第一回 コケ(藻類)を取る薬


 家に水槽をおいて魚や水草を飼う。 誰もが一度は経験のあることだと思う。
 このとき、魚の飼育がうまくいく、いかないに関わらず、水槽のガラス面や水草、砂などになんだかもやもやした‘コケ’のようなものが気になってくる。ひどいときには水槽水が緑色になり、中も見えない状態になることさえある。
 このとき困り果てた飼育者は何とかそれを押さえたいと思うだろう。
 ここで誰もが考えつくことはこの緑やら茶色やらのおこがましいものを薬のようなもので取り去りたいと考えるのが妥当だと思う。
 そして、アクアショップや量販店に‘コケ’取り薬を求めるだろう。
 するとあたかもそれらを撲滅させきれいな水槽を作り出すことが可能なように思われるパッケージや店員にいろいろすすめられ‘コケ’取りと称するものを購入してしまうのが現状であるだろう。
 確かにそれはそれでコケを抑制するのに十分な効果効能が期待できるものがあるかもしれない。また現実に‘コケ’だけをみればその生長を休止させるものはある。


 コケ取り薬と呼ばれるものには様々な薬剤が配合されたものがある。一例を挙げると塩素系の除草剤、漂白剤のようなもの銅などの殺菌力のある重金属を使用したもの酵素や活性剤などの有機物を利用したものなどがある。
 ここでもう一度考えてみたいのはなぜ‘コケ’が水槽に発生するのか という原点である。
 我々の想像する理想のアクアリウムとは、透き通った水に緑の植物が繁茂し、花畑を乱舞するように泳ぎ回る魚たち。誰がみても心が和む というものではないのだろうか。
 自然の川でも生活排水等の影響のないところでは水も澄み、ある程度水草が生え、魚たちが群をなして泳いでいる、いわゆるメダカの学校状態である。
 メダカも本メダカ、黒メダカなどは保護がなければ近い将来絶滅してしまうおそれのある生物に分類されたばかりである。
 このようなことはなぜ起こったのか、その原因は人為的ないろいろなものが考えられるが、今回は‘コケ’の観点だけからものをいうと、生活排水が入り込み、有機物量が増大し、水が腐食し、リンや窒素の濃度が上昇し藻類等が繁茂する。それらがひどくなると有り余った栄養を藻類(植物性プランクトン)が利用し、増殖を続け、あげくの果てに枯死し、またそれが微生物に分解され酸素を消費する。この状態を赤潮と呼ぶ。


 では、アクアリウムに置き換えれば簡単に理解できるはずだ。
 魚も入れず濾過器を回し、定期的に水を換えれば誰もがきれいな水を保てることはわかるだろう。
 そこに、ひとたび水草を植え込み、魚を乱舞させ餌を与える。こうすれば水の中に大型の生命が入りそれらが代謝により老廃物を水中に溶かし込むことになる。たとえば水草は古い葉を落とし、栄養を利用し新芽を出す。魚は老廃物を排出する。
 また、魚などの動物を飼育する場合餌を与えるだろう。その餌はすべて魚に食べられるわけではない。水に溶解するものもかなりあるのだ。
 アクアリウムでは自然の川や池と違い通常、水に対する生物生存密度が高い。またその水量を浄化する能力も低いと同時に水の入れ替わりは換水に頼るしかない。
 これらの状態の善し悪しにより我々が生活排水で川や海を汚すのと同じことが起こるのだ。
 アクアリウムでは生活排水のようにリンなど藻類に必須の元素を大量には供給されることがないため赤潮のような状態にはならず、いやな‘コケ’という状態で水質悪化は停止している。また、もし、大量の栄養がアクアリウムに供給されたとしても水量は少ないためそれが有機物であれば、赤潮発生以前にそれを分解するのに多くの酸素を必要とし、酸素欠乏による全生物の窒息死という状態になるだろう。


 このことをふまえ、藻類が発生する原因は過剰な栄養の供給、もしくは浄化能力の欠如であることが分かったと思う。
 このような栄養は水に含まれるだけではなく、濾過層や底砂に多く蓄積されその濃度が徐々に上昇する場合が多い。
 そのような環境に‘コケ取り薬’を投入すればどうなるだろうか。


 コケ取り薬は
 植物すべてに何らかの被害を与える。藻類を枯死させる能力のある化学物質等には必ず高等植物植物にも多かれ少なかれ影響を与える可能性がある。
 生態系の基盤となる濾過細菌など有用な微生物にも何らかの被害を与える可能性がある。
 様々な水槽内物質と反応し、蓄積されるおそれがある。
 植物全般にある程度の被害を与え、それら枯死した植物を分解するのに過剰な酸素を消費し酸素欠乏を引き起こす可能性がある。
 動物の皮膚や鰓に何らかの被害を与える可能性がある。


 これらのようなことが底砂や濾過槽が汚れていればいるほどアクアリウムという生態系はコケ取り薬という化学物質に過剰に反応する場合が多い。
 コケ取り薬を使用し、水草を枯らした。魚を死なした。などという例が山とあることを知っていただきたい。
 これらコケ取り薬の使用方法や弊害等の記載が市販品ではあやふや(わかっているメーカーはない?)なものがほとんどでメーカーの製造物責任は逃れられないものだと思われる。
 コケ取り不要 だとか 水変え不要 などのうたい文句は消費者をバカにしている誇大広告である。
 そのようなものがあるのなら、どぶ川や汚染された池や海など存在するはずがなく、我々はもっと川へ生活排水を流してもそのような薬剤で安全に無害化できることとなるだろう。


 もし、コケ取り薬を使用してある程度その目的を達成したとしても、その藻類が発生する要因となる過剰物質を取り去ったことにはならない。
 このことは目には見えないが、腐った食品が臭いからと言って、それをビニールに包み大切に保存しておくのと同じことで、また同じことを繰り返せば腐った食品を保存しておく場所が無くなりそれを捨て去らなければ解決しないことになることがわかるであろう。


 水質でも何でもそうであるがなにが原因でそうなったのか、その原因を改良するということが一番確実で大事である。

 アクアリウムでもし、何らかの薬剤を使用したり、水変えもせず数ヶ月うまくいったとしてもある日このように覆い隠したはずの臭いものが顔を出したときにはもうその生態系は取り戻しのつかない状態になっているかもしれない。


 ではどう処置をすれば良いのだろうか。


・飼育密度が高いのなら、浄化作用(水槽では濾過面積)をまずは増やす必要がある。
・換水回数を多くする必要がある。(回数を多く換水量を少なく、大量の換水は生態系に大きな変動を与え好ましくない。)
・底砂、濾過槽等異物の蓄積され易いところを少量ずつ、まめに掃除する(回数を多く清掃量を少なく、大量の清掃は微生物に大きな変動を与え好ましくない。)
・有機物を吸着させる活性炭等の使用を心がける。(性能の高いものとしてハイパーカーボン等の商品を推奨する。活性炭はある程度の能力を消費すると、吸着物の排出作用が認められるので注意が必要。)
・イオン交換なども有効(市販されているものでNaやCl交換型のものは使用しないでください。伝導度が上昇し、好塩性藻類の発生を招く危険性があります。)

 

逆浸透膜はどう?
 厳密に言えば生体にはよくありません。
 イオン交換であれば陽イオンであれば陽イオンを均一に交換してくれます。しかし逆浸透膜の場合その膜を通過する粒径のイオンであればそれらを選択的に通過させるため作り出された水は偏ったイオン水ということになります。
 たとえば0.5nmの粒径以上をカットする膜があったとします。このまくではカルシウムイオン(0.544nm)やマグネシウムイオン(0.592nm)は遮断します。しかし、ナトリウムイオン(0.434nm)やアンモニウムイオン(0.376nm)、塩素イオン(0.368nm)等(まだあるが)を透過させ偏ったイオン水を作り上げていきます。(記載数字は水和イオンの直径)
 海水など高伝導度水を作る場合の基水の場合は問題となりませんが、数100μS程度の水の場合は非常に問題となり得ます。

 

 これらの処置は問題が起きてから行っても改善には相当な日数を要する。セッティングして生物を飼育し始めたときから心がけておく必要がある。
 また、日々アクアリウムを観察していればその少しの異変に気づくであろう。その少しの異変を見逃さず、薬などの使用というよからぬ化学反応に頼ってはいけない。
 現在、化学jは進歩し様々な化学反応で様々なものを作り出している。生活の向上と引き替えにダイオキシン等の環境ホルモンを我々は知らず知らず体内へ取り込んでいる。
 アクアリウムではその行程と結果がいち早く分かるだろう。
 我々は生活向上のため、‘コケ取り薬’を使っているのかもしれない。


 コケ・・ここで言うコケは藻類を指す。厳密に言えばコケとは鮮苔類です。

 

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