SNOW(Win) | |||
メーカー | スタジオメビウス | 総合評価 | 75点(佳作〜良作) |
ジャンル | ADV | ||
発売日 | 03/01/31 | ||
シナリオ | 望月JET・まちゃ吉・Klein | 「悪夢」「絶望」で知られるスタジオメビウスが純愛に挑んだ意欲作。その挑戦そのものと度重なる発売延期が色々な意味で話題を呼んだ(^^; | |
原画 | 飛鳥ぴょん・こぶいち | ||
サウンド | Famishin・ふぁむ・I've Sound T&N Music Factory |
※以下の評価はDVD版についてのものになっています
個人的エピソード |
「悪夢」の頃からずっと思ってたんですよ。この絵で純愛ゲームができたらいいのにって。 なので購入に関して迷いは何もありませんでした。 まあそうは言うものの正直絵だけが目的で中身に対する期待はほとんどなかったんですが(ぉぃ |
内容 |
主人公は万年雪に囲まれた村で、老舗温泉旅館を経営している従姉から旅館のバイトを頼まれる。 昔に一度だけ行ったことのある、記憶の片隅に残る雪の村。 だが、その村に着いて早々、落石事故に遭い瀕死の重傷を負ってしまう。 次に目が覚めると、従姉が経営する温泉旅館「龍神天守閣」にいた。 重傷を負っていたはずが、なぜか無事に生きている。 そして、その日から主人公は、見えない運命に翻弄されていくのだった。 降る雪はただ白く、真実だけを埋め尽くしていく…。 (パッケージ裏より) |
システムとか |
必要容量は1.7GB、ただしなぜかBGMファイルをDVD-ROMから読み込む仕様なので これだけの容量とは別に起動にはディスクが必須となっています。 BGMはWAVファイルで収録してるんだし音楽ごとインストールさせてしまえばいい気がするんですが…(^^; 音声なしにも関わらず1GBを超えていたりとちょっとインストール関係には疑問が残ります。 システムはMebius33という独自システムを使用。 右クリックでメニューが出せないなど操作性に若干の難はありますが、動作などは安定しており特に不満はありません。 セーブ数は64個。サムネイル表示もされてどこでセーブしたか一目でわかる親切設計です。 難易度的には(クリア順制御はありますが)簡単な部類に入るソフトなので、数的に困ることもないと思います。 スキップは既読/強制のいずれかをメニューで選択して画面上部のスキップボタンまたはCtrlキーで実行。 どちらも速度はかなり速く快適です。 ただウィンドウが非アクティブになるとスキップがキャンセルされるのはやや不便かと。 攻略見ながらプレイする人には不便なので、その点だけは直して欲しかったかも。 バックログは99ページにわたって読み返し可能。 この辺はVAのAVG32と同様です。 鑑賞系はCG・BGM鑑賞とイベント回想。 Hシーンのみならず一枚絵が用意されている全てのイベントを見られるのは比較的珍しいですね。 操作性やスキップに若干の難はあるものの独自システムでこれだけ立派なものが動作するならば十分合格でしょう。 恐らくはベースになっているであろうAVG32のいい部分をもう少し積極的に取り入れれば完璧と言ってもいいレベルにまで進歩するとも思うのですが……まあそれは高望みというものですかね(^^; |
絵とか |
かわいいけど、これって323コp(削除) というわけでとかく某原画さんの絵に似てると言われがちなこの作品。 まあ実際よく似ているので何も言い返すことはできないのですが(´Д`; でもそういう問題は抜きにしてかなり可愛らしくまた一般受けもする絵柄だと思います。 若干立ち絵や澄乃の一枚絵の一部で原画が乱れているのが惜しまれますが……(^^; 描いた時期の違いとかが原因なんですかね? と文句も書いてはいますが基本的には塗りも含めてレベルはかなり高いです。 中でも背景CGのレベルの高さは見事の一言。 個人的な経験だけで言えば今まで見た中で1番レベルの高い背景でした。 雪の質感をここまで見事に表現した物は他にないのではないでしょうか。 万年雪の村という背景が白一色の舞台なのに、画面から単調な印象を受けないとは素直に脱帽。 枚数はCGモードによれば101枚(一部パターン違いも含む)。 ここから独断と偏見で「普通ならこれはパターンCG扱いだろ」というものを除くと82枚。 プレイ時間を考えるともう少し枚数が欲しいところ。 実際プレイしていて何ヶ所か「ここはCG欲しいなぁ」と感じる場面がありましたし(^^; ちなみにこのソフトではいくつかの珍しいシステム(こちら参照のこと)を採用しているのですが、背景スクロールや抱っこシステムにはさほどの意味を感じませんでした(ぉ 反面、もう1つのリアルタイムで雪の量や降り方を変える演出は素晴らしかったです。 有意義な演出と無意味な演出の混在というのが何ともこのソフトらしいところかもしれません(マテ |
音楽とか ※音声はありません |
BGMはWAVで収録、全23曲。うち4曲がボーカル曲となっています。 日常場面で流れる曲はちょっと微妙ですが質は総じてなかなかのハイレベルだと思います。 こういうこと書くとアレですが、折戸サウンドが好きなタイプの人なら割と気に入るんじゃないかと(マテ 折戸信者の私なんかはモロにツボでした、ハイ。 恒例のお気に入り曲は「飛龍」「消える温もり」「記憶の棘」「儚雪」。 他にボーカル曲で「SNOW」「雪のかなた」、この辺でしょうか。 また挿入歌「空の揺りかご」にもちょっとグッと来てしまいました。 …流すタイミングが上手かったというだけで歌としてはかなり微妙な出来なんですけどね(ぉぃ さて、この作品にはボイスがありませんが、これは正解だと思います。 ボイスが付いていたらかなり冗長になっていたことは疑う余地なしだと思うので。 正直澄乃に音声が付いていたら最後までプレイできた自信がありません(^^; 口癖が「えう〜」やら「あんま〜ん」だもんなぁ……。 ちなみにボイスが付いてない代わりかは知りませんがSEはかなり凝っています。 雷の音、ポリバケツを運ぶ音、雪を踏みしめる音、etc. これでかなり容量を食っているだけあって1回聞いてみる価値はありかと。 こういう細かいところへのこだわりは他のところにも見習って欲しいかも。 |
シナリオとか |
よくできてはいるんだけど、一味足りない。 このソフトを一言で評するならばそんな感じになると思います。 まず始めにこれは様々なところで言われていることでもあるので書いてしまいますが、この作品はKeyの作品に極めてよく似ています。 これはメーカー側が自ら模倣を認めているので私の思い込みということではないでしょう。 実際キャラクターや一部シナリオの展開は「Kanon」に、そして現在→過去→現在という全体としてのシナリオ構成は「AIR」にそっくりです。 さすがにここまでやってはやり過ぎのような気がしなくもありません(^^; ただ、単にマネしただけの手抜き作品かというとそんなことはなく。 少なくとも模倣品ではあっても手抜きをしているということは絶対にありません。 きちんと丁寧に作られているし、原作(あえてこう書きますが)よりも優れた部分も持った一つの作品になっているかと。 当然劣る部分もあるわけですが……まあそれはおいおい。 まずは仕様から簡単に説明。 このゲームの基本的な流れは澄乃→Legend→桜花・しぐれという構造になっています。 澄乃をクリアすると本編より過去を描いたシナリオ「Legend」がプレイできるようになり、「Legend」を終了するとしぐれシナリオのフラグが立ち、他の全てのシナリオを終えると桜花シナリオが攻略できるようになっています。 まあノベルやADVではしばしば見かけるクリア順制御型のシナリオですね。 ちなみに旭に関してはサブヒロイン的な扱いなのか桜花の前であればいつでも攻略可能です。 (個人的にはLegend編のネタバレが激しいので澄乃→旭→Legendのプレイ順を推奨しますが) で、ここからは感想なわけですがまずは長所から。 まず思ったのは文章が非常に読みやすいということ。 決してテキストが上手いというわけではないのですが、テキスト描写があっさりしているのでとかく冗長になりがちな日常シーンもそれほど気にならずに先に進めました。 会話のテンポや掛け合いも良かったですし、日常描写としては文句なしに合格でしょう。 後述するようにこれは弱点にもなっているのですが、前半のコミカルな日常パートに対しては明らかにプラスに働いていたかと。 またキャラクターのアクはかなり強烈ですが、音声が付いてないことでそのアクを個性として受け入れられたのも個人的には大きかったです。 いや音声って本当にプラスにもマイナスにも強力に働きますね(^^; そしてここからは難点。 難点として挙げられるのは主に2つ。 1つは描写の掘り下げが浅いということ。 これは「テキスト描写があっさりしている」という特徴が裏目に出た結果と言うことも可能なんですが、実際キャラクター同士が関係を深めていく過程やクライマックスに向けてのの描写が少なく、結果盛り上がりを欠いてしまっています。 例えばLegend編でのエピソードを記憶していない主人公がしぐれに急速に惹かれる理由付けなどは何もないことや、泣きゲーのはずなのに山場でもサラッと流しちゃうのはいかがなものかと。 演出レベルは決して高くないんだからその分テキストで頑張らないとですよ(´Д`; もう1つは全体構成の拙さでしょうか。 細かくクリア順制御をしている割にそれを生かした構造になっていないのが勿体無いなぁと。 例えば桜花(澄乃でも可)としぐれは完全にパラレルワールドになってますし。 別にパラレルが悪いというのではなく、パラレルなのであればしぐれを桜花の前に持ってくる意味がないと思ったり。 せっかくクリア順制御をするならその順番を上手く生かしたり、細かい部分の矛盾をきちんと潰すような細かい部分の配慮が欲しかったところ。 ……こうしたミクロな部分で気になるところがある――特に山場での盛り上げ不足は痛いです――ものの全体としては丁寧に作られているし最近の中ではよく出来ている方ではないでしょうか。 それこそKey作品と比較しても山場での演出などでは劣るものの、日常シーンなんかはこちらの方が遥かに秀でていると思いますし。 「模倣自体が許せない」というので無ければ十分プレイする価値ありかと。 |
総評 |
絵しか期待してなかったので、正直びっくり。 こういう予想の裏切りならいつでも大歓迎です(笑) まとめ。お手本に忠実に作った泣きゲー。 ちょっと物足りない部分もあるにはありますが丁寧に堅実に作ってあります。 とりあえずここ数ヶ月の間に自分がプレイした中ではベストの作品です。 これで山場で何かもう一味あれば良作以上に化けるんですが…ま、これでも十分か。 |
書いた時点での総プレイ時間 | 23時間15分(コンプ) | ||
お気に入りのキャラ | 若生桜花・鳳仙 | ||
お気に入りのセリフ | 「わらわを…! ひとりにしないで!!」 |
初版2003/02/28