野望へ


         11 巻




73−74話 レース


 ねぇねぇ今日のオレたちってさー、なかなかイイ感じだったと思わない?
 ずっと仲良く並んで飛べたしさぁ、小狼君とサクラちゃんのこと、一緒にハラハラ心配しちゃったりしてさ。
 飛びながら黒様の悪巧みも聞けたし、機体の名前について楽しく論議したりツッコミ入れたりできたし。
 おまけにワンツーフィニッシュも決めちゃったもんね!
 黒たんの後について行ったら、スイスイ行けちゃったんだー。
 優勝して大っきな画面に映し出された黒たん、すっごくカッコよかったよー!
 4人とも無事に予選通過できて、ホントによかったよね。



 オレね、サクラちゃんを心配して、ミラーでこっそり確認してる黒さまが好き。
 2人が無事に突風を回避できて、ほっと息を吐いてる黒さまが好き。
 2人がゴールするまで、片時も目を離さない黒さまが好き。
 まるでお父さんみたいに、子供達をじっと見守ってる黒さまが好きだよ。



たまには素直に。なぜだかいきなり惚れ直してるっぽいファイさん(笑) いや、日々深みに嵌ってますけどね彼は。
やっぱり空飛んで気持ちよかったのか、いつもより鬱々としてません。
普段、『好き』って言わせないで、なるべく 『大切』って言葉でお茶を濁させようと思ってるんですけど、ここではなんだか連呼させてみたくなりました。

18.8.30




75話 びゅーん


 自分で気づいてるかなぁ?
 最近の黒さまって、すっかり保護者モードに入っちゃってるってこと。
 小狼君とサクラちゃんのこと、かわいくてしょうがないみたいー。
「めんどくせー」って一々アピールしながら、そのくせ面倒を見るのは自分の役目だって自認してるみたい。
 もうお父さんとしか思えないんだよぅ〜



「4人揃って予選通過ということで」
「かんぱーい!v」
 あーもー黒様ってば、乾杯くらい一緒に付き合ってくれてもいいのにー。
 でもこのニャンコ印のお酒、おいしいよねー。オレ、レモン入れて飲むの好きー。

 飲み始めたと思ったら、すぐにサクラちゃんが愉快に壊れ始めて、なんか怪しい雲行きに……
 残されたグラスをくんくん嗅いでみたら、……あー、やっぱりぃー。
「これ、お酒入ってるー」
「何 ? ! 」
 しかも相当強いよ、コレ。モコナどれだけ入れたのー?
「小僧と姫には飲ませるなっつっただろ !! 」
 あははははー、お父さん怒ってるー。心配だもんねー。
 でもサクラちゃんのお酒は弱いんだか強いんだか、すぐに陽気に酔っ払って、ぐっすり眠ったら朝にはスッキリだからいいよね。

 苦労性の小狼君が追いかけて行ったけど止められなくて、すごくわかりやすい、怪しげな物音が……
「押さえてろよ、小僧!」
「いってらっしゃーい。お父さんの出動だー」
 飲酒を怒るのも、暴走を止めるのも、捕まえて無事に寝かしつけるまでがお父さんの仕事。
 ね、『ひと仕事終えたー』って感じの黒ろん、すごくいい顔してるって気づいてる?
 お得意の嫌々やってやるポーズすら出なくて、子煩悩なパパって感じー。



 お疲れさま。
 今日はレースも頑張ったし、大活躍だったよね。
 ゆっくり休んで、明日またドラゴンフライの整備、一緒にやろうねー。



あら、飲み物だけでツマミがないなんて、ファイらしくない……
なんて思ってしまう時点で、同人思考に偏りすぎですよねー。どんだけおさんどんは完璧だと思っているのか。
お酒に入ってるのは、あれはレモンに見えるんですがどーでしょうか?
18.8.31





75・77−78話 お父さん


「おっはよー」
 声を掛けたオレしかいないのが不思議なのか、子供達を視線で捜す黒りん。お父さんだよねー。
「小狼君達、おでかけだよー。買い物行ってくれてるんだー」
 オレに返事を返してくれないのは寂しいけど、お父さんな君を見れて嬉しいからフクザツー。

 ねぇ、お父さん、朝ご飯にしようよー。
 せっかくみんなと合流したのに、またオレと2人なのはつまんないかもしれないけど、我慢してよね。
 最近オレ、ちゃんと甘くないものも作れるようになったでしょ?
 君も最近は、甘いおやつを文句を言わずに食べてくれるようになったから(サクラちゃんが一生懸命に作ったものだって知ってるから、いらないって言えないんだよねー?)、そのお返しをしないとね。
 サクラちゃんがどんどん料理の腕を上げてるから、オレも負けないように頑張るね。
 食べたら一緒に、ドラゴンフライの整備だからねー。




 子供達が帰ってきたと思ったら、今度は次元の魔女さんが登場。
 うわぁ。黒んぴはオレには怒った顔ばっかり見せるけど、魔女さんにはそれ以上だねぇ。
 警戒心バリバリで、天敵みたいー。なんでそんなに喧嘩腰なの?
 最初に一番大切な刀を取られちゃって、それ以来相性が悪いみたい。
 ……どーせさ、知世姫から賜った刀だからとか言うんでしょ? いいの言わなくて。わかってるよー。
 君のこと何でも知りたいけど、聞きたくないって矛盾してるよね。

 魔女さんがオレたちの服を預かっててくれたんだって。返してもらうには対価がいるみたいだけど、見合うものって、なんだろー。
 あと、フォンダンショコラのお返しもしなきゃならないみたい。どうしようか?
 じゃあ、これからおやつを食べながら作戦会議にしようよー。
 いちばん大きな対価を既に払わされたことを知らない娘が、健気にもお礼をしたがってるから。
 何がいいか、一緒に考えてあげよ? ね、お父さんv



この一瞬後に知世ちゃん登場で、うちのファイはビクッとなりそう。決して嫌ってはいないんだけどね。
とりあえずファイさんはお父さん言いすぎ。ハートマークも飛ばしすぎだと思います。
でも自分のことは、お母さん認定してない方がいいな……
お姫様なサクラはともかく、ファイも質流れを知らないのかー。黒鋼と小狼は質屋さんを活用してたんでしょうかね?
18.9.1




78−79話 女の子


 知世ちゃんが空からやって来て、おやつの後は一変シリアス捜査会議ムード。
 てゆーか黒りんが。
 ……なんで知世ちゃんの前では、そんなに真面目な顔するの?
 可愛い女の子が2人で笑ってる、お花畑みたいな光景なんだから、笑顔で見守ってあげたらどうなのー。

 保護者モードでもなく、しかめっ面でもない。
 お姫様と同じだけど違う人に逢えて嬉しい、って顔でもない。嫌がってる風でもない。
 うーん?
 それとも照れ屋さんで、嬉しい顔をできないだけなの?
 思うことがいっぱいありすぎて、表に出せないとかかな。
 ……どっちにしろ、特別なんだよね。

 黒たんの本当のお姫様じゃないのに、もう目が離せないんだね。
 知世ちゃんを通して、知世姫を見てるんだ。
 知世姫との違いにいちいち驚いて、共通点があるたびに納得して……
 そりゃオレだってセレスの知り合いが現れたら、まじまじ見ちゃうだろうけどさ。
 前に蘇摩さんに会ったときよりさ、なんか……



 知世ちゃんが作ってくれるっていう服、モコナがすっごく楽しみにしてる。
 うん。いい子なんだよね。聡明だし、可愛いし、リーダーシップもばっちりだし。
 ……わかってるよー。これがヤキモチっていうんでしょー。
 ヤキモチって、もっと腹立たしいっていうか、熱くなるものだと思ってた。
 こんな寂しいみたいな暗ーい気持ちになるものだなんて、知らなかったよ。

 だって黒りーってば、オレと2人でいるのに、何かをじっと考え込んだまま返事もしてくれない。
 いいよもう。そんなに知世ちゃんのことで頭がいっぱいなら。
 ずっと考えてればいいよーだ。



ツバメ号の上に足を投げ出して座るファイにゃんが、なんだか投げやりー、に見えるわけですよ。
そのころ黒たんは、『何企んでやがる……』とか思ってるんですな。噛み合わない2人。
18.9.3




80−82話 本選開始


 今度のレースは、スピードだけじゃないんだって。
 黒りーは面倒くさがりそうだけど、障害物競走みたいで楽しそうー。
 今回も、仲良く最後まで飛べるといいね。



 わぁ。夜魔ノ国にいる時も思ったけど、黒様って負けず嫌いだねぇ。
 スピードは誰にも負けない。なんたって、予選優勝者だもんね。
 でも操縦なら、オレだって負けないよー。この辺はゴチャゴチャしてるから、追いつけると思ってたんだー。
「黒たん、やほー」
「真面目にやらねぇと落とすぞ!」
「きゃー、こわーいv」
 えへへ。そんな怒んないでよ。楽しく飛ぼうよぅ。

 第1チェック地点。
 バッジが入ってる球体に近づいたら、急にボールが割れてバッジが目の前に飛んできたんで、ビックリしたー。
 危うく取り損ねるとこだったよ。
「あっぶなかったー」
「ぼーっとしてやがるからだ」
「黒んみ、きびしー」
 むー。どうやって取るのか、オレが最初に試してみたんだから。ビックリしたってしょーがないでしょ。



 障害物でいっぱいの一般空路を抜けて暫くしたら、後ろから猛スピードで追い上げてきた2機が、オレの機体を挟むようにして通り過ぎて行った。
 ほとんど並んで飛んでいたオレと黒んたとの間をギリギリですり抜けて行ったのは、阪神共和国で会ったリーダーさんだねぇ。さっすが前回優勝者。
 追い越されて悔しかったのか、黒みんがグンとスピードを上げて彼らを追う。
 あーあ、ムキになっちゃってー。黒むーってば、本当に、
「やっぱり負けず嫌いだー」
 それなのに、この瞬間まで加速しなかったのはどうして?
 オレと黒ぴーと、どっちが勝っても羽根は貰えると思ったから?
 オレには追い越されてても悔しくなかったの?

 えへへー。仲間扱いされてる感じで、ちょっと嬉しいな。
 でもオレだって、もっと黒たんと並んで飛びたいから。そう簡単に、引き離されたりしないからね!



久々の更新なのに、今回も状況説明な解説者と化してて悲しい。微妙に書き方忘れてるしー。
ファイにとっては、競争じゃなくて 「仲良くドライブー」くらいに思ってるっぽい。

18.9.28




79−82話 不正


「それでも、何が起こるか分かりません。気をつけて下さいね」
 その言葉に嘘はなさそうなんだが、な…… どうにも胡散臭ェ。
 俺たちに危害を加える意図があるとは思いたくねぇが、何か釈然としねぇ。
「……誰が何しでかそうが、勝ちゃあいいんだろ」
 おめぇが何をやらかそうとも、な。

 さすが知世姫と同じなだけあって、こいつも一筋縄ではいかねぇ人間なんだろう。
 小僧の姫に異様に執着する姿にはたまげたが、あとはほぼ一緒だ。
 悪巧みはしねぇはずだが、何企んでるか油断ならねぇ。
 まぁ悪いようにはしねぇだろ。要するに、勝ちゃあいいんだ。



 最初のバッジの辺りで、俺らが通過した後になにやらあったようだが、特に危険なものではなさそうだ。
 今度のうねうねチューブも、めんどくせー !!! とは思ったが、これくらいの動きなら、なんとか…… 

 何 !?
 俺のすぐ後ろで、ヘラいのが潰れやがった! 
 呑気にしゃべくってたからじゃねぇ。突然の、明らかに異常なチューブの動きに巻き込まれたんだ。
 クソっ、……これもテメェの仕業なのかよ!

 ヘラヘラするだけの余裕があるなら大したダメージじゃなさそうだが、あいつはいつでもあんな顔してるから判んねぇな。
 なんにせよ、魔術師の野郎はここでリタイヤだ。あいつがもし怪我でもしてたら承知しねぇ。
 仕組んだのがお前なら、いくら知世姫と同じ魂だからって容赦しねぇぞ。
 こんなおかしなレース、さっさと終わらせて何もかも白状させてやる!




知世ちゃんが何かしでかしそうだと気づいてたのに手を打てず、ファイが墜落させられたので怒る黒さま。
これくらいは怒って欲しいなぁ。気づいていたのならね。
黒鋼の知世ちゃんに対する呼び方が分かりません。知世社長?(笑)
そう言えば小狼もだ。知世さん、かな?

18.9.30








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