京間の不思議


皆さんは、現在、京間にお住まいですか、それとも江戸間ですか?
あまり意味の無い事を書きましたが、
実際住んでいて、違いを肌で感じ無い人も多いのでは無いでしょうか?


他のホームページで京間について、畳の大きさが、江戸間と違うとしか書いてありませんが、
京間と江戸間、何故この様な寸法があるのでしょう?


奈良にある設計事務所のホームページの説明では、京都では、引越の際、建具や畳を持ち出して使う習慣があったような事が書いてありましたが、果たして本当でしょうか?


この説明が「京間の出来た本当の理由」では、2つ、疑問が残ります。
1、何故、京都だけが建具や畳を持ち出す習慣があったのか?奈良、大坂に無いのか?
  京都の人が、大坂ヘ引越すれば、建具や畳をどうしていたのか?

2、何故、京都には「ウナギの寝床」と言われる間口が狭く、奥行の長い家が多いのか?
  文化や習慣は、京都を中心にして日本全国ヘ波及していたのに、何故これらの文化は波及しなかったのか?


全ての疑問を説明するのは難しいので、簡単に書きますが、

まず、地域によってイロイロな寸法があるのは、
地域によって「1間」の大きさが違ったからです。
1間の大きさとは、普通6尺平方ですが、京都では6尺3寸、毛利藩や盛岡藩では6尺5寸を採用していました。
何故、地域によって1間の大きさが違うのか?疑問が残りますが、「1坪」をまず理解して下さい。
地域によって、1坪に対して「お米の取れ具合」が同じでは無く、1石を収穫しようとすれば、1坪は、6尺5寸平方必要であったからでしょう。

石高について (1歩とは1坪と同じ面積です)

盛岡藩の物差しについて (下段の筆者メモに、京間の考察があります)


京都だけに、何故、建具や畳が画一化されたのでしょうか?
同じ関西なのに奈良や大坂には無いのは何故か?
ウナギの寝床のような建物は、何故出来た?


その理由は、節税対策です。本来、土地には石当りとか、坪当り(面積)で課税していたのですが、京都では、間口1間について幾らと言うような課税方法を採用していました。ですから京都では、間口が狭く奥行きのある建物が多いのです。 また、1間当たりの寸法の取り方が、建物の柱の芯々では無く、畳の大きさを基準にしたので、京都では、建具の大きさが、画一化されたのです。天皇のお膝元では、他都市と同じような方法で税金を取りにくかったのでしょうか?奈良や大坂とは、ちょっと違う文化が、狭い間口の建物の多い理由です。他の都市では純粋に建物の面積に対して課税していたので、町並は京都とは全然違います。ですから、建具や畳が画一化されたのは、結果の産物として、出来たのでは無いかと思います。



絶滅危惧、本来の京間サイズ(モジュール)

現在、建てられている住宅のほとんどは、本来の京間ではありません。残念ながらこのサイズで建てますと建材のロスが多くなり、非効率(ゴミが多く出たり坪単価が高くなる)で、工務店サイドでは建てにくくなっています。


本来の京間モジュールと現在モジュールの違いは、

本来の京間モジュールは、8帖の部屋で計算すると、畳が2枚約3820と柱(4寸として)をとれば、柱の芯々は約3940になり半間のモジュールは
985oになります。985×2=1970で一間は6尺5寸となります。
現在の京間のモジュールは
955か960で設計をしています。
960モジュールで8帖だと、畳は3720と柱120の寸法で、3820-3720=100も小さくなります。


よって現在、京間として建築される住宅は、(955か960モジュール)畳の寸法で計りますと、本来の京間モジュールではありません。ちなみに私の自宅は
955モジュール(955×2=1910で一間は6尺3寸)です。
建物の面積に対して課税される現在では、京間モジュールの採用に、あまり意味が無いように思います。
でも、私の知り合いに910モジュール(
一間は6尺)を京間として説明されて家を建てた人がいます。(詐欺にあったみたい)


最近の住宅建設で、メーターモジュールを採用している物件を見る事が出来ます。廊下や階段が広くあって土地に余裕があれば、京間や江戸間にこだわる事は無いと思います。しかし、和室文化の衰退は残念です。



余分ですが、私の自宅では、天井の高さも、チョット高い(8尺1寸5分)です、京間モジュールの違いは、面積だけではありません。
また、以前、住友林○の上棟式で、施主さんが営業さんに京間や江戸間について質問されて、営業さんは答えられず、代わりに私が答えた事がありましたが、その際、
住友林○の住宅(910モジュール)をプレハブと言ってしまい叱られた事がありました。
メーターモジュールや部分的に円形等が出来ないので、ついつい本当の事を言ってしまった。
たまたま住友林○の人も建築史の事については、無知のようでした。


プレハブとは、プレファブリレーション(あらかじめ工場にて生産されたものを現地にて組み立てる事)の略です、また最近、建てる住宅で採用している、工場にて木材を寸法カットやほぞ加工を行う事を、プレカットと言う



寸、尺、坪、石、反 等のあまりなじみの無い単位が一杯あって、理解しにくいと思いますが、興味のある人は、いろいろ調べれば、日本の歴史の一端が、ちょっとでも理解出来るかもしれません。
 

是非、ご参考にして頂きたいサイト

 【 山代慶長一揆 】     【 近代こもんじょ館 】    



このページをご覧になった方へのお願い
   
   尺平方(1尺×1尺)のサイズは、一般になんて表現しますか?ご存じの方は是非、教えて下さい。

   
   尚、「絨毯の業界」では、尺平方の呼称は「才」(サイ)と表現するとありますが、

   「石の業界」では、尺立法(1尺×1尺×1尺)を「才」と呼び、現在、宅急便でも使う単位と聞きました。


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