35−36話間 ひとり
広いお部屋に柔らかいベッド。静かにゆったりと眠れたはずなのに……
ここに来た最初の夜は、またアブナイお客さんが来たら大変だって、割れたガラスを片付けてそのままみんなで眠った。
でも昨夜からはね。
せっかくお部屋がたくさんあるんだから、1人で1部屋ずつ使うことにしたんだー。
この旅に出てから初めてだったね。1人ずつバラバラに寝るのは。
……君と、別の部屋で眠るのは。
空ちゃんの下宿では2人で。春香ちゃんの家ではみんなで。カイル先生のところでは3人で。
なんだかんだ言って、黒むーとはずっと一緒だったね。
オレ、変なんだー。
旅の初日はあんなに他人の気配が気になって眠れなかったのに、今度は静か過ぎて眠れないなんて。
それまではずっと1人で眠ってきたのに(チィはよく浮いてたけど)、我ながら適応するの早すぎー。
やっと眠れたと思ったら、今度はまたあの人の夢なんか見ちゃってさ。
ダメだなぁ。みんなと一緒のときはなんとか片隅に押し込めていられるのに、1人になるとすかさず囚われちゃうね。
忘れるな、ってこと、だよね……
朝まであと少しだし、もう起きてることにしたんだー。また夢見るの嫌だし。
お店のケーキや朝食のパンも焼かなきゃならないしねー。
今日が寝不足なら、今夜はきっとよく眠れるよね。
「何やってんだ」
「えっ!」
うわぁ、びっくりしたぁ。
「黒たんかー。どーしたの?」
「こっちが訊いてんだ。まだ早過ぎるだろうが」
「あー起こしちゃった? ゴメンねー。泥棒さんかと思った?」
「…………」
「お店のメニューも決めなきゃならないしさ。張り切り過ぎて目が覚めちゃったんだー」
あ、なーに? やめてよ、その大きな溜め息。見透かされてるような気分になっちゃうでしょー。
「朝ゴハンはまだだよ? もっとゆっくり寝ててよ」
「……」
「寝ないの? じゃあ手伝ってよ! 甘ーいチョコケーキ作ろうと思うんだけどー」
「冗談じゃねぇ! 何で俺が」
ね、そうやって君が逃げてね。オレからはもう逃げられないから。
「……ちゃんと寝とけ。俺らが留守の間また鬼児が出たりしたら、そんなんじゃ殺られっちまうぞ」
「……はぁい」
ねぇ、何でそういうこと言うかな。
何でそう、オレが君から離れられなくなるようなこと言うのかな。
オレを縛り付けておきたいの? そんなのもうとっくに、君に囚われたまま動けないのに。
今後のことを考えると寝不足にしといた方がいいかと思って(笑)、急遽捏造差込みしてみました。
1時ころ眠って3時くらい、ってとこでしょうか。
初日が雑魚寝ってのは、アニメから拝借。アレは寝てたところに鬼児が来たんだけどね。
18.7.17
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36話 朝食
「おいしいっ!」
1口食べて、サクラちゃんはビックリ顔で言ってくれた。
小狼君もモコナも喜んで食べてくれた。
それなのにー。
誰かさんってば、食べる前から仏頂面でさ。1口食べたら眉間に縦皺寄せちゃってさ。
他に食べるものがなかったから、仕方なくなんとか全部飲み込んだみたいだけど。
今までの世界では別に、味についてうるさく言ったりしなかったのにー。
そんなにマズかったのかぁ〜 がっかり……
オレ、頑張ったんだよー。我ながら上出来だと思ったんだ。
サクッと軽く、中はふわふわに焼けたし、香ばしさも甘さもちょうどいいと思ったんだけどなぁ〜
砂糖は気持ち控えめにしたんだけどな。全然入れないわけにはいかないし。
むぅー。
明日は、黒っぴのだけパンの中身を変えてみようか。
オレ、負けないからね!
黒鋼にとって、基本的に甘いものは食事じゃない。……ってことに気づかないことには。
と、子供の頃 「シリアルは主食ではなく、おやつだ」 と思ってた私が主張してみます。
昔から料理してたのかなぁー? 作り方さえ見れば、ファイのことだから上手にやると思うんだけど、字が読めないことにはねぇ〜
はっ、まさかモコナが読んであげてたのか?
18.7.16
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36話(HOLiC4巻P78) 中間報告
「わーい、侑子、こんばんはー!」
「こんばんは。そっちは夜?」
「うん! あのね、侑子、フォンダンショコラ有り難う! すっごく美味しかったよ!」
「それは良かったわ」
「みんな食べたよ。美味しかったって! 黒鋼はね、侑子がただで差し入れするわけないって、食べようとしなかったの。でもね、ファイがえいってお口に入れちゃった!」
「あらまぁ。新婚さんみたいねぇ」
「そうなの! ラブラブなの」
「あはははは。一口でも食べたことにかわりないわね! ホワイトデー、期待して待ってるわ! お返しは倍返し
!! 」
「ところでモコナは今どこにいるの?」
「桜都国ってとこ! ここはね。サクラのお部屋なんだよ。みんな、お部屋ひとつずつあるの。でも、今お部屋に鏡あるのサクラだけだから、ここからお話してるの」
「さくらちゃんはいないの?」
「うん。今ね、小狼とサクラは下でお店やってるの。黒鋼とファイはお出かけ」
「そう」
「本当は黒鋼と小狼がお出かけするお仕事で、お店はファイとサクラがやってるんだー。でも、これからオトナの時間だからって、小狼はファイと交代なの」
「まー。どこに行くつもりなのやら」
「子供は入っちゃイケナイとこだって。モコナも連れてってもらえなかったー! モコナ子供じゃないのにぃ〜!」
「でもオトナでもないでしょう? よい子は気を利かせてあげなくっちゃね」
「んー、わかった。モコナいい子だから、お店のお手伝いしてる!」
「どんなお店?」
「喫茶店なの。モコナのエプロンもあるの」
「それは素敵ね。なんて名前?」
「お店の名前はまだないの。でもね、看板があるんだよ。ファイが描いたのっv」
「『CAT'S EYE』にしなさい!」
「侑子が読んでたマンガだ!」
「そう、黒ネコ看板の喫茶店といえばそれしかないでしょう!」
「この黒ネコはね、ファイなの。この国でのファイの名前は『おっきいニャンコ』って言うんだよ」
「他のみんなはなんて名前?」
「サクラが『ちっこいにゃんこ』で、小狼が『ちっこいわんこ』、黒鋼は『おっきいワンコ』だよ」
「ファイがつけたのね?」
「あたり! そしたら黒鋼が怒っちゃって、ファイを何度も追いかけ回してるの」
「ーったく、気になる子にちょっかい出しちゃうって。小学生のいじめっ子かって言うのよねー」
「昨日もね、黒鋼がファイを泣かせちゃったから、モコナなぐさめてあげたのっ!」
「最低男だわね」
「あのね、ファイ、いっつも笑ってるけど本当は笑ってないの。昨日も、泣きたかったけど嘘泣きしかできなくて苦しかったの。泣いたって笑ったっていいのにね」
「そうね」
「黒鋼は、ファイのことなんだかイライラしてる。ねぇ侑子、あの2人、今頃ケンカしてないかなぁ?」
「放っときなさい。犬も食わないヤツなんだから」
「何の音?」
「分かんない。お店のほうから聞こえた。モコナ行ってみるね」
「気をつけてね」
「うん! またね侑子!」
「まーったく素直じゃないったら。少しは少年少女を見習ったらどうかしらね」
フォンダンショコラリベンジ。
ホリックからまんま抜粋(紫っぽい部分)で。一部だけ妄想挿入(どピンク部分)してあります。
モコナは天然なのか何なのか。侑子さんはモチロンお見通し。黒モコナ入んなかったー。
ま、侑子の関心の中心は小狼でしょうけど、からかい程度にね。うちは黒ファイサイトですから。
18.7.18
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37話 鞘グイ
そのとき。
実戦中にあるまじきふざけた態度を崩さなかった魔術師は、敵の一撃をモロに喰らいやがった。
塀を壊す勢いで叩きつけられた奴は、暫しぐったりと身動きしなかった。
鬼児の大群に囲まれたこの瞬間、奴は完全に無防備だった───
イライラする。なんでおまえはいっつもそうなんだ。
あれほど倒せ、反撃しろっつったのに。
戦いの最中だってのに、ふざけて軽口ばっか叩きやがって。だからやられるんだ。
余所見したあげく、まともに食らいやがって。たった一撃で伸びちまいやがって。
余裕ぶってるくせに、実際は危なっかしくて見ちゃいられねぇんだよ。
ヒョイヒョイ避けてばっかで、いつもいつも逃げ回ってばっかで。
たまには、真剣に向かい合ってみたらどうなんだ。
死ねないって言ってたのは、ありゃあ嘘か。
逃げ続けてるおまえは、生きようとすることからも逃げてるんじゃねぇのか。
戦いの中に身を置いていたなら解るだろう。命を奪うこと。その命を背負うこと。恨みを買うこと。
それを受ける覚悟がなくて、過去からも逃げようとしてんじゃねぇのか。
あの姫じゃねぇんだ。過去ってもんが、んな簡単に忘れられっかよ。
生きられなかった命を背負った分、尚更生き続けなきゃならねぇんだ。
それすら自分からやろうとしねぇヤツに、心底腹が立つ。
それなりの力を持ってやがるくせに、使おうとしねぇから余計に腹が立つ。
魔法を使わねぇって決めてるなら、それもいい。だがな、代わりの力を全力で示して見せろ。
戦うつもりがねぇなら、全力で逃げろ。気軽に首を突っ込んでおいて、挙句にやられるたぁ言語道断だ。
自分の命が懸ってる時くらい、必死になってみたらどうなんだ。
俺の言葉が届いているのかいないのか、へらへら笑いを崩さないのにも腹が立つ。
普段はうるさく纏わりつくくせに、大事なことは頑としてはぐらかすのが腹が立つ。
この状況で笑うのだって、俺の言葉に正面から向き合う強さがねぇからだろう。
何もかもから逃げてばっかいねぇで、いつか自力で証明してみせろ。自分は俺が守るに値する人間だと。
あんな場所で 「伏せろ !!」と言われてもなー。どこに伏せろと?(笑)
イライラするのも腹が立つのも、いっつも真正面から向き合って貰えないことへのヤツ当たりです。
知世姫のお仕置きを考えると、黒鋼は必要以上の殺生をしていたハズですが……
相変わらず偉そうなヤツだ。反省はしてないもよう。
『守ると決めた者』 の中に、何気に既にファイを入れてる黒助(笑) が、これでもまだ無自覚な朴念仁でいてもいいですか。
まぁ子供達のことも助けるでしょうが、 『守る』 とは違うような……
この時点では、小狼のことは特に心配していないので守る対象ではなく、サクラのことも小狼が守る管轄だと思ってるはず。
で、本物のファイなら守られることをよしとしないと思うんですが、自分が書くと、守られたら死ぬほど嬉しがりそうで困ったものです。……って、あとがき長いな。
18.7.19
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36−39話 白詰草
あんまり浮かれ過ぎてたって、解ってるよ。はしゃぎ過ぎたって。
だって嬉しかったんだ。
小狼君は酒場に入れないって言うから、1人で行こうとしてた黒わんに無理矢理くっついて来たんだけど。
サクラちゃんと小狼君にも、2人の時間をあげたかったし。
なにより、黒さまとお出かけするチャンスだったんだもん。
『一緒にお酒を飲みにいく』 なんて、大人の、普通の友達同士みたいでワクワクしたんだ。
今だけ。どうせいつか離れちゃうんだから、一緒にいられる今だけは、幸せな記憶をためておきたい。……なんて、贅沢過ぎたのかな。
逃げてるくせに、その理由を一時棚上げして今を満喫したいなんて。
名前のことで怒ったままのワンコが可愛くて。
振り向いて欲しくて、イタズラしてまた怒らせて。
鬼児が出たときも、一緒に戦えるのが楽しくて、適当に避けながらおしゃべりしてたら怒られて。
ちょっとドジっちゃった時も、痛かったけど君が庇ってくれたのが嬉しくて。
すっごくカッコよかったから見惚れてて、拍手したら怒られて。
……本気で怒らせちゃった。
─── 「イチバン キライ」 だって、言われちゃったよー。
君がそう言う理由は解ってる。
逃げたい逃げたいって言うばかりで、自分では何もしようとしないオレが許せないんでしょ?
黒たんは、全力で一生懸命に頑張る人が好きだものね。
自分で何も努力しないで、誰かに 『連れてって欲しい』 なんて甘えてるヤツは嫌いだよね。
……ねぇ、オレ、なんだかおかしいんだ。
お酒には強いはずなのに、さっきの1杯のカクテルだけで頭がぼーっとするんだ。
会話も呼吸も、意識しないと普通にできない。オレ、ちゃんと笑えてるのかな。
さっき頑張って上等な笑顔を作ったら、これ以外の顔の作り方を忘れちゃった。
泣き顔なんてもう忘れちゃったし、今はこの笑顔の作り方しか思い出せないんだ。
泣き方なんてもう忘れちゃったけど、今はほんの少し思い出したい気もするんだ。
きれいな歌姫さんから何か重大ことを聞いた気がするのに、もう思い出せないんだよ。
ああ、ごめんね。情報収集のために来たのに、これじゃ失敗だよね。
バーテンダーさんお薦めのお酒をおみやげに買って、お店を出る。
お酒の袋とコートを腕に掛けてヨロヨロ歩き出したら、黒りんが無言でオレを担ぎ上げたからビックリしたよー。
……あぁ、オレ、足も痛かったんだっけ?
ありがとー、黒さまー。
でもそれより、さっきからずっと痛いのは。
今のでなおさら息が苦しくなって、空いてる手で自分の胸を掴んだ。
本当は、黒たんの上着をぎゅうっと掴みたかったけど……
ねぇ、なんで嫌いなのに優しくしてくれるのー。
君に好かれようなんて思ってないよ (好かれたいとは思っちゃうけど……)。
そんな大それたこと思ってないから、これ以上惹かれるようなこと、止めてくれればいいのに。
ここで既に酔ってるっぽいニャンコです。(カルディナちゃんに一服盛られたんじゃ?)
「嫌い」 ショックが、言われた直後から発動してるからです。寝不足だし(笑)
そんな状態で砂袋抱きされたら、絶対吐くー(待て)。
黒鋼が 『命が危なかった』 と認識した場面も、ファイにすれば 『ちょっとドジった』
程度なんだな。
18.7.20
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39話 にゃん
酔っ払い共め…… こいつらには、もう一滴たりとも飲ませねぇ!
ガキは放っておいても大丈夫かと思ったが、姫を捕まえようとすると俺を敵と見做して襲ってくるもんで、やむなく最初に部屋に放り込んだ。
それから部屋中をにゃーにゃー駆け回る姫と、跳ね回る白まんじゅう。
……疲れた。羽根がなくても、もう充分元気なんじゃねぇのか、この姫は。
最後に残ったやっかいなのを、さてどうするかと思案しながら戻ってみると、騒ぐ相方がいなくなったヤツは、またしても満たしたグラスを片手に、妙な形に折った手拭を頭に乗っけたまま、ソファでぐったりしてやがった。
そろそろ潰れるか?
「おい、もういい加減にしとけ」
「え〜、もーちょっとー。こっからはオトナ同士で飲もーよぅ〜」
「ダメだ」
「ケチぃー。あぁー返して〜」
グラスを取り上げてグイッと呷ると、ぽすぽすと片手が上下する。何だそれは、殴ってるつもりか。
つーかストレートで飲んでやがったのかよ。割れよ。
「さっさと部屋に戻れ」
「歩けなーい。黒たん、だっこー」
いつものふざけた調子で手を伸ばしてくるヤツに、こめかみに青筋が浮きそうになる。
落ち着け、相手は酔っ払いだ。おまけに怪我人だ。
「ったく……」
結局こいつも運ぶのかよ。諦めて担ぎ上げると、肩口で 「にゃ〜」 と鳴いた。
部屋まで運んでベッドの上に降ろそうとしたが、ヤツの手が背中から離れない。
「おい、放せ」
「いやー」
酔っ払いと言い争っても仕方ないので、さっさと羽織ごと脱いで離れると、ヤツは衣だけが残された手元を呆然と見詰めたあと、何ごとかを呟いて顔を上げた。
お。珍しくへにゃけてはいなかったが、次の瞬間くしゃりと顔を歪めた。
おい勘弁しろよ、泣き上戸かよ。……と思ったが、涙は流れなかった。じゃあ何だ、腹でも痛ぇのか。
片手を伸ばして羽織を取り上げると素直に手を放したが、代わりに反対側の腕を取られた。不覚。
コイツも学習したと見えて、これ以上脱げねぇようにがっちりと掴んでやがる。……まぁ、無理に振りほどこうと思えば、簡単なんだが。
「おい、放せ」
「……だもん」
「あぁ?」
さっきからなにやらブツブツ呟いてんのを、耳を澄ませて拾ってみれば、
「……たんなんか、キライ、だもん……」
…のヤロウ。いい度胸じゃねぇか。
「オレだって、黒たんなんか、嫌いだもんー」
おまえな、そう言いながら、その手はなんなんだ。俺の腕をしっかり掴んで放さないその手は。
声が震えて、しゃくり上げるみてぇな息遣いをしてるくせに、やっぱり涙は出てなかった。
「オレだって、オレだって、黒たんなんて、いちばん、きらいー ……」
あのな…… 解りにくいんだよおまえは。
あん時はなんでもないようにヘラヘラ笑ってやがったくせして、実は今まで引きずってましたってか。
ったくめんどくせぇヤツだ。
「もう寝ろ」
少し強引に布団に押し込むと、離れそうになった腕に慌ててしがみ付いてくる。ガキかおまえは。
いいから。解ったから。
「いてやるから」
「…………」
「ついててやるから、早く寝ろ」
そう言って子供にするみてぇに頭を撫でてやると、一瞬目を見開いた後、ほわんと笑いやがった。
「くろさまー」
それでも、俺を見張ってるつもりなのか閉じない目を掌で塞いでやると、嬉しそうに笑った口元とは裏腹に、熱いものが俺の指を濡らした。
ホントにややこしいヤツだな、おまえは。ようやくかよ。自力じゃ泣けねぇってか。
それに酒が入らなきゃ泣けねぇってんなら…… たまには飲ませてやってもいい、か?
俺だって今夜は早いとこ眠っちまいたかったんだが…… しょうがねぇな。
挫いた足に追い討ちを掛けたのは俺だし、コイツが今こんなに弱ってんのも、どうやら俺の所為みてぇだしな。
おとなしく眠るまで、もう暫く付き合うしかねぇか。
酔っ払い捏造。楽しかったー!
ハンカチ耳はかわいいよね。どっちが折り方知ってたんだろ? 別名リボン。引っ張って伸ばせばブラジャー(笑)
泣かせるとしたらここしかないんで、ポロポロと派手に泣かせるか、それとも眠ってからにしようかと迷いました。
子供みたいに泣きじゃくらせるのも捨て難かったんですが。
黒助の上着は、あれは羽織でいいんだよね? 法被とか半纏じゃないよね(笑)
18.7.21
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40話 宿酔い
うー、今日は最低だったよ。
朝起きたら、……ってか、まず起き上がれなかったもんね。
頭はガンガン痛いしなんか鳴ってるし、視界はグラグラするし、胸はムカムカするし。
宿酔いって初めてだよー。いつもはこんなに酔ったりしないもの。
絶好調なサクラちゃんとモコナが羨ましいよぅ〜
そのなんとかってお薬、魔女さんに貰いたかったけど、対価が恐いもんねー。
1日死ぬ思いで過ごしたけど…… そのおかげで昨夜のことをあんまり考えずに済んだのかも。
ワンコ達が帰ってきて、サクラちゃんがボロボロの小狼君を追って行ってしまうと、お店に黒るーと2人きりになった。
オレが起きたとき2人はもう出掛けた後だったから、今日会うのはこれが初めて。
わー、新しい刀だね。オレが服と一緒に買ってきたのとは、やっぱり全然違う。
オレ、よくわかんなくて、すぐに壊れるようなのを買ってきちゃってゴメンね。
さぞかし使い辛かっただろうに、それでも何も言わずに使っててくれたんだー。
……やさしーね。
新しい一面を知るたびに、オレの中で黒たんがだんだん大きくなっていく。
とくん。 って、胸が1つ鳴るたびに、どんどん大きくなっていくんだよ。
君はどこまで大きくなるつもりなの。こんなのが毎日続いたらどうしよう。
朝は何を食べて行ったのかな。
昨日の昼に焼いたパンが少し減ってたみたいだけど、もしかしてそれだけだった? なんにも用意してあげられなくてゴメンね。
はい。今日はなるべく甘くないものと思って、頑張って作ったんだよ。
今度は、顔をしかめないで食べてくれるかなぁ?
やっと頭がはっきりしてきて、織葉さんの言ったことについて考えられるようになってきたよ。
管理されてたはずの鬼児に異変が起きている。
それがサクラちゃんの羽根の力の影響なら、急いで回収しなきゃならないね。
……なんて。
そんな話をしながら、実は君の事で頭がいっぱいなこと、黒たんには知られたくないなー。
昨夜のこと、実はちょっとだけ覚えてる。
黒りーとサクラちゃんの追いかけっこのあたりから、だいぶ曖昧なんだけど。
起きたらベッドの上だった、ってのも本当なんだけど、……でもその前に。
ずーっと悲しくて痛かったんだけど、最後はなぜだか嬉しくて痛かったような気がするんだ。
黒ぷいが何かしてくれたんでしょう? そんなに優しくしてくれなくてもいいのに。
オレの中でこれ以上君が大きくなったら、いったいどうなっちゃうんだろ。そのうち破裂しなきゃいいけど。
もう黒りんのことでいっぱいいっぱいなファイさんです。
蘇摩さん入んなかったー。妬くのもいいけど、「嫌い」で頭が一杯で嫉妬する余裕もなかった、ってのもいいですよね。
ただ寂しかっただけで…… って、結局気にしてるんだな。
18.7.23
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41話 杖
今日はお店で使う材料を、サクラちゃんと買出しに行きました。
痛めた足のことをサクラちゃんが気遣ってくれるけど、この杖があるからだいぶ楽なんだー。
グロサムさんの家で、黒ぷーと一緒に作ったタケウマ。持ってきておいて正解だったね。
ちょうどいいのがあったー! と思って昨日お店で使ってたら、帰ってきた黒むーが、夕食を食べた後でしっかり固定してくれたんだよ。
あれは小さいモコナ用に作ったものだから、オレが体重を掛けても大丈夫なようにね。
えへへ。嬉しいよぅー。
パン屋さんで、長ーいパンを買ったんだー。
こんな長いのうちのお店じゃ焼けないし、お店の人が甘くないって言ってたから、誰かさんにもいいかと思って。
どんな味なのかな?
ミニサイズにしたら、オレにも焼けるかなぁー。できそうなら今度作ってあげるね。
「美味しいもの作ってあげよう」って言ったら、サクラちゃん、とってもいい笑顔になったよ。
大切な人には、美味しいものを食べさせてあげたいもんね。
それが自分で作れて、喜んでもらえたら最高だよね。
小狼君はお店で出してる甘い物も好きみたいだから、それならオレが作り方を教えてあげられるよー。
もう1人のワンコは、どんな味が好きなのかなー。どんな物を食べてきたのかな。
日本国と同じくおはしを使って食べてた、阪神共和国のが近いのかなぁ?
君が山ほど買ってきてくれた小麦粉を使って、何かできたらいいのにな。
パンやケーキじゃなくて、やっぱりおこのみやきみたいなのがいいのかもー。
ねぇオレ、黒さまが杖を直してくれて嬉しかったよ。
だからオレも、何か君が嬉しいことをしたいんだー。
どんなことをしたら喜んでくれるのか、いつか、言わなくても解ってあげられるようになりたいな。
知ってることは、まだほんの少し。
甘いのは嫌い。お酒は強いのが好き。
知らない食べ物には好奇心旺盛。
おはしが上手。ナイフとフォークはダメ (でももう慣れてきたみたい?)。
いつかは君の食べたいものを作ってあげられるようになれるかな。
ねぇ、今度また、一緒に飲みに連れてってね?
君の好みをもっと知りたい。手始めに、お酒とおつまみの好みをリサーチするんだから。
小ネタ捏造。やっぱり共同制作した杖には愛着があるのです。
よく分かんないんだけど、左足を怪我した人が杖を持つ手は、右でいいの? 反対のような気もするんですが。
あと、おサイフ代わりの桜を小狼に預けたまま買い物に出てるみたいなんですが、2つある??
それともあれはキャッシュカードで、現金払いもアリって解釈でいいでしょうか?
18.7.24
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41話 白詰草再び
「お、兄ちゃん今日は1人か?」
「ああ。店主に尋ねたいことがある」
「なんやまたか? ただじゃアカンで。飲んでかな」
「おう。強ぇヤツな」
「任しとき」
ステージでは先日と同じ歌。魔術師が聞き惚れてやがった、どうにもまどろっこしい歌だ。
「こないだのきれーな兄ちゃんはどした?」
「あー? ウチの店にいるだろ」
「足の怪我、大丈夫やったか?」
「あぁ、杖突いてやがったが…… あれくらい平気だろう」
あれで案外頑丈な男だ。
「その割には肩に担いで帰ったみたいやったけど」
……見てやがったのか。
「フラフラしてやがったからな。その方が早ぇと思っただけだ」
「また連れて来ぃやー」
「いや。あいつにはもう飲ませねぇ」
人前でアレのお守りは願い下げだ。
「ん? もしかして下戸やったん? なんや、はんなりぼーっとした人やなー思てたんやけど、あれ酔うてたんか?」
「や。それは元からだ」
そう見せてるだけかも知れねぇがな。
「ほんならどした? 帰ってから具合でも悪なったんか?」
「いや…… ニャーニャー騒いで手が付けられなくなった」
「あっはっはー! かわいいやん」
「どこがだ!」
「兄ちゃんに甘えたくてしゃーないねんなー。大事にしてやりやー」
「ああ? 何言ってやがる」
「おっと。……したら兄ちゃん、自分がどんな目ェであの兄ちゃんのこと見てるのかも知らんのちゃう?」
「言ってみろ」
どうせ恐い顔で睨んでるとでも言うんだろう。
「んー、せやなー。ノラ猫を可愛がりとーてしゃあないのに、思うように懐いて貰えんで拗ねたガキンチョみたいな目やな。眉間に縦ジワ寄せて、射殺しそぉな目ェする割には、よう突き放されへんねやろ?」
「……んだと?」
「店の前で騒いでんの見た時は、てっきり刃傷沙汰かと思うて慌てて止めたんやけど。ただジャレ合うてるだけやったんやな」
「…………」
なに、言ってやがる?
「そう睨みなさんなって。ホラ、歌終わったで」
………………
まぁいい。そんな与太話に付き合っている暇はない。
「まいどありー、また来てやー! ……って、どないしたん?」
用を終えて店を出ようとしたところで、もう1つ聞かねばならないことに気づく。
「……1つ訊くが」
「なんや?」
あー、めんどくせー。
「小麦粉屋はどこだ」
「……兄ちゃん、尻に敷かれとるな」
「放っとけ」
キリがないので終わる。ヘタレですいません。小説に近づける努力のカケラもしてなくてすいません。
エセ関西弁ですいません。いじればいじるほどおかしくなるんだなこれが。
カルディナちゃんの心の声として、「おっと。」の次に、(解ってへんのか? この唐変木!)とか入れたいところです。
18.7.26
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