65−67話 決着
夜叉王がいなくなってからも夜毎繰り返されてきた戦に、あの人はとうとう決着をつけたね。
辛い、哀しい選択。
例えまがい物だと解ってはいても、大切な人の影身を自分の手で葬る決心ができる人は、そうはいない。
ただの幻じゃない。羽根の力で、生前そのままの姿で存在する人を。
それはもう、『生きている』 のと同じ。それを無に還せる人がどれだけいるだろう。
強いね、あの人は。
そしてその決心をさせたのが、きっと小狼君とサクラちゃんなんだろう。
それまであちらの王は、決心がつかず、徒に戦を長引かせていた。
その気になれば、もっと早くこうすることができたんだ。
もっと早くに幻の夜叉王を消して、月の城を制し、真の望みを唱えることが。
それができなかったのは、その望みが叶わないことを知っていたから。
例えただの幻でも、戦場でしか会えないとしても、一緒にいたかったから。
ねぇ、黒わんならどうした? 例えば知世姫とかが影身になってしまったとしたら。。
君のことだから、きっと幻に惑わされたりしないで、然るべき姿に還してあげるんだろうね。
オレも、もしもそんなことになったら、黒さまみたいにちゃんとできるように頑張るからね。
……ああでも、わかんない。黒ぽんと会えなくなったら。
君が自分の国に帰ってしまったら、君に万が一のことがあったりしたら、オレは幻だけでも欲しがるかもしれない。本物じゃないって解っていても。
それは間違いだって解ってるし、今はそう言えるけど、いざその時になったらどうなるかわかんないよ。
それが羽根の力で創られている幻なら、サクラちゃんにも返せないかもしれない。
彼女の幸せを願いながら、自分のワガママを優先しちゃうんだ。
ああもう、だから大切な人なんて作りたくなかったのに。そんなのは最初から解りきっていたのに。
オレは弱くなっただけじゃなく、どんどん嫌なヤツになっていくね。
……君のせいだよ。
こんな自虐的になるハズでは……
126話時点で、いろいろと根本に関わる設定が出てきましたね。
そのうち遡って手直しが必要になることでしょうが、もう少し様子を見てからにします。
18.8.24
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68話 合流
ようやく小狼君に、オレたちだってバラすことができた。
わーい、久しぶりー。
……って言うかオレ、誰かと普通に 『会話』 すること自体、半年ぶりなんだよぅ〜〜
オレは口が利けないってことにしてたから、モコナが来てからも戦場ではナイショ話しかできなかったし。
黒たんと2人だけのときはいっぱいしゃべってたけど、なにしろ通じてなかったから。
わーん。長かったよー。
黒ぷいは早速、小狼君のお師匠さんモード。君ってつくづく面倒見がいいよね。
いきなり駄目出ししてるけど、思いがけなく弟子から感謝なんかされて照れちゃって、威厳も形無し。
ふふー、いいもの見ちゃったー。
「わーい、黒様照れてるー」
「誰が照れてる !! 」 って、刀振り回したら危ないよぅ〜
黒ぽっぽをからかうのは命懸け。でも楽しーい!
またその懐かしい紅い瞳で、オレを見てもらえて嬉しいよ。
サクラちゃんに無事に羽根を返して、やっと移動。
この世界は、オレにはちょっと長すぎたね。
誰とも言葉が通じなくて、黒さまだけが頼りで、いつもいつも一緒にいた。
黒ぽんも、オレがどこかでボロを出さないか心配して、いつも気に掛けてくれていた。
そんな贅沢に慣れちゃって、オレこれから先、大丈夫かな。
黒むーの心は知世姫に向かってて、小狼君の先生で、サクラちゃんを庇って、モコナとは仲良しで、オレとは……
オレとは、えーと……
うん。オレがからかった時は、怒って追いかけて来てくれる! ……けど、もうそれくらいしか接点がなくなっちゃうなぁー。
よーし。頑張っていっぱいからかうからね!
モコナの魔法陣が開く。
黒ぷーを掴まえて、それから小狼君とサクラちゃんも。
これだけしっかり掴まえとけば、もう離れて落っこちたりしないでしょー。
今までが贅沢だったんだ。オレだけを見てもらえなくても、旅が続く間は、まだ一緒にいられる。
君と一緒にいられるだけで、それだけでいいんだから……
最初に黒ぷーを掴まえるファイが、かわいくてたまらんです。後ろ向き思考の割に、行動は正直です(笑)
あー半年の間に、何があったことにしようかな。何かしらはあったことにはしたいんですが……
黒鋼には、『ファイに好かれてる気がする。なんとなく』 程度の自覚が出来てるような気がします(その程度かよ!←セルフツッコミ)。
18.8.25
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68−69話 時間
落っこちてみたら、なんだか見覚えのある風景。
花でいっぱいに飾られてるけど、そうだ、陣社だー。
確か清浄で閉鎖的だったはずのそこは、今日は華やかで開放的で和やかムード満載。
わー、蒼石さんの結婚式だー。おめでとー!
以前は独りきりで祀られていた夜叉像が、今は阿修羅像と一緒に鎮座している。
……ああ、よかったね。
夜魔と修羅では、戦いの中でしか相まみえることができなかった。
この紗羅の国でずっと一緒にいられるなら、もう怪異を起こすこともないよね。
よかったね。夜叉王、そして阿修羅王。
あの人と同じ名を持つあなたが、少しでも安らかならば、オレも嬉しいです。
なんて…… そんなこと思っても、オレの国のアシュラ王が喜ぶ訳じゃないけどね。
小狼君とサクラちゃんが着けてたっていう装飾品が、時を経て神器として祀られてるってことは、修羅ノ国はこの世界の過去の時代。オレたちが関わることで、歴史が変わった。
小狼君が浮かないカオをしている意味は、よく解る。考古学に携わっていたなら尚更だよね。
でも、うーん、これはねー。考えると、身動き取れなくなっちゃうんだよねー。
モコナがご神体の剣を吸い込んだことで、あの像が次元の魔女さん作なんだと判った。
なーんだ、そうだったんだー。どうりでソックリにできてるはずだよねー。
じゃあこれも、歴史が変わったことも含めて全て、魔女さんの采配だったのかな。必然ってやつ?
阿修羅王と夜叉王の想いを果たすための旅だったとしたら、じゃあ、オレたちが先に着いた意味は何だったんだろう。
何か別の理由があったのかな?
祝い酒を飲む気マンマンの黒ろんの頭上で、モコナの移動魔法が発動する。
あららー。残念ー、ここのお酒おいしかったのにねー。もう時間切れでーす。
だってお酒を飲んでる間に、またはぐれちゃったら大変だもの。
いつまでかはわからないけど、旅が続く限りは一緒にいよう?
ここの阿修羅像みたいに、会いたくて暴れちゃったりしないですむように。
半年分の意味は、日本国語習得のためでいいよね。
日本国永住エンドじゃなくても、たまに遊びに行くとか、通信とか、文通とか
(笑) できるかもしれないし!
二度と逢えないエンドでも、寂しいときに1人で呟いてみたり、忘れないように毎晩声に出したりするファイとかどうですか。
18.8.26
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70話 ちぅ
新しい世界で、今度もまた住む所を借りたんだー。家っていうか、半分浮いてる乗り物みたいなヤツ。
今度の国は平和そうだよ。箱が地面を走ったり、空を飛んだりする不思議な世界。
やっと落ち着いて眠れたのかな、小狼君が寝坊するなんて珍しいよね。
でももうすぐお昼になるのに降りてこないから、さすがに起こした方がいいかと思って。
ちゃんと起こしてきてくれたモコナに、ごほうびのちぅー。
それからモコナからオレに、お返しのちぅ。
エヘヘ、くすぐったーい。
「えへv ファイのほっぺた、すべすべー」
「ありがとー。モコナもふかふかだよー」
「でしょでしょー?」
こういうの、平和でいいよねー。
「あのね、修羅ノ国でね、サクラも小狼のお目々にちゅーしたの!」
「へぇ〜、そうなんだー」
「モ、モコナ!」
わぁ、小狼君、顔真っ赤ー。微笑ましいよねー。平和だねー。
「それでね、モコナもサクラにちゅーしてあげたのっ」
「よかったねー」
平和だよねー。
「でもね、黒鋼にちぅしたら怒られたのー」
平和だ…… え。
えぇ── !?
モコナ、黒ぷいにもちゅーしたの? そ、それはチャレンジャー…… てか、ずるいー!
「ど、どこで……?」
「竜巻のとこでだよ。モコナが風に飛ばされたのを黒鋼が助けてくれたから、そのお礼だったのにぃー」
「そう、なんだ……」
黒りゅんてば、そう言えば秘妖さんにもお礼にちゅーされてたよね。
はっ、まさか、サクラちゃんや小狼君も! …って、それはないか。……ない、よね?
むー。いいなー。
今度また何か黒様に手助けしてもらうことがあったら、オレもお礼にちゅーしてみよっかな。
そしたら、また命懸けの鬼ごっこになっちゃうだろうけどね。
私はどこまでファイさんを突っ走らせる気ですか。でも楽しい♪
男性の頬が 『すべすべ』ってどーなんだ? と思わないでもなかったんですけど、老化が遅いならいいかな、と(笑)
18.8.27
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71−72話 知世ちゃん
黒ぷいとサクラちゃんが連れ帰ってきた、団体のお客様。
もぉ、そーいうのは前もって言っといてよねー。お茶の用意だけで大変なんだからー!
町でバッタリ会った女の子を、そのまま連れて来ちゃうなんて…… もー黒むーてばせっきょくてきー(棒読み)
……そっか。この子が知世ちゃん、かぁー。
黒みゅうのお姫様と、魂が同じだっていう人。
く、黒さまの姫も、こんなに年下の女の子なの? えーと、サクラちゃんと同じくらい?
黒りーが生涯を誓うほど心酔してる人なんでしょ? えーどうしよう。黒さまロリ…
えっとね、もっと、なんと言うか…… 毅然とした女性を想像してた、かなぁ。
まぁ、普通のお姫様は戦ったりしないだろうけど、黒ぴーのイメージからしてさー。
こんなフワフワしたかわいいお嬢さんだとは、思わなかったよぅ。
もっとも、黒りんの本物のお姫様の行動パターンとは、だいぶ違ってるみたい。大仰な台詞で、テンション高くサクラちゃんに迫る知世ちゃんに、黒さまドン引きしてて面白かったけどさー。
でも基本的には、同じ人なんだよね。
黒たんの、大事なお姫様、かぁ……
知世ちゃんのこと、ちょっと突付いてみたら反撃されちゃったね。質問には答えてもらえなくて、逆に、あの人の話で切り返されちゃった。
やっぱり大切な人のことだから、オレみたいのに軽々しく触れられたくないのかな……
「微笑ましかった」 とか 「面白かった」 とか言ったから怒っちゃったんだろうけど、かと言って、突然何の前フリもなく、真正面から
「知世姫ってどんな人?」なんて訊くのは、なおさら変でしょう?
こんな話、軽いノリでしか訊けないものー。オレすっごい必死な人になっちゃうよ。
今日はもう、この話はこれでおしまいね。
なんかしゃべり過ぎた気もするし。オレのことは、放っといてくれると嬉しいなー。
いつも、「俺には関係ねぇ」って言うくせに、今日はどうしたのー?
オレが追及しちゃった仕返しかな。自分は言えないくせに人のばっかり知りたがるのは、やっぱりズルイよね。
ゴメンね。でも知りたかったんだ……
まぁ家がグラグラ揺れた衝撃で話どころじゃなくなって、正直ほっとしたんだけど……
助かったよー、サクラちゃん。でも、激突は程々にねー?
小狼君を諭す場面は、黒ファイじゃないので割愛。
けっこう重要な意味があるかもしれないところですが…… でも省く(笑)
ところで桜都国にも車走ってたけど、ファイは見ないまま終わったのかな?
18.8.28
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語られなかった世界3 迷探偵 (この話に限り、デキてる黒ファイ前提。お遊びです)
モコナがこの謎を解いてみせる! 侑子の名にかけて!
犯人は冷蔵庫を開けて、ジャムをなめなめソファでテレビを見ていた‥‥
見ていたのはおそらく‥‥ 黒鋼秘蔵のエッチなDVD‥‥
「えーっ、黒たんひどい! オレというものがありながら〜〜」
「誰の秘蔵だ! 誰の!!」
そして‥‥ ジャムがついた手で、これまた黒鋼秘蔵のマガワン今週号を読みふけり、
「って、聞いちゃいねぇ」
「そんなDVDどこで買ったのー! ねぇねぇ〜」
「買ってねぇ!」
「じゃあ、何であるのー」
「知るか! さっぱりだ。…てか、マガワンべとべとじゃねぇか!」
ブランケットにくるまり、ぬくぬくしたりしてるうちに
どこからか聞こえてきた妖しげな声に驚いて、
うっかりジャムのビンを倒して足にもジャムがついた。
「んなっ!」
「ちょ、モコ……」
そのジャムがついたままの足で垂直移動‥‥
このように天井まで行って‥‥
天井の通気ダクトから、声のする部屋まで移動した‥‥
ね v
解 決!
「『ねv』じゃねぇだろ!」
「……なんか音がしたような気がしたんだよぅ〜」
「てめぇが犯人だろ! それからどうしたオイ!」
この目で真相を確認したの! 侑子の名にかけて!
「モコナひどいぃ〜〜」
「えー! そうだったんだーー !!」
「姫、それ以上深く考えちゃダメです……」
また遊んでしまった…… 忍者気づけよ(笑)
例によって原作まんまが紫っぽい部分で、捏造がどピンク部分です。
原作の、真相が最初から解ってるファイと小狼が楽しいよね。
18.8.29
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