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予備知識:

公卿・殿上人・地下・庶人

(最終更新日:97.06.19

※ 公卿・殿上人といった階級表現は、官制とはあまり関係ないですが一応書いておきます。

 − 目次 −




 

階級表現


身分の言い表し方に『公卿〔くぎょう〕・殿上人〔てんじょうびと〕・地下〔じげ〕・庶人〔しょにん〕』というのがあります。

大宝令(養老令)の成立当初は、『勅授/奏授/判授』という位階の下され方の違いや『勅任/奏任/判任/判補』という職の任命のされ方の違いによって階級区別をしましたが、平安(中期?)以降になると、それは叙位・除目の際だけの区別となり、その他のときは単に『公卿/殿上人』などと言い分けるようになります。

もとの言い回しとしては、『公卿』は「身分」を指して言うもの、『殿上人』や『地下』は「待遇」を指して言うものなので、ちょっと言葉の性質が違うのですが、あの人は公卿だ、殿上人だ、地下だ、などと区別しているうち、だんだん階級表現として定着していったようです。


 

『公卿』『殿上人』『地下』『庶人』



 『公卿〔くぎょう〕

上級貴族を言い、位階が三位以上の人、または参議以上の要職(=大臣・大中納言・参議)に就いている人(人々)を言います。
つまり、位階が四位でも参議職に就いているなら、その人は公卿です。
ただし大臣は、時によって一般の公卿と区別され、これに含まれていないこともあります。

【公卿】=「三公九卿〔きゅうけい〕」の意で、中国の呼称に依ります。
(※「随・唐主要官職概覧」参照)


 『殿上人〔てんじょうびと〕』『うへひと〔うえひと〕

昇殿を許された五位以上の人(人々)を言います。

昇殿が許される可能性が出てくるのは五位以上の人(=貴族)で、通常、四位ともなればたいていの人は昇殿が許されているものなのですが、公卿(=上級貴族)であっても昇殿が許されていない人はいました。
摂関時代の頃になると家格家柄によって昇殿するようになりますが、はじめは人物によって許されたり許されなかったりしたのです。

天皇の側周りの用を勤める蔵人などは位階と関係なく一応「殿上人」のうちに入れられます。

殿上の席次は通常、官位と年齢を基準に定められたようです。


 『地下〔じげ〕』『しもびと』

昇殿を許されない人(人々)を言います。『うへひと』に対して『しもびと』とも言います。


 『地下の公卿』『地下の上達部〔かんだちめ〕』『地下の納言・参議』

昇殿を許されない公卿を指して言います。

 『四位の諸大夫』

通常は昇殿が許されてしかるべき四位になってもまだ昇殿を許されない人を言います。

 『地下の諸大夫〔しょたいふ〕

四位、五位に叙せられても昇殿を許されぬ家柄の人を言います。


 『庶人〔しょにん〕

無位の一般人(人々)を言います。
役所では、これらの人々が雑用の大半を担当しています。


 

『公卿』の別称・その他関連する言葉



 『棘路〔きょくろ〕』『おどろのみち』

『おどろのみち』は『棘路』を訓読したもので「公卿」を言い、中国の呼称に依るものです。
昔、中国の朝廷で、槐樹〔えんじゅ〕や棘〔いばら〕を植えて、三公九卿の「座位〔くらい〕」としたという故事から出た名で、「三公九卿」を『三槐九棘〔さんかいきゅうきょく〕』とも言います。

 『卿相〔けいしょう〕』『卿上〔けいしょう〕

中国の呼称に依るもので『卿』と『相(=大臣)』の総称=「公卿」です。

 『月卿〔げっけい〕』『月客〔げっかく〕

禁中を天に、帝を太陽に、公卿を月にたとえて言うものです。
「月卿」は殿上人を指す「雲客〔うんかく〕」と併せて『月卿雲客』などと言います。

 『上達部〔かんだちめ〕

公卿のうち、大中納言・参議、その他三位以上の人(人々)を、大臣と区別して、言うようです。

【上達】(=【上等〔かんたち〕】)+【部】=群れ、の意。
(※従三位を『上階』というから、上階の部に達する、の意だ、という説もあるようです。)

 『現任公卿』

「現任」の公卿、ということで、大臣・大中納言・参議を言います。

 『非参議』

三位以上で参議になってない人、または四位で参議になる資格を持つ人を言います。
「参議ではないけれどもいつ参議になってもおかしくない人だよ」といったニュアンスの言葉です。(※「参議」参照。)


 

『殿上人』の別称・その他関連する言葉



 『うへひと〔うえひと〕』『うへのをのこ〔うえのおのこ〕』『雲の上人〔くものうえひと〕』『雲上人〔うんじょうびと〕

禁中への出入りを許された人=殿上人を言います。
【うへ〔うえ〕】【雲の上】=禁中。

 『雲客〔うんかく〕

「雲上人」の意で、公卿を指す『月卿』と併せて『月卿雲客』などと言います。

 『星の位〔ほしのくらい〕

星座・星宿の意で、禁中に殿上人が列座する様子を星宿にたとえて言うものです。
はじめは三公のみを指したそうですが、のちに範囲が広がり、殿上人全体を指して言うようになります。

 『堂上〔とうしょう〕

禁中の宮殿の上、の意で、昇殿を許されること、及び、殿上人を指して言います。
摂関時代の頃になると、家柄によって公卿に列したり昇殿が許されたりするようになりますが、そうした家柄は、この「堂上」に由来して「堂上家〔とうしょうけ〕」と言います。


 

昇殿に関する用語


『昇殿』は『上許さるる〔うえゆるさるる〕』『殿上に籍を置く』などとも言い、(ご承知のように)「殿上〔てんじょう〕」への参内〔さんだい〕を許されることです。

昇殿は、禁中(天皇の御所)だけでなく、上皇・皇后・東宮などの御所でもあります。
それぞれ、御所の主(天皇・上皇など)に許された人のみが昇殿します。

ただ、その時期の御所の主一代限りで、主の代替わりがあれば改めて殿上人を選び直すため、先代の時に昇殿を許されていた人でも「地下」に落とされたりすることがあって、継続的な待遇ではありません

昇殿すると、宮中の宿直その他、お務めが多くなるようなのですが、それでも有位の人々は昇殿に対して並々ならぬ執着を持つようです。


 『内〔うち〕の昇殿』

清涼殿(天皇が普段住んでいる御殿)南端の「殿上の間」への昇殿を言います。
【内】=禁内(天皇の御所)で、天皇を指しても言います。

内の昇殿を許された人を「内の殿上人」と言い、多いときで100人程度いるようです。
(ちなみに東宮の殿上人だと15人くらいのようです。)

 『院の昇殿』

上皇の御所への昇殿を言います。

 『日給〔にっきゅう/ひだまい〕

日給いくら、とかいう給料(俸給)のことではなく、「日をたまわる」の意で、宮中での当直を言います。

 『殿上の簡〔ふだ/かん〕』『日給の簡〔にっきゅうのふだ/ひだまいのふだ〕』『仙籍〔せんせき〕

殿上人の氏名が記された木簡のことで、出勤簿と職務通達書とを兼ねたようなものです。

その日、宮中の当直に当たっている人は、殿上の間の西北の壁にこの簡〔ふだ/かん〕が立てかけられていますので、参内した場合は簡に(紙を貼って?)日付を記入し、宿直した人は「夕」の字も併記します。
参内しなかった人(不参者)については「不」、などといったことが記入されます。

位階や職の昇進通達などもこの簡に書き置かれます。
殿上には、この簡の入れられた袋が置いてあり、その中にある名前のうち、第一に位階を上げられるべき名前を『殿上一〔いち〕』と言います。

 『簡を削られる』『殿上を除かれる』『除籍』

昇殿を差し止められることを言います。
通常、罪を犯した時などにこうなりますが、位階が進んだときや(?)、何かその他の都合がある場合(?)もあったようです。

 『還昇〔げんしょう〕』『かへり殿上(返り殿上)』

一度、簡を削られたのち、再び昇殿を許されることを言います。




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