銀色完全版(PC) ※DVD1枚/CD2枚組
メーカー ねこねこソフト 総合評価 80点(良作)
ジャンル NOV
発売日 2001/08/31
シナリオ 片岡とも・高嶋栄二・ヤマタカユウキ・ALFRED・東トナタ 1年前に発売された「銀色」の完全版(そのまんま^^;)
ねこねこ次回作への布石となるシナリオの追加、CG・音楽の増量など様々なパワーアップと3600円という低価格が話題に。
原画 綾瀬悠・白凪マサ・秋乃武彦・葵渚
サウンド えび・SIMO・443・キャッツ・まにょ

※以下の感想を読む際は、「銀色」の感想と併読するとわかりやすいかもしれません
  「手抜き」と言われるかもですが、重複する部分が多いので(^^;

個人的エピソード
元々の「銀色」(以後「ノーマル版」)が結構気に入っていたので購入。
超低価格設定のサービス精神にも強く惹かれました。
あとは次回作とこの作品をどういう風に繋げるのか、とかそういう興味もありましたしね。

内容
――切なく哀しい「銀色」の物語り――

――かつて、
銀は月からこぼれ落ちた雫を集めて作られたと言われてきた。

それは現実とは異なる美しい夢物語として伝わり、
いつの間にかお話の中だけの世界として消えていった…

…どんな願い事も叶うという不思議な銀の糸…

さまざまな時代を通して、複雑にそして淡々と絡み合っていくストーリー達。
そのストーリーが最後に結びつく時、
きっとあなたの心の中に熱い想いが…
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量はCD-ROM版の場合、1.2GBで固定。
DVD-ROM版の場合は5MB/1.5GBのいずれかを選択。
……なんでこうも両極端なチョイスを迫られるのかは謎ですが(^^;

ゲームシステムはねこねこソフト作品ではお馴染みのNScripterで動作する選択肢分岐型のノベルゲーム。
とはいっても難易度的にはごくごく低く、狙っていかないとバッドエンドは難しいくらいで
選択肢の意味合いとしては弱いように感じます。

セーブ数は20個。
難易度の低さとイベント回想機能の関係上、あまりセーブを必要としないので
これだけあれば不足を感じることはないかと思われます。

スキップは強制のみ。
実際問題としては一本道性が強いソフトなので、これでも困らないでしょう。
個人的にはそろそろ既読スキップを実装してもいい時期だとは思いますが…(^^;

読み返しは「回想」で実行可能。
バックログの方式は同じシステムで動作している「歌月十夜」と同じもの。
「全体をいくつかのブロックに分けて、今いるブロックの頭まで戻れる」という
割と特殊な形式を採用しています。
ノーマル版ではごく少量しか読み返せなかったので、この改良はありがたかったです。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞とイベント回想が用意されています。
ノーマル版ではHシーン回想さえなかったのを思えば格段の進歩です。

ノーマル版での不満のほぼ全てが払拭されている優れたシステムです。
少なくとも「銀色」という作品を動かす限りはこれで不満は感じないでしょう。

絵とか
基本的に立ち絵を始めとしたほとんどのCGはノーマル版からの流用なので
やっぱり目など人を選ぶ要素が強めだとは思います。
前作からの流用CGについては塗りも目を引くほどではないでしょう。

枚数の方は鑑賞モードによれば96枚(パターン違い除く)。
うち新規のCGはおまけシナリオで登場するものも含めて18枚ほど。
新規CGの方が塗りのレベルも高く、原画ももう少し一般受けするタイプの絵柄に
変わっていて嬉しいのですが、ノーマル版のものと混ざって出てくると若干の違和感を感じなくもありません。
どうせなら全部描き直ししてほしかったなぁとか思ってしまいますが、
値段を考えるとそれは多くを望みすぎというものでしょうか(ぉぉ

ですがノーマル版で挙げた鑑賞モードへの不満はそのまま残っているのが残念でした。
相変わらず鑑賞モードに登録されないCGが結構あるという不満です。
パターン違いのものやラフ調のCG・EDのパステルタッチのCGを閲覧する手段がないのはいかがなものでしょうか。
全部のCGを見ることができてこその鑑賞モードだと思うのですけれど……(^^;

音楽・音声とか
音楽はPCMで収録、全34曲。うち新曲は11曲、ボーカル曲は3曲です。
ただ34曲全てが作中で使われているわけではなく、例えばノーマル版の
主題歌「こころのゆくさき」などは完全版にも収録されてはいますが、流れる事はありません。
ですので、実際に使われている曲数としては30曲くらいかと。
とはいえ、これでも数的には十二分に多く不満はありません。

新曲・旧曲問わずに質の方もかなり高く、こちらの面でも満足。
ノーマル版でのお気に入り曲は当時の感想を読んでいただくとして、
新曲の中でのお気に入りを挙げるとOP「銀色」、「蛍揺れて」「終章」「石切」あたり。
特にOPの「銀色」はしっとりとした感じでかなり気に入りました。


音声はメインキャラおよび一部サブキャラ(女性)のみフルボイス
演技力の方はそこそこ、キャライメージには結構合っているという感じでしょうか。
しかし、そんなことより何より重要な事柄があります。

夕奈お姉ちゃんに声がつきました!(マテ

「銀色」の影のヒロインと言っても過言ではない彼女に音声がついたことで3章は大幅にパワーアップ。怖さも萌え度も数倍です(笑)
ノーマル版における最大の不満の改善は大きかったです。

…真面目な話、英語モードの廃止は大きな変更だったと思います。
私を含めて多くの人間にとって意味のあるモードではなかったので。

ほとんど不満はないのですが、もう少しだけ贅沢を言わせてもらえるなら1つだけ。
できることなら真の意味でのフルボイスにして欲しかったかもですね。
いや、現状で特別な不満はないんですけど「映画を意識した云々」を見ると、どうしても「全員喋らなきゃ嘘だろ」とか思ってしまいます。……単に私がワガママで贅沢なだけなんでしょうか?

シナリオとか
実はこの項目に関しては1番書きにくかったりします。
ほとんどの部分はノーマル版と同じなので、そちらを読んでいただければ済んでしまうんですよね(爆)

ですが普段のようにまとめるならばこんな感じでしょうか。
どこかやり切れない想いが残る物語。
少なくとも1〜3章および錆に関しては多くの方がそう感じると思います。
物語のラストである4章で綺麗にまとまり、他の章のありえた幸せな結末を提示するのが救いではありますが…。

そんなわけなので出来の良さとは関係なしに多少好みが割れるかとは思います。
私も昔やった時は素直に楽しめない部分がありましたし。
でもまあ、とりあえずクオリティは高めなのは間違いないのでオススメはできますね。
個人的にはこのメーカーは「みずいろ」とかより、こっち路線が向いているような気がします。

ノーマル版から継続して登場するシナリオについてはほとんど書くことはありません。
大きな変更点としては1章のサブタイトルがズレなくなった、くらいでしょうか(^^;

ですので、新規に追加された石切シナリオについて少々。
このシナリオは主に3つの役割を持っています。

1つ目は5章(4章に出て来る過去編)および錆と1章の間を繋ぐ物語として。
2つ目は1章と2章の間を繋ぐ物語として。
そして3つ目は「銀色」と次の物語との間を繋ぐ幕間劇として。

出来としては悪くありません。むしろいい部類に入るでしょう。
各章の合間に断片的にこの石切シナリオを挟むことでノーマル版のプレイヤーの注意を引くこともできますし、切り方が上手いので本編のみならずこちらの続きもついつい気になってしまいますしね。

ですが、3つ目の役割に関しては若干拍子抜けの感がなくもないです。
ねこねこソフトが出す次のソフトが果たしてどのような物なのか、
そして「銀色」のキーアイテム・銀糸がどう絡むのかは知りません。
でも、思いっきり予告というような終わらせ方はどうなのかな〜と思ってしまいました。

さすがに長くプレイしてきたソフトの最終シナリオのラストで「To be continued」はないだろ、とか思うんですがその辺どうなんでしょう? こんな直接的な手法で次回作に繋がるとは思ってもみませんでした。
てっきり「銀色」やった人が次回作をやるとニヤリとかそういう感じだと思ってたのですが…(^^;

「次回につづく」みたいな終わらせ方が嫌いな私としては石切シナリオのラストは不満ですが、
それ以外の点に関しては特に不満らしい不満はありません。
昔は素直に楽しめなかったやるせない部分も、なぜか今回は物語として楽しめましたし。
#きっと最初からオチを知っているからなんでしょうが

総評
色んな部分が改善されてて嬉しかったです。
このお値段でここまでやられればファンサービスとしては十二分でしょう。

まとめ。「完全」の名に恥じぬ改良ぶり。
ノーマル版で挙げたほとんど全ての不満点を解決したこれはまさに「完全版」と名乗るにふさわしいでしょう。
というわけで、ノーマル版の時に書いたとおりシナリオなどの本来的なクオリティにしたがって80点ということで。
本編の流れを知っている私の主観評価は75点くらいなんですけど、初見ならこの点かな?と。

書いた時点での総プレイ時間 11時間(コンプ)
お気に入りのキャラ あやめ(あえてこの記述)・狭霧・夕奈(ぉ
お気に入りのセリフ お日様は強すぎるけど、月ならわたしでも照らしてくれると思った
わたし、光ってた?
「…この世の中でたった一人、自分にしか出来ない役目があるとしたら、とても素敵なことだと思いませんか?」
「この裏切り者っ」
#ほか夕奈お姉ちゃんのセリフ多数(マテ

初版2001/09/10