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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第十七 軍防令 全76条中24〜51条

(最終更新日:00.04.02

 − 目次 −




 

○24 将帥出征条


将帥の出征に関して、兵が10000人以上を満たしたなら、将軍1人、副将軍2人、軍監2人、軍曹4人、録事4人(を置くこと)。5000人以上ならば、(そこから)副将軍・軍監を各1人、録事2人を減らすこと。3000人以上ならば、(さらに)軍曹を2人減らすこと。それぞれ1軍とすること。3軍ごとにそれを統括する大将軍1人(を置くこと)。


 

○25 大将出征条


大将の出征にあたって、軍に臨んで敵に対しているときに、大毅以下が軍令(大将のみが出すことのできる作戦指令)に従わず、また、軍事を怠ったり違反して緊張に欠け覇気を乏しくすることがあれば、(律によって)死罪以下(に相当するもの)は、いずれも大将が斟酌して(勅裁を経ずに)決定するのを許可すること。帰還の日に、事情をつぶさにして太政官に申告すること。もし敵や賊に臨んでいない場合は、この令は用いない。


 

○26 軍将征条


軍将が征討するにあたって、交代する場合は、元の将が出迎えに行ってはならない。必ず兵を厳重にして守備しておくこと。代わる人が到着したならば、詔書を開き示して、合符(本人を証明する符か)を検討確認し、その上で従軍させること。


 

○27 征行者条


征行にあたって、みな自らに婦女(使用人・婢を含む)を連れ従えることはできない。


 

○28 征行条


征行について、大将以下(すべての戦士)が父母の喪に遭うことがあったならば、みな征討から帰還するのを待って(大将軍が節刀を奉還し、戦士以上が軍用の官物を所属の役所に返納し終わってから)、然るのちに告発〔ごうほつ〕する(=喪を告げ哀を発する)こと。


 

○29 士卒病患条


士卒(すべての戦士)が病患した場合、及び、陣にあって負傷した場合には、みな医〔くつし〕(医師)を派遣して治療すること。軍監以下は自ら治療に立ち合うこと。


 

○30 定勲功条


大将が出征し勝利の後、諸軍を解散する前に、すぐに衆に対して詳細に軍功を定め(勲簿を作成)すること。併せて軍行以来の勝利のこと、及び、諸々の軍用物資・軍人・兵馬・甲仗の現在数量・損失数量を記録して、大将以下が連署すること。軍が帰還した日に、軍監以下録事以上は、おのおの本司(兵庫寮や馬寮など)に赴き、返納して持ち出した物資との照会を行うこと。終わったならば然る後に放還すること。


 

○31 申勲簿条


勲の申告の簿〔ふ〕(勲簿)には、みなつぶさに、陣別の戦果、勲人〔ぐんにん〕(戦功を立て叙勲されるべき人)の官位姓名、左右廂(軍陣内で配置された左廂・右廂の別)と相捉〔そうさく〕(指揮官)の姓名、それぞれの人別に扱った武器の種類、勲人の所属する軍団、主帥(軍団の隊正)、本籍地(国郡)、官軍・賊衆〔ぞくしゅ〕の勢力人数の多少(正確な人数というわけではない)、あちらとこちらが殺傷した数、及び、獲得した賊・軍資(食料や牛)・器械(武器や甲冑)を記録し、戦ったときの日月、戦いの場所を明記して、併せて、陣別の戦図(戦争地図(合戦絵図との見解もある))を描くこと。そうして図の上に、つぶさに副将軍以上の姓名を注記して、勲簿に付けて、太政官に申し送ること。勲賞の高下は臨時に勅を聴くこと。


 

○32 叙勲条


行軍を叙勲するとき、勲簿を定めるにあたっては、隊ごとに先鋒の人をもって第1とすること。その次を第2とすること。第1等は得なかったものの、その勲功が第2等より優れていた場合、そして、同じ勲等といっても人によって優劣が少し異なるならば、みな勲功のある順に名を列記すること。もし(勅があって)全てを叙勲することがならない場合は、後ろのものから数を減らしていくこと。


 

○33 応加転条


叙勲のときに、転(勲功を計る単位)を加える(加転する)にあたっては、みな現在の勲位の上に加算すること。もし勲位がなければ、1転に対し勲十二等を授けること。(その後は)1転ごとに1等を加算すること。勲六等以上には、2転ごとに1等を加算すること。勲二等以上には、3転ごとに1等を加算すること。五位以上の人で、勲位を加算し尽くして(勲一等まで昇って)なお、余りの勲功(転)がある場合は、父子に分け授けるのを許可すること。もし父子が亡くなっているならば、1転ごとに田(功田ではなく賜田)を2町賜うこと。六位以下、及び、勲位(無位で勲位だけある人)の人は、1等を加えてなお、余りの勲功(転)がある場合は、父子に分け授けるのを許可すること。(ただし、)田を賜う範囲にはない。


 

○34 得勲条


勲人が勲を得るにあたって、叙勲以前に亡くなった場合は、その勲は生存者の場合と同様、前条の規定に依って加算し授けること。もし戸が絶えて、その人の蔭などを受ける人がない場合は、叙勲や分授(合授)を停止すること。


 

○35 犯除名条


勲位について、除名にあたる犯罪を犯し、その保留期限を満たしてから叙す場合には、勲一等は勲九等に叙すこと。勲二等は勲十等に叙すこと。勲三等は勲十一等に叙すこと。勲四等以下は勲十二等に叙すこと。官当及び免官、免所居官は、降叙を計算してこの法に達しない(十二等以下になる)場合は、(名例律との兼ね合いで)高い等級になる方に準じて叙すのを許可すること。


 

○36 簡点次条


兵士の徴発の規定(03兵士簡点条)によらない場合は、安易に人を取って軍に入れ、また、人を解放して軍から出してはならない。替え玉して軍に入ったりして認定され賤に入る場合、及び、蔭があって軍より出る人の場合、検討してそれが事実であるならば、みな兵部に申告して軍より出すのを許可すること。軍に在籍する人の年齢が60歳になったならば、軍役を免除すること。60歳に満たないとしても、身体が弱く長く病気して軍役に耐えられない場合は、また出すのを許可すること。


 

○37 兵衛考満条


兵衛は考満(8考での叙位の年)に達するごとに、兵部省が校練すること。文武の才能に従ってつぶさに等級を定めて太政官に申告すること。時々の任務を遂行するに足る場合は、才能を量って処理すること。年齢60歳以上ならば、みな兵衛を免除すること。また60歳に満たないとしても、もし脆弱で長い病気をして宿衛に耐えられない場合、及び、郡司に任ずることがあった場合には、本府(左右兵衛府)は事情を記録して、併せて、身柄を兵部省に送ること。検覆(=特別調査)して事実であると確認できたならば、奏聞して放出すること。


 

○38 兵衛条


兵衛は、国司・郡司の子弟(少領以上の子孫弟姪)の、剛健で弓馬が得意な人を選んで、郡ごとに1人貢すこと。もし采女を貢した郡は、兵衛を貢す範囲にはない。{1国を3分して、2分は兵衛、1分は采女(等分できないときは兵衛の方を多くする)。}


 

○39 軍団置鼓条


軍団にはそれぞれ、鼓を2面、(軍事用の角笛である)大角〔だいかく〕(はらのふえ)を2口、少角〔しょうかく〕(くたのふえ)を4口、置くこと。(鼓も角も)双方を通じて(取扱者は)兵士を用いること。分番して教習すること。倉庫が損壊して修理する場合は、10月以降に兵士を勤務させるのを許可すること(?)。


 

○40 行軍兵士条


行軍の兵士以上が、もし病気になったり死亡することがあったならば、行軍はつぶさに随身の資財を記録して本籍地(?)の人に預けて連れ(持ち)帰らせること。屍は当所で焼いて埋葬すること。ただし副将軍以上は、(専使を派遣して)本籍地へ還すこと。


 

○41 出給器仗条


器仗等を給付した場合は、領収の日にきちんと証明文書を作ること。行事・還事(行き帰りの行事)が終了したならば、簿に拠って照会し返納すること。もし正当な理由なく損失することがあれば、太政官に申告して相当分を弁償させること。


 

○42 従軍甲仗条


軍に配備する甲仗(鎧とその他の兵器)は、戦いの経緯で失落した場合は弁償徴収を免除すること。損壊した場合は、太政官が修理すること。戦いを経ることなく損失したならば、3分の2を徴収すること。軍に配備したのでなく(駕行や儀式などで)損失したならば、みな損失当時の估価(物価)、及び、料造式(武器製作の人員・資財・数量などの規定か)に準じて、徴収配備すること。太政官は修理をすること。水火に焼き流されたりして、人力の制御するところでなかった場合は、実情を検討して徴収を免除すること。国郡の器仗は、毎年、帳に記録して、朝集使に預けて、兵部省に申告すること。(兵部省は)審査検討し終わったならば、2月30日以前までに記録して進奏すること。


 

○43 軍器在庫条


軍器を(兵器)庫に置くときは、みな棚を作って安置すること。種類別に場所を分けること。適時、曝涼(陰干し)すること。


 

○44 私家鼓鉦条


個人の家には、鼓鉦〔くしょう/こしょう〕(皮鼓と金鼓)、弩、牟〔む〕(2丈(約5.9m)の矛〔ほこ〕)、【矛肖】〔しゃく〕上で用いる1丈2尺(約3m55cm)の矛)、具装(の武装)、大角、少角、及び、軍幡(軍旗類)があってはならない。ただし、楽鼓(楽器としての鼓)は禁止の対象としない。


 

○45 在庫器仗条


(兵器)庫にある器仗は、使用に耐えないようであれば、当所の長官が実情を検討し事情をつぶさにして太政官に申告すること。状態に応じて、処分・廃棄すること。鑽(槍類の矛先)、刃、袍(鎧の下に着る綿入れの一種)、幡(旗)、弦麻(弓弦用の麻)の類は、そのまま当所で軍器を修理するときの用に充てること。在京の(兵器)庫の場合は、兵部省に送って、任意に公用に充てること。もし保管管理が法に照らして不適切で損壊してしまったのならば、事情に応じて相当分を弁償させること。


 

○46 五位子孫条


五位以上の子孫は、年齢21歳以上で、現在、役任がなければ、毎年、京国の官司が審査検討して実情を調べること。12月1日を期限として、併せて、その身柄を式部省に送って、太政官に申告して、性識聡敏でありその儀容によって採用すべき人を選考して、内舎人に充てること。{三位以上の子は選抜の対象としない(選考なしで任用)。}それ以外は、式部省が、状況に応じて大舎人及び東宮の舎人に充てること。


 

○47 内六位条


内六位以下八位以上の嫡子は、年齢21歳以上で、現在、役任がなければ、毎年、京国の官司が審査検討して実情を調べること。実情を採点して選考すること。3等級に分けること。儀容端正で書算に巧みであれば、上等とすること。身材強幹で弓馬が得意であれば、中等とすること。身材劣弱で文算に不識であれば、下等とすること。12月30日までに上等・下等を式部省に送って選考すること。上等を大舎人とすること。下等を使部とすること。中等を兵部省に送って試練して兵衛とすること。もし人数が足りなければ、(大舎人兵衛使部(義解では兵衛のみと規定)を)通じて、庶子を採用すること。


 

○48 帳内条


帳内(=親王・内親王に与えられる従者)には、六位以下の子、及び、庶人を採用すること。資人(大臣・大納言の職に与えられる従者(職分資人)と五位以上に与えられる従者(位分資人))には、内八位以上の子を取ってはならない。ただし職分(資人)に充てる場合は許可すること。いずれも、三関(鈴鹿関のある伊勢・不破関のある美濃・愛発関のある越前)及び大宰府管内(西海道諸国島)、陸奥、石城、石背、越中、越後の国の人を取ってはならない。


 

○49 給帳内条


帳内の給付にあたっては、一品に160人。二品に140人。三品に120人。四品に100人。資人は、一位に100人。二位に80人。三位に60人。正四位に40人。従四位に35人。正五位に25人。従五位に20人。{女には半減すること。減らす数が半分に割り切れない場合は繰り上げ計算して給付すること。}太政大臣に300人。左右大臣に200人。大納言に100人。


 

○50 【《やまいだれ》+隆】〔りゅう〕疾条


帳内・資人が、【《やまいだれ》+隆】〔りゅう〕疾して(癈疾以上を指すが、ここでは執務に耐えない病気にかかった場合を指す)、仕えることを免除するにあたっては、みな式部省に申請すること。審査検討して事実であるとわかったならば、(別の人と)交替するのを許可すること。


 

○51 給事力条


大宰、及び、国司には、いずれも事力を給付すること。帥に20人。大弐に14人。少弐に10人。大監、少監、大判事に6人。大工、少判事、大典、防人の正、主神〔かんづかさ〕、博士に5人。少典、陰陽師、医師、少工、算師、主船〔ふねのつかさ〕、主厨〔くりやのつかさ〕、防人の佑に4人。諸々の令史に3人。史生に2人。大国のに8人。上国の、大国のに7人。中国の、上国のに6人。下国の、大上国のに5人。中国の、大上国のに4人。中下国のに3人。史生は前のごとく。{1年に1度交替すること。みな上等の戸のうちの丁を取ること。同時に庸を徴収してはならない。}




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