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官職:寮:

大学寮

(最終更新日:99.11.04

 − 目次 −




 

大学〔だいがく〕


式部省配下の大寮で、『文屋之司〔ふみやのつかさ〕』『ふみやつかさ』とも言い、学生〔がくしょう〕の教育を担当します。

『勧学田』を持っており、これで学生の給費(菜料・燈油料など)を賄ったようです。

学生は原則的に、五位以上の人の子弟や史部〔ふひとべ〕(=神祇太政官のサカン)の子ですが、八位以上の人の子弟でも希望すれば入学を許されます。

★ 学問所は、「大学寮」の他に「陰陽寮」、地方諸国に置いた「国学」があり、その他に、諸家の建てた私立の学校にも公(おおやけ)の職員が定められていたようです。これらは大学寮内にあったりして、別館としての機能を持っています。

 

大学寮の学科区分


学科は「〜道」と呼ばれ、大学寮には、紀伝道、明経道、明法道、算道、の4道があります。

(大宝令の頃は、明経(その頃は経業と言っていました)、算、の他に、音、書、などもありました。)


● 文章〔もんじょう〕道(紀伝〔きでん〕道)

中国史と中国の文章を学ぶ科です。

● 明経〔みょうぎょう〕道(※ 大宝令の頃は「経業〔けいぎょう〕道」と言っていました。)

経書を学ぶ科です。

● 明法〔みょうほう/みょうぼう〕

法律学科です。

● 算道

算術学科です。

▲ 音〔おん〕

中国の字音を学ぶ科でした。

▲ 書〔しょ/ふみ〕

書法を学ぶ科でした。


 

● 管轄(被官)


  左弁官局 → 式部省 → ▲ 大学寮

 

● 大学寮職員構成


別当
↓
頭(1名)  → 助      → 大允    → 大属
        権助       少允      少属

文章博士(1名) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−→ 文章得業生 (紀伝博士)                           文章生                                  擬文章生         博士(1名)  → 助教(2名) → 直講(2名) → 明経得業生?        (後世は明経博士)                 明経生?                  明法博士(2名)       → 明法得業生(2名)                                  明法生(2名)                  算博士(2名)        → 算得業生(2名)                                  算生(30名)                  音博士(2名)        → 音生                  書博士(2名)        → 書生

※「得業生」「算生」「書生」などの「生」はいずれも[しょう]と読みます。みな「学生」です。


 

○ 『大学別当』


四部官(四等官・四分官)の上にあり、大学のことを取り扱います。

もとは上官(上の役所)である式部少輔が兼任していましたが、醍醐天皇の頃からは、親王や大臣が兼任するようになります。

【別当】=他の本来の任務とは別に事に当たる、の意です。


 

● 大学寮四部官(四等官・四分官)・他


 ・ カミ

『頭〔かみ〕

従五位上


 ・ スケ

『助〔すけ〕

正六位下

『権助〔ごんのすけ〕



 ・ ジョウ

『大允〔たいじょう/だいいん〕

正七位下

『少允〔しょうじょう/しょういん〕

従七位上


 ・ サカン

『大属〔だいさかん〕

従八位上

『少属〔しょうさかん〕

従八位下


 ・ その他

『文章博士(紀伝博士)』

従五位下

『博士(明経博士)』

正六位下

『助教〔じょきょう〕

正七位下

『明法博士』

正七位下

『算博士』

従七位上

『音博士』

従七位上

『書博士』

従七位上


 

○ 『大学頭』


学生〔がくしょう〕の『寮試〔りょうし〕』(=寮で行う年末試験)、「釈奠〔せきてん〕」(=孔子・顔回〔がんかい〕などを祭る儀式)を担当します。定員は1名。


 

● その他の職員


文章道(紀伝道)に関わる職

 

○ 『文章博士〔もんじょうはかせ/もんぞうはかせ〕(紀伝博士)』


紀伝・詩文を担当して教授する令外の官職です。特に才名のある人を選任します。定員は1名。


明経道に関わる職

 

○ 『博士〔はかせ〕(明経博士〔みょうぎょうはかせ〕)』


経書を教授する令外の官職です。後世になると、明経博士というようになります。定員は1名。

中原・清原の二氏の世業で、代々、大外記となってから任じられます。


 

○ 『助教〔じょきょう〕


明経博士を補佐して経書を教授する令外の官職です。経書に通じている人を選任します。定員2名。


 

○ 『直講〔ちょっこう〕


明経博士・助教を補佐して経書を教授する令外の官職で、「毛詩〔もうし〕」「尚書〔しょうしょ〕」「左伝〔さでん〕」「礼記〔らいき〕」から出題される10問の試験に及第した人を任じます。定員2名。


明法道に関わる職

 

○ 『明法博士〔みょうほうはかせ〕


法律を教授する令外の官職です。

後世は、中原・坂上〔さかのうえ〕の二氏の世業となります。


算道に関わる職

 

○ 『算博士〔さんはかせ〕


算術を教授する職です。

後世は、三善・小槻〔おづき〕の二氏の世業となります。


音道に関わる職

 

○ 『音博士〔おんはかせ〕


中国の字音を教授する職です。


書道に関わる職

 

○ 『書博士〔しょはかせ〕


書法を教授する職です。


※ これらの博士、助教・直講には職田が給付されます。(※「俸給」参照)


 

進級〜卒業の仕組み


○ 例:「文章道〔もんじょうどう〕」の進級〜卒業の仕組み


 才器の認められる学生〔がくしょう〕で、文章道志望者がいるとします。

  ↓
 大学頭の監督のもと、「史記」「漢書」から5問が出題され、3問以上に通じていれば及第。

  ↓
 『擬文章生〔ぎもんじょうしょう〕(略して『擬生〔ぎしょう/ぎそう〕とも言います)に補されます。

  ↓
 宣旨によって、上官(上の役所)の式部大輔・少輔が詩作を出題し(=『省試〔しょうし〕』)、文章博士と共に採点します。
この際の出題役は『問答博士〔もんどうはかせ〕』と言います。

  ↓
 及第すれば『文章生〔もんじょうしょう〕『文人〔もんじん〕』『進士〔しんし〕とも言います)に補されます。
(※ ここまでの学生には「菜料」「燈油料」などの給費が出ます。これを『学問料』『給料』などと言い、また、こうした給費学生を指しても『給料』と言います。)

  ↓
 さらに詩作試験を受けます。
(※ この試験は「桂を折る」という表現もするようで、「燈油料が欲しいからまだ桂は折らないよ」てな感じに使います。由来は不明。桂は燈火と関係あるのかな?)

  ↓
 及第すれば『文章得業生〔もんじょうとくぎょうしょう〕『秀才〔しゅうさい〕』『博士〔はかせ〕とも言います)となります。

  ↓
 『方略〔ほうりゃく〕の宣旨』を貰い、『方略試』を受験します。
『方略試』はこのルートを通った人が受験する官吏登用試験で、国政の根本テーマ....「なぜ中国の〜の時代には賢者が多く出たのか出なかったのか」といったことですが....に対する解答(方策)を『方略の策』という論文で提出するものです。

  ↓
 及第すれば、叙位任官に預かることができます。つまり、学生の身分卒業、です。
明法・明経・進士・秀才などの難試験に及第した人を指して『成業の儒〔せいぎょうのじゅ〕』『大業の儒〔たいぎょうのじゅ〕と言います。

[和憩団欒房(ブログ)]の方へ、文章道/紀伝道関連の補足をいただいています。そちらも併せてご参照ください(1999/09/25〜29の投稿)。





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