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博士、助教には、みな明経道で師とするに足る人を任用すること。書博士、算博士もまた、業術優長な人を任用すること。
大学の生には、五位以上の子孫、及び、東西の史部の子を採用すること。もし八位以上の子が熱心に願ったならば許可すること。国学の生には、郡司の子弟を採用すること{大学生は式部が補すこと、国学生は国司が補すこと}。いずれも年13歳以上、16歳以下で、聡令な人を採用すること。
大学・国学は、毎年、春夏の二仲(2月・8月)の上丁(最初の丁〔ひのと〕の日)に、先聖孔宣父に釈奠(孔子を祭る礼)すること。饌酒明衣の費用は、いずれも官物を用いること。
学生は在学中、各々長幼の序列を守ること。入学時には、みな束脩〔そくしゅ〕(=束ねた乾し肉)の礼(入学時の教官への贈物)を行うこと。その師にはそれぞれ布1端。みな酒食あり。束脩を分けて、3分は博士に、2分は助教に納めること(博士1人:助教授1人の分を3:2に分けること、という意味で、定員は博士1人、助教2人なので、つまりは7分するということらしい)。
経は、周易、尚書、周礼、儀礼、礼記、毛詩、春秋左氏伝を、それぞれ1経とすること。孝経、論語は全ての学者(習学者)の必修とすること。
正業の教授には、周易には、鄭玄、王弼の注釈を、尚書には、孔安国、鄭玄の注釈を、三礼、毛詩には、鄭玄の注釈を、左伝には、服虔、杜預の注釈を、孝経には、孔安国、鄭玄の注釈を、論語には、鄭玄、何晏の注釈を用いること。
礼記、左伝を、それぞれ大経とすること。毛詩、周礼、儀礼を、それぞれ中経とすること。周易、尚書を、それぞれ小経とすること。2経に通じようとする人は、大経内から1経通じ、小経内から1経通じること。もし中経の場合は、併せて両経(2つの経(?))に通じること。3経に通じようとする人は、大経、中経、小経、各1経通じること。5経に通じようとする人は、大経をいずれも通じること。孝経、論語は、皆、必須として通じること。
学生は、先ず、経の文を読むこと。通熟して、しかる後に講義を受けること。旬(10日)ごとに1日、休暇を許可すること。休暇の前の1日に、博士は考試すること。読者は、試験にあたって、1000言の内ごとに1帖3言(1000字以内の1ヶ所の3字)を試験(その字を解答させる)すること。講者は、2000言の内ごとに、大義1条(1ヶ所の文意)を問うこと。 (読者試・講者試それぞれに)全部で3条、試験すること。2通したならば、及第とすること。1通した場合、及び、全く通じなかった場合は、斟量して、決罰すること。年の終わり(8月に博士の考課があり、それには学生の成績が関係するため、これは7月のことらしい)ごとに、大学の頭、助、国司の芸業優長な人が試験すること。試験者は、1年に受けた業を通計して、大義8条を問うこと。6以上の解答を得たならば上とすること。4以上の解答を得たならば中とすること。3以下の解答を得たならば下とすること。連続3年、下である場合、及び、在学9年までに貢挙の資格に足りない(2経以上に通じていない、或いは、秀才・進士たる才がない)場合は、いずれも、退学させること{国から大学に通う者は、年数を通計すること。服喪が終わって重任する(復学する)場合は、通計する限りにあらず。}
博士、助教は、みな、経を分割して教授すること。習学者は、1経を受講するごとに、必ず、受講を終了させること。受講を終了しない場合は、業を改める(他の経に変更する)ことはできない。
博士、助教については、みな、当年に講義し授けたものの多少を数えて、それを以て、考課の等級とすること。
学生は、2経以上に通じて、出仕したいと求めたならば、挙送するのを許可すること。挙送にあたっては、大義10条を試問すること。8以上の解答を得たならば、太政官に送ること。もし国学生が2経に通じてもなお、熱心に学問を願ったならば、式部に申し送ること。考練をして及第したならば、進学させ大学生に補すこと。
学生は、まだ長く講説を受けていないとしても、文章に習熟しており、才が、秀才・進士に足るようであれば、また、挙送するのを許可すること。
算経は、孫子、五曹、九章、海嶋、六章、綴術〔てつじゅつ〕、三開重差、周髀、九司を、それぞれ1経とすること。学生は、経を分割して習業すること。
国郡司は、経の義を解悟するようなことがあれば、すぐに教授を加えること。もし訓導で成すことがあれば、考課を進める。
書の学生は、写書を以て、上中以上ならば、貢挙を許可すること。算学生は、術理を弁明して、しかる後に、通じたものとすること。試験は、九章3条、海嶋、周髀、五曹、九司、孫子、三開重差で、それぞれ1条。9つ試験して、全て通過したならば甲とすること。6つ通過したならば乙とすること。もし九章を落としたならば、6つ通過したとしても、なお落第とすること。綴術、六章の試験は、前項に準じること。綴術に6条、六章に3条。9つ試験して、全て通過したならば甲とすること。6つ通過したならば乙とすること。もし経を落としたならば、6つ通過したとしても、なお落第とすること。及第者を叙す方法は、ひとつ明法の例に準じること。
学生の休暇申請にあたっては、大学生は頭に報告すること。国学生は所部の国司に報告すること。それぞれ、陳牒(牒の提出によって申請)して、判定して給付すること。
学生については、礼法を行う場でない限りは、みな、たやすく使役してはならない。
学生は、在学中、楽を作り、また雑戯してはならない。ただし、琴を弾き、弓射を習得するについては禁止しない。師の教えに従わず、また、1年以内に不正休暇が満100日となったならば、いずれも退学させること。
学生は、年齢15歳以下で、(父母の)喪に遭って服を終えて、復学を求めたならば、許可すること。
大学・国学生は、毎年5月に、田假(播種・収穫等のための休暇)を許可すること。9月に授衣假(新しい冬衣を受けるための休暇)を許可すること。往還路が遠い場合は、斟量して往還の程(旅程)も給付すること。
学生は、退学させられるにあたっては、みな、その退学に至った理由を書き並べて、式部に申告し、本籍地に下すこと。(その者が(?))五位以上の子孫の場合は、みな、年齢21歳のときに限って、(大学寮から)太政官に上申すること。蔭に準じて、ふさわしい身分に配すこと。
学生は、公私に礼の事(元日、及び、公卿大夫の喪葬の類をいうらしい)がある際には、儀式参観させること。