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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第二十九 獄令 全63条中21〜42条

(最終更新日:00.04.26

 − 目次 −




 

○21 婦人産条


流移囚について、道中、婦人(本人または妻妾・従者で良人の場合)が出産することがあれば、家口(家族・同行者)全員に休暇を20日支給すること{家女〔けにょ〕(=女性の家人)及び婢〔ひ〕には休暇7日を支給する。}。もし本人及び家口が病にかかった、或いは、増水で先に行くことができない場合は、いずれも付近の国司に報告して、毎日検校させること。進むことができるようになればすぐに発たせること。{もし病人に同行者が多く、全員を留め待たせることができない場合、領送使は(その病人を)しっかりと付近の国郡に預けること。法に依って療養させる(医薬を支給する)こと。癒えるのを待ってすぐに逓送させること。}もし(流移囚に同行している)祖父母・父母が亡くなったならば、休暇を10日支給すること。家口が亡くなることがあれば、3日。家人奴婢は1日。


 

○22 流移人条


流移の人が配所に到達する前に、(同行していない)祖父母・父母が郷に在って亡くなったならば、現在地で休暇を3日支給して発哀〔ほつあい〕(=(遠隔地へ行かずに)死者に哀悼の意を捧げるため哭声をあげること)させること。徒流の人が配所で服役中、(同行しているか在郷かを問わず)父母を亡くしたならば、休暇を50日支給して挙哀〔こあい〕(=発哀と同じ)させること。{祖父母が亡くなって跡継ぎとなる人もまた同じ。}2等親は7日。いずれも往還の日程は支給しない。


 

○23 婦人在禁条


良人の)婦人が禁所にあって(=女囚)、臨月となったならば、保証人を取って仮釈放するのを許可すること。死罪の場合は産後20日が満ちたとき、流罪以下の場合は産後30日が満ちたならば、いずれもすぐに(禁所へ)再収監すること。旅程は支給しない。


 

○24 犯死罪条


婦人が死罪を犯して子を産んだ場合、家口〔けく〕(=家人奴婢も含む同籍の人)がなければ、近親に預けて養育させること。近親がなければ四隣に預けること。(同じ身分で)養って子としたいと欲する者があれば、異姓であってもみな許すこと。


 

○25 公坐相連条


公坐相連〔くざそうれん〕(=官人が公罪を犯したとき、同一官司内の長官〜主典がそれぞれ連坐するもの)するときは、右大臣以上、及び八省の卿、諸司の長を、いずれも長官とすること。大納言、及び、少輔以上、諸司の弐(次官)を、みな次官とすること。少納言、左右弁、及び、諸司の糺判(を職掌とする官人)を、みな判官とすること。諸司の勘署(を職掌とする官人)を、みな主典とすること。


 

○26 父祖官蔭条


父祖の官蔭〔かんおん〕によって、出身して位を得た場合、父祖が除名の罪を犯したならば、子孫までは追求しない。もし子孫がまた除名したならば、後叙の日には無蔭〔むおん〕の法に従うこと。父祖の犯罪によって(?)降格して叙したならば、また後蔭〔ごおん〕に従って叙すこと。


 

○27 因犯移配条


官人について、犯罪によって移配するとき、及び、別勅で現任を解くとき、もしくは、本罪が除免官当してはならない場合は、位記はそれぞれ剥奪する範囲でない。


 

○28 応除免条


罪を犯して除免及び官当する場合は、奏報(=天皇への奏上と、解免した官司から任授した官司への報告)の日に、除名は位記をことごとく破ること。官当、及び、免官、免所居官は、ただ見当〔げんとう〕(=官当で返上する官位)・見免〔げんめん〕(=免官ないし免所居官で剥奪される官位)、及び、降至〔ごうし〕(=剥奪対象となる位階)の位記を破ること。降所不至〔ごうしょふし〕(=剥奪対象の位階よりも下の位階)については追求する範囲ではない。破るときには、いずれも太政官に送って破ること。式部の案(保存されている位記の写し)に毀〔き〕の字を記すこと。{太政官の印を、毀の字の上に捺印すること。}


 

○29 除免官当条


罪を犯して除免官当する場合は、(その官人は)執務にあたったり、朝会〔ちょうえ〕してはならない。勅命によって特別裁判を受けたならば、官当除免でなくとも、徒以上は内に参ってはならない。三位以上は、解官以上でなければ、執務にあたり、朝会し、及び、内に参って供奉(=身近にお仕え)するのを許可すること。


 

○30 犯罪事発条


罪を犯して事が発覚したとき、盗品を摘発されたり現行犯であることがはっきりしているならば、全共犯者の逮捕が未完了であったとしても、まず現在逮捕している人を犯状によって裁判すること。それ以外は後で追求すること。


 

○31 犯罪未発条


罪が犯されたものの発覚しておらず、及び、すでに発覚しているが判決が下されていない段階で、格〔きゃく〕により(現行法を)改正したならば、もし格の方が重ければ、(罪を)犯したとき(の法)に依るのを許可すること。もし格の方が軽ければ、軽い法に従うのを許可すること。


 

○32 告言人罪条


人の罪を告言〔ごうごん〕(=告発・告訴)するとき、謀叛以上でなければ、みな(真実かどうか告発者を)3審させること。告言を受けた官司は、いずれもつぶさに、虚偽ならば反坐に処せられるとの旨、はっきりと告げ示すこと。審判ごとにみな日を別にすること。告言文書を受理した官人が、審判の文書の末尾に署名すること。審判が終わったならば、しかる後に裁判を行うこと。もし事件に切害〔せちがい〕があればこの例ではない。{切害というのは、殺人し、賊盗し、逃亡し、もしくは良人を強姦し、及び、急速の事情があるもの(堤防を壊したり水火を放って家を焼いて盗むなどの類)をいう。}被告の身柄を拘束するときは、告発者の身柄もまた拘束すること。取り調べを終えた上で(告発者を)釈放すること。


 

○33 告密条


告密〔ごうみつ〕(=密(=謀叛以上の犯罪)を告発)する人は、みな当処の長官に報告して告言すること。長官に犯罪があるのならば、次官(次官のいない国の場合は隣国の国司)に報告して告言すること。もし長官・次官ともに密の事があれば、任意に隣国に報告して論告すること。告発を受理した官司は、法に準じて(誣告であったら反坐に処す旨を)示し語り、具体的な内容を言ったならば、すぐに身柄を拘束して、状況に応じて取り調べること。もし逮捕すべきならばすぐ逮捕すること。(自国のみでは逮捕不能で)他国と相談すべき場合は、所在の国司は、状況に応じて逮捕収容すること。事件が謀叛以上にあたるならば、(まだ告発人を)取り調べている(途中だ)としてもなお、馳駅〔ちやく〕して奏聞すること。乗輿を指斥〔ししゃく〕(=天皇を(名指しで)批判)したとき、及び、妖言で衆を惑わしたならば、検校し終わってからまとめて奏すること。告発を承けて逮捕したならば、もし(告発どおりの犯罪のみで)別状がなければ、(捜査開始時の馳駅奏聞のみに止め)別奏してはならない。告密を称しているとしても、(誣告の場合の処置を)示し語ったとき、(密事であるとのみ言って)具体的な内容を言わず、事を天皇に直接奏上すると言ったならば、告発を受理した官司は、さらにはっきりと、虚偽ならば無密反坐の罪に処せられると示し語ること。また(ここで)、具体的な内容を言ったならば、身柄を拘束して馳駅して奏聞すること。もしただこれは謀叛以上であると(のみ)称して、(具体的な)事状を吐かない場合は、駅を使って使を差し充て監督させて京に送ること。{もし勘問しても事状を言わず、そのために(摘発等の)時期を逸したならば、知っていて告発しなかったことと同じとする。}死罪を犯した囚人、及び、配流の人が、告密した場合は、いずれも(京へ)送る範囲ではない。取り調べ、及び、奏聞する場合は、前の例に準じること。


 

○34 囚逮引人条


囚人が、他人を共犯者だと主張したならば、みな詳しく事情を問いただし、然る後に召喚すること。もし召喚して無罪と判明して釈放して、またさらに妄りに主張した場合、及び、囚人が、獄に在って死んだならば、年ごとに事状をつぶさにして、朝集使に預けて、太政官に報告して(太政官から使人を派遣して)再審すること。


 

○35 察獄之官条


察獄〔さつごく〕(=犯罪の審理)をする官人は、まず五聴(=辞聴・色聴・気聴・耳聴・目聴で、被告の言辞・顔色・気息・聞いたことへの反応・目つき)を観察し探ること。また、諸々の證信〔しょうしん〕(=証拠)を調べること。事状が甚だ疑わしいにも関わらず、なお白状しないならば、こうした後に拷掠〔こうりょう〕(=訊〔じん〕=拷鞫〔こうきく〕=拷問)すること。訊はそれぞれ間を20日置くこと。もし訊を終えぬまま、他司に移して拷鞫する場合は{囚人を他司に移したならば、本案(訊問調書)を連写して一緒に移すこと}、前の訊と通計して、計3度まで行うこと。罪が重害でない場合、及び、嫌疑が少ない場合には、必ずしもみな3度を満たすようにしてはならない。もし囚人が、訊によって死亡したならば、みなつぶさに当処の長官に報告すること。在京の場合は、弾正と共に対面して検証すること。


 

○36 非親訊司条


囚人を訊問するにあたっては、自ら訊問を担当する官人でなくして、囚人の所に出かけ接見することはできない。


 

○37 冤枉条


すでに死罪が定まり奏報(=天皇へ報告)した場合であっても、なお冤枉〔えんおう〕(=冤罪)を訴え、無実と疑わしいことがある場合、推覆〔すいふく〕(=再審)するときは、書類を以て奏聞すること。使を派遣し馳駅〔ちやく〕して検校すること。


 

○38 問囚条


囚人の訊問が終了したならば、訊問した司は、口述を写した供述書を作成すること。(作成が)終わったならば、囚人に対し読み示すこと。


 

○39 禁囚条


囚禁〔しゅきん〕(=獄囚の収監)について、死罪は枷【木丑】〔かちゅう〕(=首かせ・足かせ)。婦女及び流罪以下は、【木丑】〔ちゅう〕(=足かせ)を除けること。杖罪は散禁(=特に刑具を着けず収容して出入の自由を禁じる)。年齢80歳(以上)、10歳(以下)、及び、癈疾〔はいしち〕(=身障者等)、懐孕〔えよう〕(=妊婦)、侏儒の類は、死罪を犯したとしても、また散禁とする。


 

○40 犯罪応入条


犯罪があって、議請〔ぎしょう〕に入る(=特別審判の開廷、及び、天皇裁決の申請を行う)場合には、みな太政官に申告すること。審議に際しては、大納言以上、及び、刑部卿・大輔・少輔、判事が、太政官に於いて議定すること。六議(=皇親・高位高官・賢人・武功者といった特定の重要人物が持つ特別審議の特権)に該当しない件だとしても、刑部省及び諸国で流〔る〕以上ないし除免官当を裁判した場合に、処断に疑わしいことがあり、及び(被告が)処断に伏さないときは、また衆議して量定すること。本条に挙げた太政官刑部省(の官人)でないといえども、別勅によって参議(=審議に出席)する場合は、また(議場へ)集まる範囲にある。もし(出席者の)意見が異なることがあれば、個人別にその議を述べること。太政官は断簡して書類を以て奏聞すること。


 

○41 諸司断事条


諸司の判決(文書)は、ことごとく律令の正文〔しょうもん〕に依る(=本文に依拠する)こと。(文書内にあるミスについての)主典による検出は、ただ実情を調べることのみ可能。判決内容について安易に論じることはできない。


 

○42 応議請減条


議請減〔ぎしょうげん〕(=議や請や減といった減刑特権者に相当)すべき人が、流〔る〕以上(に当たる罪)を犯した場合、もしくは除免官当(に当たる罪を犯した場合)は、いずれも肱禁〔こうきん〕(両肱〔ひじ〕を縄縛して収監)すること。公坐〔くざ〕(=公事によって犯した罪)の流〔る〕、私罪の徒〔づ〕は{いずれも官当〔かんどう〕(流・徒の実刑の代わりに位勲を1年間剥奪する換刑)でない者をいう}、(身柄を拘束せず)保〔ほう〕(=保証)を取って参対〔さんだい〕させる(在宅のまま訊問時のみ出頭させる)こと。初位以上及び無位の、贖〔ぞく〕(=実刑の代わりに相当額の贖銅〔ぞくどう〕を徴収する換刑)すべき人(=議請減の特権者の縁者、及び70歳以上16歳以下)が、徒以上及び除免官当(に当たる罪)を犯したならば、梏禁〔こくきん〕(=足かせを着けた拘禁)。公罪の徒は、いずれも散禁(=特に刑具を着けず収容して出入の自由を禁じる)。巾〔かぶり〕は脱がせない。




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