第2回 濾過材について1
“濾過”と一口で片づけてしまいますがそれは複雑なものなのです。
単に、目に見えるようなものを引っかけそれ以上は通過させない。たとえば豆をざるでこしとるようなものから、イオンの置き換えや微生物による物質変換なども“濾過”とよばれます。
そもそも濾過とは水に含まれるものを取り除くもしくは変換させることを指し、その時々の都合により有用物と非有用物に区別されてしまいます。たとえば純水を作る場合、懸濁物やイオンを物理もしくは化学的に取り除いた濾液すなわち水だけになればその目的は達せられたことになります。しかし、濃縮還元という方法では前者の副産物であるイオンや有機物が重要となってきます。
アクアリウムでもその飼育する生物により必要な場合と必要でないものが存在します。 たとえば、アフリカ河川産シクリッドではpH4の水質に適合しているものがいます。その水にはpHを降下させる物質、すなわち水素イオンが存在します。水素イオンはカチオンなのでそれに対比するアニオンが必要となってきます。そのアニオンは通常天然水域では腐植酸と呼ばれる有機酸や硝酸イオンが対比します。では水草水槽や高pHを好む魚を飼育する場合はどうでしょう。これらのものすなわちこの環境では老廃物という位置づけでそれらを濾過せねばならないと言うことになってしまいます。
余談になりますがpH中性以上の水をディスカスや水草などが育てやすいとされる弱酸性に水質を即座に変えたいとき、よくリン酸を使用する方がおられます。なるほどpHは希望の値に下がりpHだけをみれば良いでしょう。しかし、天然水域ではリンの濃度が高いとは人為的な排水等がない限り通常は存在しないのです。そしてリンは富栄養化物質として洗濯洗剤や食器洗い洗剤では使用しないことになっています。メタリン酸やトリポリリン酸は金属イオンを封鎖する強力な洗剤ビルダーで高度成長期に大量に使用され河川の汚染を急進行させた厄介者なのです。それらの影響が琵琶湖などでは今も尾を引きずっているのではないでしょうか。pH降下剤にはリン酸は使用するべからず!異質な水質を作り生体に良からぬ影響を与えます。
では何を使えばよいのでしょう。通常は有機酸(TCAサイクルに入っているものが良い)や硝酸がベストです。でも一般の方は使用しないで下さい。その状況により入れるものが変わります。
水草の場合は二酸化炭素を使用しpHを降下させねばなりません。ただし硬度が高い場合はそれを中和する酸やリン以外のキレートを使用します。すみません大きく話がずれました。
濾過は一般的にまず大きなものをウールやカルチャーリングでこし取る物理濾過から始まり、ゼオライト等のイオン交換剤、活性炭等の物理吸着剤、微生物による生物濾過などが主体となってきます。ここでまずウールだけで濾過をしている方、でも調子がよいといわれるかたへ一言、
それは、ウールがある程度目詰まりを起こし微生物が定着しているからです。洗ったら最後バランスは崩れます。それでも崩れない人へ一言、それではそのウールをはずして何も入れないで下さい。でも調子がいいでしょう。それは底砂やその他のところへ微生物が定着し、濾過をつかさどっているのです。無論、有機物など目に見えるものが多い場合は新のウールでも物理濾過という面では効果があるのです。
生物濾過とは水の流れがある程度遅く、その微生物が適した胆持体となるべき住みかが大きいほど生存密度が高くなるのです。
そのため、生物濾材として有効なものは濾過槽の単位体積あたりの微生物付着表面積量で決まるのです。現在、シポラックスやパワーハウスといった濾過材が良いと思われている方も多いかと思います。なるほど、海水のようにpHが高いためアンモニアが多く存在しやすい水質では酸素の供給量を増やし好気的に濾過を進める必要があります。そのため大きな濾過層で通気がよい構造つまりリング状やバイオボールといった構造が望まれるのです。しかし、先程述べた、単位体積あたりの微生物付着面積は1mmの砂を充填した場合の方がずっと広いと言うことになるのです。そのため、海水魚飼育水槽では大きな濾過槽が必要となるのです。
では、水草水槽や小型魚飼育水槽はどうでしょう。大きな懸濁物もなく、アンモニア等の有害物質の心配もまずはないような環境では最終産物の硝酸塩がその生態系を左右する結果となるのです。
そうそう、みなさまがお嫌いな 藻類(通称コケ)の主力栄養素です。ここにリン酸なんか入れたらコケの天下になってしまいます。
このような環境では活性炭やゼオライトのように物理化学的濾過材では歯が立たない微量なレベルの話なのでここは微生物以外に手の出せない世界なのです(お金さえかければ化学的、物理的に処理は可能。でもみなさまが想像している金額より2桁ぐらいの誤差がある)。そうすれば単位体積あたりの微生物付着表面積を大きくし、水量を微生物の活動に適したものにせねばなりません。
このようなところにドーナツのように穴があいて水が通るだけの無駄な空間は論理に反しますし、実際効果は認められません。と断言できます。そんなことないとおっしゃる方へ一言。先程述べたように他の場所で微生物が活動しているのか、元来の濾材の役割をしていない、すなわちリングの穴がふさがるだけの異物の蓄積による水流低下、もしくリング以外の箇所がつまり、リングには少量の水流しか流れ込まない場合などが推測されます。前者の場合、濾過槽を空にしてもその生態系にはさほど影響はなく、後者の場合は濾過槽の洗浄をすればバランスを崩してしまいます。 このような多孔質のリングをお持ちの方は吸水口付近に少量配置し、その他は金槌である程度の大きさにつぶして使った方が効果があります。 つぶすぐらいならはじめから、不定形もしくは水の流れが悪そうな濾過材、比表面積が大きそうな濾過材を選ぶべきです。
水草水槽などでは硝酸塩濃度が藻類の発生を左右します。そのため脱窒反応が重要となります。通常この反応は酸素の存在しない嫌気環境で効率よく行われるため、ある程度濾過材が汚れ(つまる)なければ活性しません。
これらのことから、多くの方々が藻類に悩まされるのです。生物濾過もその目的に応じた濾過材を選ばなくてはなりません。
市販されているものは良いことしか書いていませんよ。その目的を見定めて下さい。次に立ち上げ時、微生物による濾過が十分に行われていない環境下では、活性炭等の物理濾過材やゼオライト等のイオン交換材を使う必要が生じてきます。ただし、ゼオライトの場合はナトリウム交換型ではなくカリ交換型が水草水槽には好ましいでしょう。
また、活性炭を使用すると肥料成分が吸収されてしまうなどと言うことがよく言われますが、イオン化している肥料などでは活性炭があろうがなかろうが関係ありません。活性炭はイオン交換しません。
また、高度な肥料は錯化合物として栄養を水草に吸収されるような構造を取っています。これらは活性炭により吸収される可能性は高い。ですが、初期、いるものといらないものを区別して選択的に取る濾過材はないのだから、それらを平均的に減らし、いるものすなわちバランスのとれた栄養素を追加してやれば万事よし。ということになるのです。
今までは、常識であったことが非常識になった方もおられるかと思いますが、それが真実なのです。
観賞魚の業界のソフトはまだまだ発展途上です。ソフトが確立されていないのにハードがあっても仕方がないと私は思います。ソフトのレベルをあげ、それに伴うハードを考えるべきですね。 メーカーさん。