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付録:中国官制:

中国(隋・唐)主要官職概覧

(最終更新日:98.10.02

 − 目次 −




 

官品


唐代の役人の正式名称は「官人〔かんじん〕」と言います。
「官品〔かんぽん〕」とは、令の官品令に規定されている官人の階級(「品階〔ほんかい〕」)規定を言い、一〜三品までを正・従の二階に、四〜九品までを正・従・上・下の四階に分けた三十階となっています。(ただし、品階を持たない(無品〔むぼん〕の)「官人」もいます。)
この三十階以上に当たる職、すなわち品階を持つ職を「流内官」、それ以下の職を「流外官」と言います。
日本と同様(というか、日本がこちらの制に倣っているのですが)、九品以上の官人には特権が伴います。特に五品以上の官人の特権は多く、これが「貴族」であると言えます。


 

官名


「官品」には、それぞれの階によって「官名」が決まっており(これは実務を伴う「職名」ではありません)、たとえば、従一品の文官は「開府儀同三司〔かいふぎどうさんし〕」、従一品の武官は「驃騎将軍〔ひょうきしょうぐん〕」などと言います。
こうした特定の官品に相当する官名は「文散官」「武散官」と言い、これによって官人としての階級を示します。
(※日本では「散官」というと、位階だけがあって実務担当職に就いていない人を指して言います。用法が異なりますので注意してください。)

またこの他にも、実務とは関係のない階層規定として「爵」(=王・郡王・国公・郡公・県公・県候・県伯・県子・県男)や「勲官」(=上柱国・柱国・上衛軍・武騎尉など)があります。

※ 「散官」「勲官」「爵」については、予備知識『位階』の「唐の官名との相当」にそれぞれの名を挙げていますので参照ください。


 

職事官(=官職)


実務のあるもの、つまり「官職」であるものは「職事官〔しきじかん〕」と言います。「職事官」として働いている官人を指しても一般に「職事官」と言っているようです。

「職事官」の勤める役所として、中央には、六省・九寺〔じ〕・一台・五監〔げん〕・十六衛〔えい〕、その他東宮官・親王府官があり、それらの上には「三師」「三公」が立っています(ただし、三師・三公は日本の太政大臣と同様で、常設の職ではなく、特に定められた実務もありません)。
地方には、府・州・県ごとに、そこに属する職があり、また、武官としては折衝府に属する職があります。

これら役所の職には官品との相当規定があります(※後述の「主な職の官品相当」参照)。
「散官」と「職事官」の品階は原則的には相当している筈ですが、場合によって相当していない場合もあります。これも日本と同様です。


 

役所の種類


役所には、六省・九寺・一台・五監・二十四司・十六衛、その他、五房や東宮官・親王府官があります。
いずれの役所にも「長官」「通判官(次官)」「判官」「主典」の「四部官(四等官・四分官)」の規定があり、立場・責任の所在を分けています(具体的な職名は、役所によって異なります)。

役所のうち、最も上に立っているのが「省」です。国政の中枢で、立案・執行を担当する「尚書省」「中書省」「門下省」の「三省」と、帝に関わる「秘書省」「殿中省」「内侍〔ないじ〕省」の、計「六省」があります。
このうち、「尚書省」は、本庁である「都省」と、「吏部」「戸部」「礼部」「兵部」「刑部」「工部」の「六部」で構成されます。また、尚書省の「長官」は常設の職ではありません。

「六部」の下にはそれぞれ4つずつ、計24の「二十四司(曹)」があり、また「九寺」「五監」もこの下にあります。「都省」の下にも「司」があるようですが、これは調べてないので、よくわかりません。

行政運営は、尚書・中書・門下の三省が中心となります。
中書省が詔勅の起案を行い、門下省がこれを審査し、帝の裁可を経て、尚書省の都省に回し、尚書省の六部がこれを執行します。また、下からの上奏は、尚書省が受理して、中書省が回答文案を作成し、門下省を経て、再び尚書省へ戻されます。

「九寺」の[寺]は、寺院とは無関係な語で[役所]の意です。「太常寺」「光禄寺」「衛尉寺」「宗正寺」「太僕寺」「大理寺」「鴻臚寺」「司農寺」「太府寺」があります。

「五監」は、「国子監」「少府監」「軍器監」「将作監」「都水監」があります。

秦・漢代では、この「九寺」「五監」が中心的な役所でした(個々の名称は時代によって多少異なる場合があります)が、隋・唐では「六部」配下の実務機関として残されました。(伝統的な官庁は根強いので、これを廃止することは、現代日本の行政改革と同様(?)、難しかったようです。)

「台」は「御史台」のことで、これら諸役所の監察を担当します。

以上が行政運営で、政策決定は「政事堂」「中書門下」などという宰相会議で為されます。
「政事堂」の出席者は、「正宰相」である中書省・門下省の長官が各1名(=中書令・門下侍中)と、尚書省の左僕射・右僕射(「長官」ではなく「通判官(次官)」です。時代によって「正宰相」である場合もあります)が各1名、他に宰相待遇を受けている職事官たちです。

政策決定と行政運営は並立しているものだったようですが、中書省・門下省の長官を主とする「政事堂」に実権が移るにつれ、こちらにも独自の配下機関が必要となって、「六部」に相当するような「吏房」「枢機房」「兵房」「戸房」「刑礼房」の「五房」が置かれ、宰相が当直するようになります。


 

隋・唐主要官職表


『三公』が、日本に於ける太政大臣・左右大臣に当たる最高官です。


主な担当職務
諸侯三師(?)
(周代の三公)
太師
太傅
太保
政治の総轄
三公
(後漢以降の三公)
太尉軍事の審議
司徒行政の審議
司空監察の審議
六省三省〔しょうしょしょう〕
尚書省
都省
(本庁)
百官の統括・詔勅の施行
左僕射〔ぼくや〕
右僕射〔ぼくや〕
左丞相〔じょうしょう〕
右丞相〔じょうしょう〕
六部
(六官)
吏部尚書官吏の任免・進退
民部尚書戸部尚書民事・戸籍・租税
礼部尚書礼楽・祭祀・外交・教育
兵部尚書軍事・武官の進退
刑部尚書刑罰・司法
工部尚書宮室器物用度・土木
中書省
◆ 内史令
内史侍郎

謁者台大夫
諌議大夫

◆ 中書令
中書侍郎
右散騎常侍


通事舎人
詔勅の記録・伝達
門下省◆ 納言
黄門侍郎
◆ 侍中〔じちゅう〕
門下侍郎
左散騎常侍
詔勅の審査・出納

秘書省

殿中省

内侍省

〔きゅうけい〕
九卿
(=九寺)
太常寺卿礼楽・祭祀
光禄寺卿宮殿の内務
衛尉寺卿宮門の警衛
太僕寺卿輿馬・行幸の供奉
大理寺卿刑罰・訟獄
鴻臚寺卿賓客外交・儀式
宗正寺卿皇族
司農寺卿穀物・貨幣
太府寺卿天子の御料庫
台官御史台〔ぎょしだい〕大夫官吏の風紀取り締まり

※ ◆は『宰相』を示しています。京都書房「増補新修国語総覧」を参考に作製。


 

主な職の官品相当


※ 表中で赤く囲っているのは配下にある「司」の職事官です。


隋・唐主要官品相当表 GIF 33K


唐の長安城


唐の長安城に関して、『予備知識』の「京・宮・みやこ(付:唐の長安城)」で解説していますので、こちらの本文と併せてご参照ください。




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