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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第十四 考課令 全75条中50〜75条

(最終更新日:00.03.26

 − 目次 −




 

○50 一最以上条


1最以上4善あれば、上上とすること。1最以上3善あるもの、或いは最がなく4善あるならば、上中とすること。1最以上2善あるもの、或いは最がなく3善あるならば、上下とすること。1最以上1善あるもの、或いは最がなく2善あるならば、中上とすること。1最以上であるもの、或いは最がなく1善あるならば、中中とすること。職事があらかたおさまっており、善や最が聞こえてこなければ中下とすること。愛憎に情を任せ、処断が理に背いていたならば、下上とすること。公に背いて私に向かい、職務に廃れや欠けがあるならば、下中とすること。官にあって詐り騙し、また、貪濁の状があるならば、下々とすること。もし善最以外に、特に褒めるべきことがある場合、及び、罪が殿に付けられる(除免官当には至らないが記録される)ことになったとしても情状酌量の余地があるもの、或いは、殿に付けられることにはならなかったとしても情状を責めるべきものは、省校(諸司の考文を式部兵部省で勘校校定すること)の日に、みな臨時に量定するのを許可すること。


 

○51 分番条


分番の人(舎人史生・伴部・使部・六位以下の散位等)は、毎年、本司がその行能功過を量って、3等の考第を立てること。心控えめに謹み励み、執当をきちんとこなすならば、上とすること。番上を違うことなく、言いつけの任務をよく成したならば、中とすること。サボったり違反したりしてきちんと仕えず、執当で欠けたり失ったりのことがあるならば、下とすること。本人に面と向かって定めること。終わったならば、つぶさに記して省へ送ること。


 

○52 兵衛条


兵衛は3等の考第を立てること。恭勤謹慎して、宿衛を法の定めどおりにし、しっかりと弓馬を習ったならば、上とすること。番上を違えず、職掌に失なく、弓馬を解すといえども、これに熱心でない場合は中とすること。番に違って仕えず、しばしば失態を犯すことがあり、好んで私的休暇を申請し、弓馬を習わない場合は、下とすること。


 

○53 衛門条


衛門の門部は3等の考第を立てること。担当の門を正しく守り、禁察を明らかにし、担当の場でよく奸非を粛めたならば、上とすること。門に居ることを怠らず、検校に失態がない場合でも、禁察に熱心でないならば、中とすること。その門を勤めずに、しばしば過ち違えることがある場合、検校の所に事が多く疎漏であるならば、下とすること。


 

○54 国郡司条


国郡司は、撫育に方があり、戸口が増益したならば、それぞれ元の戸数を基準として、その10分の1ごとに計算して、それを通計すること。1分を加えたならば、国郡司に{、及び、少領以上をいう}それぞれ考1等を進めること。1分加えたごとに、1等進めること{増戸とは課丁が増えることをいう。1丁は1戸と同じに数える。次丁2口、中男4口、不課口6口ごとに、それぞれ1丁と同じ。破除(記載籍帳からの削除)することがあれば、相殺してよい}。もし撫育が方に違っており、戸口が減損したならば、それぞれ増戸の法に準じて、1分減ったならば、1等降すこと。1分減らすごとに、1等降すこと{課、及び、不課は、いずれも上の文に準じること}。田農を勧め課して、よく豊かに植えさせることができたならば、また元の地数を基準として、その10分の1ごとに計算して論ずること。2分を加えたならば、それぞれ考1等を進めること。2分加えたごとに、1等進めること{熟田以外に、特によく墾田した者をいう}。勧め課すことをせずに、それを以て損減することがあれば{熟田の中に荒廃することがあった場合をいう}、1分損なったならば、考を1等降すこと。1分損なうごとに、1等降すこと。もし数々の所で功があり、いずれも考を進めるべきものであれば、また累算するのを許可すること。


 

○55 増益条


国郡で、戸口増益することをもって考を進める場合は、もしこれが招慰したもの{蝦夷など、未だ籍に付けられていないいわゆる化外の民を招慰して、新たに籍に付けて本籍地を定めた者をいう}、括出(籍の記載漏れを官司が摘発したもの)、隠首(籍の記載漏れとなっていた本人が自首したもの)、逃走者の帰還であるならば、功の範囲に入れてよい。折生(戸口の分割など)の場合は功の範囲に入れてはならない。もし戸口が、逆(逆党、逆国、蝦夷など化外の国)に入ったり、失踪したり、罪を犯して流以上に配されたり、死者・逃亡者を前の戸籍帳のまま改めずに実際と異なるまま記していたりする場合、及び、逆賊に没落して減損したならば、考を降す例に依ること{逆賊に没落するに関しては、人の力の制するところでない場合はいわない}。


 

○56 官人加戸口条


官人について、戸口を加え、及び、田農を勧め課すことによって、またその他の功によって、考を進めた場合に、その後もし、それが事実でないことが判明した場合には、たとえ恩赦を経た後といえども、その考をみな溯って改正させること。


 

○57 犯罪附殿条


官人は、罪を犯して殿に付けたならば、みな獄案にしたがってそのまま記録すること。私罪(個人的な罪=私坐)は贖銅1斤ごとに1負と計算すること。公罪(公事によって犯した罪=公坐)は2斤ごとに1負とする。それぞれ10負を1殿とすること。上上の考に当たっていれば、殿があるとしても降さない{私罪でないものをいう}。上中より以下は、1殿ごとに1等降すこと。公罪の殿は、失態があって降すのでなく、もし当年の労劇が通常よりも異なることがあったならば、1殿を減ずるのを許可すること。過失で人を殺し傷つけた場合、及び、罪の疑いがあって贖を徴収した場合は、いずれも殿の範囲には入れない。


 

○58 犯私罪条


官人は、私罪の下中、公罪の下下を犯すことがあったならば、いずれも現任を解く。法に依ってすぐに除免官当すべきものは、考校の範囲にない。いずれも当年の禄を奪うこと{その罪が除免官当や私罪下中・公罪下下に至らない場合に、特別に除名解任した場合には徴収しない}。私罪下中・公罪下下の考第によって解任した場合には、1年後に叙すのを許可すること。


 

○59 内外初位条


内外の初位以上の長上の官吏は、考の前に出勤した日数を総計して240日に満たない場合、分番は、140日に満たない場合、もし帳内・資人であれば、200日に満たない場合は、いずれも考しない(不考とする){分番の人について、もし長期の欠勤があり、考の前に不足を補うよう仕えたいと願ったならば、みな通計するのを許可すること。公使として派遣している間に新たな補任を行った場合には補任の日を起点として、また、補任の後、未だそちらへ出仕しないうちに公使として派遣した場合には遣使の日を起点として、いずれもその遣使期間を、新任の官司での出勤日数と同様に取り扱う。もし、ある官司に仕える人が、遣使中に解任等の異動にあった場合には、異動後の遣使期間を前官での出勤日数として通計するのを許可すること}。功過が熱心であり理を推薦すべきようなことがあれば(?)、出勤日数が満たないとしても、別に記して省に送ること。分番・長上とを通計して考する場合には、分番の3日を長上の2日に当てること。毎年、考文の集まる日に、省が勘校して、色(三位以上の内長上・五位以上の内長上・六位以下の内長上・外長上・内分番帳内・資人)ごとに記録を作ること。つぶさに功過を記すこと。三位以上は奏裁すること。五位以上は太政官が量定して奏聞すること。六位以下は省が校定すること。終わったならば考第を唱示し太政官に申告すること。もし考が下第に当たり、状を尽くすことができないことがあったり、量定校定を明らかにしがたい場合は、使に持たせて勘覆すること。その善悪は後年を待って、総合的に定めること。もし考を過ぎて後、理を訴えて従わない場合、それをあらうにはまたこのようにすること。


 

○60 任二官条


2官以上を兼任した場合には、それぞれ官考に依ること。省考校の日に、兼任の諸官での功と過を相殺したり累計したりして、それを、そのうちの官位相当の高いひとつの官での考とするのを許可すること。もしいずれか1官で私罪を犯して解任すべき場合は、他の官もいずれも解任すること。兼任のうちの1官を解任した場合、そこで累計すべき考を、現任の官での考に通計するのを許可すること。


 

○61 大弐以下条


大弐以下、及び、国司は{以上をいう}、毎年分番して朝集すること。所部のうちの、現任及び解代(〜外散位・郡司・国造、軍団大・少毅等)をみな存知しておくこと。在任以来の年別の行迹は、勘問に随って答弁すること。


 

○62 内外官人条


内外の官人は、考に準じて解官する場合には、そのまま執務させてはならない。符報を待ってすぐに解任すること。


 

○63 応考之官条


考すべき官吏が、罪を犯して獄案ができあがった場合、考日(8月いっぱい)にすぐに考状に記録すること。もし他司の人で功過があるならば、記録して本司に牒し、考に記録させること。在京の断罪の司(すべての在京諸司が相当)は、処断の罪を、9月30日以前に、いずれも記録して省に送ること。


 

○64 官人犯罪条


官人が罪を犯して、勅断による罪の軽重変更があった場合には、みな勅断に依って殿を付けること。もしその罪が、殿にならず、勅で考に付けさせる場合には、その罪に依って考に付けること。別勅で放免する場合、及び、恩降(恩赦や勅による罪の減降)に遭った場合は、いずれも(刑罰は受けていても)殿の範囲に入れない{その罪が私罪で、断が徒〔ず〕以上である場合に、恩免(恩赦や別勅による放免)を被って、当年の考を上とするべきであれば、また殿に準じて降すこと。ただし、降して下第に至るようなことがあってはならない}。もしその罪が免官以上である場合、及び、贈賄など不当利得の罪を犯して恩赦以前に獄成った場合には、(たとえその後の恩赦等でその罪が免じられても)その罪を含む景迹を以て通計すること。考を落とし、禄を奪うことは、いずれも通常の法に依ること。その罪が除免でなければ、(たとえ私罪下中以下であっても)解官しない。


 

○65 殊功異行条


毎年、諸司は、国郡司の政事の殊功異行、及び、祥瑞・災蝗、戸口・調役の増減、当界の豊倹(農地の豊かさ)、盗賊の多少があること、を知ったならば、いずれも記録して省に送ること。


 

○66 家令条


家令は、毎年、本主が、諸司の考法に準じて考を立てること{嬪以上、及び、内親王家事は宮内省に付けること}。考し終わったならば、省に申告して案記すること{考に準じて解任すべき場合は諸司の法と同じ}。



(考外位)


外位を考することについて。


 

○67 考郡司条


国司は、毎年、郡司の行能功過を量って、4等の考第を立てること。清謹して公に勤め、勘当が明審である類を、上とすること。官にあって怠らず、事を執るに私がない類を、中とすること。その職務を果たさず、しばしば過ちを犯すことがある類を、下とすること。公を背いて私に向かい、貪濁の状がある類を、下下とすること。軍団の少毅以上が、統領すること方があり、部下が厳粛に整っていれば、上とすること。清平に謹恪して、武芸を称えるべきは、中とすること。事に於いてこれといった勤めがなく、武芸に長じていないならば、下とすること。しばしば失誤があり、武用の役に立たぬ場合(?)は、下下とすること。毎年、国司は考にあたっては、本人に面と向かって定めること。終わったならば、つぶさに記して、朝集使に持たせて、省へ送ること。下下の考は、当年の内に校定して、すぐに解任すること。


 

○68 国博士条


国博士は、3等の考第を立てること。官にあって怠らず、教導に方があれば、上とすること。教授することを怠らず、生徒の業が充ちたならば、中とすること。その職務を果たさず、教訓に欠けるところがあれば、下とすること。医師は、効験の多少に応じて、10回のうち7回以上を得たならば、上とすること。5回以上得たならば、中とすること。4回以下を得たならば、下とすること。


 

○69 考帳内条


帳内、及び、資人は、毎年、本主が、その行能功過を量って、3等の考第を立てること。恪勤して怠らず、清廉で、主の意に適うようであれば、上とすること。言いつけを守ることが意に適い、産業を怠らないならば、中とすること。好んで私的休暇を請い、しばしば失誤することがあれば、下とすること。



(考貢人)


貢人を考することについて。


 

○70 秀才条


秀才の試験は、方略の策2条(2問)。文章・道理ともに高ければ、上上とすること。文が高く理が平凡である場合、理が高く文が平凡であるならば、上中とすること。文理ともに平凡であれば、上下とすること。文理あらかた通じているようならば、中上とすること。文が拙く、理に滞っているならば、みな不第(落第不合格)とすること。


 

○71 明経条


明経の試験は、(選択した経のひとつが)周礼・左伝・礼記・毛詩であればそれぞれ4条(ひとつの経に関して4問出題)、(選択した経のひとつが)その他の経であれば、それぞれ3条、(必修の経である)孝経・論語については、併せて3条、(計10〜11問)みな経の本文及び注を挙げて問うこととする。答者が、設問の義理(意味や理)を弁明(理解説明)したならば、しかる後に、通じた、とすること。10、通じたならば、上上とすること。8以上通じたならば、上中とすること。7通じたならば、上下とすること。6通じたならば、中上とすること。5つ、及び、ひとつの経に於いて全問不通である場合、もしくは、論語・孝経で全問不通である場合は、みな不第とすること。2経通じて(上中以上の成績で及第して)、それ以外に、更に別の経にも通じている(と主張する)場合には、経ごとに、大義7条を問うこと。5以上通じたならば、(その経に)通じている、とすること。


 

○72 進士条


進士の試験は、時務(治国の要務)の策2条。帖〔じょう〕して(1行の3字を板で隠して)読ませる所は、文選の上【《ころもへん》+失】〔じょうじつ〕から7帖、爾雅から3帖。策の文詞が順序だっており、義理が確かで当たっており、併せて、帖を通過したならば、通(合格)とすること。事の義に滞ったところがあり、詞句が不倫である(=先儒の典籍の文に似てない=類例がない)もの、及び、帖を通過できない場合は不(不通)とすること。帖・策の全問に通じていたならば、甲とすること。策で2通し、帖で6帖以上通過したならば、乙とすること。それ以外はみな不第とすること。


 

○73 明法条


明法の試験は、律令から10条{律から7条、令から3条}。義理を識達し、試問して疑滞することなければ、通とすること。あらかた綱例を知っているが、指帰することを究めてなければ、不とすること。全問通じていたならば、甲とすること。8以上通じていたならば、乙とすること。7以下通じていた場合には、不第とすること。


 

○74 貢挙人条


貢挙人の試験は、みな卯の時(午前6時頃)に出題すること。当日中に答案を提出し終えること。式部は監試すること。当日中に終了しないものについては考しない(採点しない=失格)。終わったならば、(採点者は)本司の長官と対面して等第を定めて唱示すること。


 

○75 貢人条


貢人(国学からの推挙者)は、みな本部の長官(国守)が、太政官に貢送すること。もし長官がなければ次官が貢すこと。その人は朝集使に随って赴集すること。到着の日にみな弁官に引見して、すぐに式部に預けること。すでに貢送を経て、事情があって試験するに及ばない場合は、後年、試験するのを許可すること。大学の挙人(大学からの推挙者)は、状をつぶさにして太政官に申告すること。諸国の貢人と同様に試験すること。試験を終えて及第したならば、奏聞して式部に留めること。不第ならばおのおの本色(在学9年未満なら本学へ9年経っているなら本籍地へ)へ還すこと。




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