家族計画(Win) ※ディスク2枚組
メーカー D.O. 総合評価 90点(名作)
ジャンル ADV
発売日 2001/11/02
シナリオ 山田一 D.O.2001年秋〜冬の4ヶ月連続リリースの第3弾。
「加奈」「星空ぷらねっと」の山田一氏のシナリオのみならず、D.O.初のI've起用も話題に。
原画 福永ユミ
サウンド 中澤伴行・WATA


個人的エピソード
「星空ぷらねっと」が凄く好きな作品だったので迷わず購入。
福永ユミさんの絵が好きだったのも購入動機の1つではありますが。
個人的には全く不安視していませんでしたですよ(ぉぉ

内容
司が拾った中華系の女の子春花(チュンファ)。
彼女と二人で生活を始めた矢先に押し掛けてきた謎の男、寛。
いつの間にやらアパートを追い出され、更に流浪の少女末莉と、
自殺未遂の女性、真純を従えた一行。
そして、一軒の暖かそうな古い一戸建てを見つける。
その家の所有権を主張する青葉と、司のかつての同級生、準を交えて、
寛の提案する「家族計画」がいよいよ始動する!
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量はおよそ500MB、他の容量を選択することはできません。
別に大した容量じゃないので構わないのですが、OPムービーに高品質版と通常版を用意してるんだったら、インストール時に選択させてもいいんじゃないかとは思いました(^^;
まあ浮いてもせいぜいが100MBなんですけどね。

ゲームはオーソドックスな選択肢分岐型のADVなので早速システム周りの解説へ。
システムについてもD.O.のゲームをプレイしている方には「いつもの」で終わってしまいますけど(ぉぃ

セーブ数は27個。
ゲーム的な難易度はさほど高くないので足りなくて困るということはないでしょう。
サムネイル等は表示されませんが、シーンタイトルが付記されてどんな場面でセーブしたか判るようになっています。
やっぱりこういう仕様は便利ですね。

スキップは右クリックからのポップアップメニューで起動。
既読および強制の両方を実装しています。
共通テキスト部分のボリュームが多いこのソフトですが、スキップはかなり高速なので再プレイ時のストレスなどはあまり感じないかと思います。
バックログは99ページ分。まあ十分な量といって差し支えないかと思います。
ホイールマウス対応っていうのはちょっと便利ですけど、最近はよく見かけますしね(^^;

鑑賞系はCG・BGM鑑賞とシーン回想。こちらも一通りは揃っています。

欲しい機能は大体揃っていてある程度の安定性もある無難なシステムかと。
個人的にはウィンドウが非アクティブ状態の時に動作を止めるのは止めて欲しいですけど。
このゲームではほとんど頼りませんでしたけど、攻略見ながらやる時とか不便なんで(^^;

絵とか
原画は福永ユミさん。私も結構好きな部類に入る原画家さんです。
可愛らしい女の子を描く方で一般受けする絵柄だと思います。

なんですが、気になる点もチラホラと見受けられるわけでして。

立ち絵に関して言えば枚数がちょっと少ないとかポーズが堅いという印象を受けますし、
イベント絵に関しては概ね魅力的なのですが、いくつか頭と身体のバランスが崩れている絵や「いくら何でもこれは鋭角すぎだろ」というくらい顎が尖っている絵があったのが残念な点でしょうか。
そういう絵柄の崩れがない絵に関してはいいと思うんですけどね(^^;

塗りの方は淡いトーンの色使いが特徴。クオリティは水準といったところでしょうか。
でも背景は通常シーンもイベントもよく描き込まれていてよかったかと。

CG枚数は82枚(パターン違い除く)
プレイ時間を考えると少なすぎるとは思うものの、プレイ中はそれほど物足りなさは感じませんでした。
できたらもうちょっと増やして欲しかったとは思いますが(^^;

しかし個人的に1番気になったのは景や楓に立ち絵がないことでしょうか。
それなりの登場頻度と重要性を持つキャラなのにセリフだけというのはちょっと不自然かと思われます。
まあ細かいことなんですけど一応ってことで。

音楽とか ※音声はありません
BGMはCD-DAで再生、全24曲収録。うち2曲がボーカル曲です。
I'veのボーカル曲は支持するもののBGMはそれほど評価していない私ですが、
これに関して言えばとりあえずゲームの雰囲気には合っています。
質の方は若干のバラつきがあって一部は良質ながら概ね普通の出来ってところでしょうか。

お気に入りは「貝殻」「君を想う時」「refrain」と「同じ空の下で」「philosophy」の両ボーカル曲。
(全部OPとEDに関係した曲だったりしますね、これ)
特に「君を想う時」と「refrain」は使いどころが上手すぎて不覚にも涙が……(^^;

でもボリューム制御に関しては不満が残ります。
このソフトではシステムによってCDの再生音量を制御しているんですが、急に大きくなったり小さくなったボリュームが続いたりする個所が幾つかあって若干興がそがれてしまいました(^^;
どうせならこういう細かい演出までしっかり凝って欲しかったです。


音声はついていませんが、テキスト分量を考えるとこれで正解かと。
下手に声を付けるとこのボリュームでは改悪に繋がりかねませんから。
しっかりキャラに合った声ならば軽妙な家族の掛け合いを見てみたい気もちょっとだけしますけど。

シナリオとか
笑って、泣けて、最後はやっぱり笑顔なお話。
一言で表するならやっぱりこんな感じになるんですかね。

この作品のシナリオの流れを大まかに書くと以下のような感じでしょうか。

序盤〜中盤まではコメディタッチで進行していく個性豊かな面々によるドタバタな日々、各人が抱えた事情から時折起こる衝突・「家族計画」に降りかかる様々な問題を織り交ぜつつ、主人公達が構成する「家族計画」という奇妙な集団の中に連帯感のような物が生まれていく過程を丁寧に描いています。

このパートが長いということで必然的に共通部分が増えているわけですが、基本がコメディでそれぞれのキャラが非常に立っているためかテキストのテンポが良くて長さを感じさせません。
衝突など途中で既にいくつかの山場を用意していることもこれの一因でしょう。
この部分を長く取ったことで主人公達が「家族計画」に深い思い入れを持つようになる理由も容易に理解できますし、プレイヤーの感情移入を助けていると思います。

また余談ながら、個人的には少しずつ「家族計画」によって癒され変わっていく主人公にも好感が持てました。
辛い境遇なのに(というか、このソフトのキャラは多かれ少なかれそういう要素がありますが)それでも懸命に生きる姿は世のヘタレ主人公にも見習って欲しいです(笑)


さて、物語が終盤に入るころから、話はシリアスな色彩を強めていきます。
多くを語るのはネタバレになりますし、私の拙い文章力では適当にぼかした表現は書けないのでごく簡単にだけ。
「家族計画」が内包する問題ゆえに迎える終焉。新しい生活。
今度は消えなかった絆。そして笑顔での再会、ハッピーエンド…。
感動しました。安っぽい言葉ですが本当に。

タイトルからすると「家族愛」がテーマと思われるでしょうが実際のところは、「温もり」「愛情」「決してなくならない絆」といった物をテーマにしたシナリオだと思うんですが、テーマを見事に描ききったラストかと。
ゲーム的な観点で見ても終盤の盛り上げ方、テーマの見せ方は見事だったと思います。


とここまで誉めまくりだったのでいくつか気付いた難点だけ最後に。

共通部分が長いのは個人的には気にしていませんが、個別シナリオとのバランスを考えるともう少し短くても良かったように思います。バランス問題を考慮しないとしても長いのは事実なので人によっては繰り返しプレイするうちに飽きがくるかもしれません。
またボリュームが多すぎるためなんでしょうが、数ヶ所シナリオの不整合が見られたのがちょっと残念でした。

しかし逆にいえば私の目にはこれくらいの粗しか見当たらなかったということです。
私は「家族」とか「絆」といったネタに弱いので多少割り引いて読んでいただきたいですが、そういう自分のツボを差し引いてもよく出来た物語であるのは間違いありません。

総評
いや〜いい買い物しました。
家族ネタ、コメディ、ラストはハッピーエンド…とあらゆる点でツボ。

まとめ。家族ドラマの傑作。

とりあえずゲームで泣いて笑いたい人は買って損はないでしょう。
あと私のようなハッピーエンド至上主義者の家族ネタ好きは親を質に入れてでもやりましょう(ぉ
家族の温もりが懐かしくなって実家に電話でもしようか、そんな気にさせてくれる2001年最高ランクの1本です(^^;

書いた時点での総プレイ時間 21時間30分(コンプ)
お気に入りのキャラ 高屋敷家の全ての面々(ぉ
お気に入りのセリフ 「司、生きることは、問答無用なのよ」
「一緒にいないと、幸せになれないもの」

初版2001/11/10