて。 あの人が目覚めて追ってくるかもしれないのに、誰かと一緒に逃げるなんて無理でしょう? 子供達を巻き込むわけにはいかないし、───でも、この人は強そうかも? ちょっと、ほんのちょっとだけ。心強い、かなー。 ……なんて、思ったらダメだよね。だって関係ない人だもの。 でも1人では逃げられないなら、この人が子供達を守ってくれないかなー。 ああ、ダメダメ。そんな勝手なこと言ったら、迷惑だよね。 色々と考えちゃって、気になって気になって眠れないよ〜 ───とか思ってたはずなのに、いつの間にか朝になってた。 夢を見た。ってことは、眠ってたんだよね。あれー? そして、オレが目覚めた途端にまた張り詰めてしまった君の気配に、なぜかちょっとだけ、気分が凹んだりしちゃったんだ。 ……おかしいよね。 ファイさん友達いない説。うちのはどうやら、王様ともアレじゃないみたい? そして黒鋼に懐くの早すぎです。興味ないとか言いながら。 おかしいな。心を開いてラブラブになるまでは異様に眠りの浅いファイ、で行くつもりだったのに。 他サイト様では、この夜のうちにデキてしまう黒ファイもいらっしゃるというのに、わざわざ布団を離して寝てるってのはどーなんだ。
18.6.7
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5話 采配 どこから探し始めていいかわかんないけど、取り敢えずリンゴを齧りながらの情報交換。 初めての世界を探索するには上々のお天気だけど、橋の上にいると、川風がちょっと冷たい。 小狼君のも黒りんのも袖が短いけど、2人とも寒くないのかな? まぁオレの国に比べたら、格段に暖かいんだけどねー。 空ちゃんと嵐さんが用意してくれたこの国の服は、今まで着ていたのよりもずいぶんシンプルで動きやすい。 でも襟も袖口も、それからおなかの辺りも、なんだかすうすうして心許ないよぅー。 黒たんの服が、やっぱり黒くて笑っちゃったよ。誰が見ても、この人は黒い印象なのかな。 オレ以外のみんなは、やっぱり誰かに送ってもらったんだね。 そうだよね。2人からはその手の力は感じられないもの。 他の世界に誰かを渡せるほどの力の持ち主は、そんなに多くないはずだ。 それが同じタイミングで3組も集まったってことは、やっぱり偶然じゃないってことなのかなぁ? 緊急事態で突発的に送られた、小狼君とサクラちゃん。 やんちゃのお仕置きで飛ばされた黒ぴー。 小狼君の国の神官さんも、黒っちの国のお姫様も、タイミングを計った訳じゃなさそうだよね。 それにもちろんオレだって、自分の都合であの瞬間に跳んだ。 ……それとも自分の国から跳んだ時間は関係なくて、同じ時間に集められた? 同じ目的を持つもの同士が集められたというなら、必然とは言わないよね。それは作為だ。 逃げてきたつもりだったのに…… 結局は逃げられないよ、ってことなのかな。 オレたちはそれぞれの目的のために行動しているようでいて、実は何かをさせられようとしているのかもしれない。 高い視点から見ないと分からない、どこかの世界を操作する1コマとして。 次元の魔女の差し金なのか、それとも他の誰かの介入なのかは判らないけど。 魔女さんには、何もかもが見えているのかな。 あなたが采配を振るっているんですか? オレたちが何かを期待されているのならば…… 踊らされてみようか。魔女の掌の上で。 このメンバーにどんな役割が振られているのか、それは不明だけど…… でもどうせ逃れられないなら、自分から参加した方が、まだマシかも。 黒りんあたりは、「冗談じゃねぇ」 とか言いそうだけどね。 どうせあの人が目覚めるまでの期限付きなら、それまでの一時だけでも楽しんでみようかな。 常に脳裏にちらつく面影を、一時だけでも忘れていられるように頑張ってみてもいいかな。 楽しんで、参加してみてもいいかな。 ほら、なんだか周りが騒がしくなってきた。 ファイさん切り替え早っ! なんか書いてるうちに、前向きな人になっちゃった。 いや、「どうせ忘れられない」らしいんですけどね。萌えが足りなくてすみません。
18.6.8
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