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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第二十一 公式令 全89条中62〜89条

(最終更新日:00.04.02

 − 目次 −




 

○62 受事条


(弁官が)庶事を受理したとき、1日に受理したならば2日(=翌日)に(諸司に)下達すること。急ぎの事である場合、及び、徒〔ず〕以上の身柄を送致する場合は、到着受付後、すぐに下達すること。(弁官から送付された庶事が)少事である場合、(諸司での決裁期限は)5日間{検覆(=特別調査)の必要のない案件をいう}、中事は10日間{前案(=関係文書)を検覆し、及び、勘問するところがあるものをいう}、大事は20日間{大簿帳〔だいふちょう〕(大きな帳簿)での計算を要する案件、及び、諮詢〔しじゅん〕(重要な勘問)すべきものをいう}、獄案(刑部省裁断の判決案)は40日間{徒以上の刑を定めて裁断すべきものをいう}。文書の受付日(送付日・受理日)、及び、囚徒の拷問に要する日数は、いずれも日程期限の範囲に含まない。もし事を急ぐ場合、及び期限内に終了すべきことがあれば、この例を用いない。(訴訟上の案件で、当事者の)召喚の判断を下した場合は、3日を期限とすること。もし出頭しなかったならば判決を猶予すること。猶予後も20日目までに出頭しなかったならば、主典が事態を検出して、(当事者を待たずに)事を量って判決すること。事態に期限がある場合は、この例を用いない。太政官の詔勅施行について、案が成って以後の頒下には、それぞれ書写の期限を与えること。50紙以下は1日間。この紙数を超過するときには、50紙以上ごとに期限1日を追加すること。追加が多くなったときでも、計3日を超えることはできない。赦書〔しゃしょ〕(=恩赦の詔勅)は、紙数が多かったとしても、2日を超えることはできない。軍事の急用で、事柄に急ぐ期限のある場合、みな(案の成った)当日に(官符を)送出し終えること{もし本司(官符作成にあたる左弁官/右弁官)の人が少なく、量的に処理をこなせない場合は、いずれも比司(もう一方の弁官ないし少納言局(外記局))の人を割り当て補助するのを許可すること。}。


 

○63 訴訟条(または訴訟従下始条)


訴訟は、みな下級官司(への申告)から始めること。おのおの前人(=被告人)の本司本籍地に申告すること。もし遠隔地である、及び、支障があるならば、至近の官司に申告して裁断すること。裁断を終え、訴人(=原告人)が不服として上訴しようと欲したならば、不理状(当事者が判決に不服の旨を記した文書で、判決を下した官司が発行する)を請求して、(下級官司から上級官司へという)順序どおりに上陳すること。もし3日以内に(不理状が)発給されない場合は、訴人は、発給しない(担当官の)官司姓名を記して、(不理状なしで上級官司へ)上訴することを許可する。官司はその訴状によって、すぐに発給しない所由を下推する(=下級官司へ書を下して反報を聞く)こと。然る後に判決裁断する。(訴訟が、最上級官司である)太政官に至って、受理されない(或いは判決に不服がある)場合は、上表する(=天皇に文書を奉る)ことができる。


 

○64 訴訟追摂条


訴訟にあたって、(当事者を)召喚し対面して尋問すべきことがあるときに、もしその人が引き延ばし逃避して、2つの期限(前々条(受事条)で定められた出頭期限3日・判決猶予期限20日)までに出頭に赴かない場合は、(前条で定めた下級官司から上級官司へという)順序を越えて上陳するのを許可すること。そうして(上陳を受理した官司が)下推(=下級官司へ書を下して反報を聞く)・審理・判決するようにすること。


 

○65 陳意見条


事情があって、意見を述べ封進〔ふしん〕(=密封で上表)しようと欲したならば、任意に封上〔ふうじょう〕すること。少納言が受け取って奏聞すること。開封してはならない。もし官人の非法・不正、及び、抑圧・弾圧があることの告発ならば、弾正が受理し推断すること。事実かつ正当な内容であれば(結果を)奏聞すること。そうでない場合は(封上者を)糺弾すること。


 

○66 公文条


公文(=公文書)は、ことごとく真書(楷書)で作成すること。簿帳(この場合、大税帳・計帳・田籍などの類)・科罪、計贓〔けいぞう〕(=贓贖〔あがもの〕を計ること)、過所(=関の通行許可書)、抄【片旁】〔しょうぼう〕(返抄や門【片旁】など)の類で、数字があるものについては、大字〔だいじ〕(一二三でなく壱弐参)にすること。


 

○67 料給官物条


官物を(庫蔵から)出給したならば、上抄(授受した公文書を記録すること)の日に、つぶさに匹・丈・斛・斤(などの単位)、数量、出給した官司の(担当官の)姓名を記載すること。


 

○68 授位任官条(または喚辞条)


位を授かり任官する日に、(天皇の面前、口頭で)呼び指す称は、三位以上は、先に名を、後に姓を。四位以下(五位以上)は、先に姓を、後に名を。(天皇の面前、口頭で)授位任官の日以外は、三位以上は、姓のみを呼ぶこと{もし右大臣以上ならば官名を呼ぶこと}。四位は、先に名を、後に姓を。五位は、先に姓を、後に名を。六位以下は、姓を取り去って、名を呼ぶこと。ただし(天皇の面前以外の場で)、太政官太政官機構のうち弁官を除く大納言以上)に於いては、三位以上は大夫〔だいぶ(?)〕と呼ぶこと。四位は姓を呼ぶこと。五位は先に名を後に姓を。寮以上(弁官、及び、神祇官・省・台・府・坊・職・寮、ならびに大国・上国)に於いては、四位は大夫と呼ぶこと。五位は姓を呼ぶこと。六位以下は姓名を呼ぶこと。司、及び、中国以下(中国・下国)では、五位は大夫と呼ぶこと。


 

○69 奉詔勅条


詔勅をうけたまわったとき、及び、奏聞を経て既に試行の段階となった太政官奏であっても、事理を検討して灼然〔じゃくねん〕とせず(=はっきりしない、といった意味か)不便不都合であるならば、施行を命じられた、或いは、不都合を発見した官司は、事情に応じて執奏する(=現場の意見を奏す)こと。もし緊急の軍事で施行を中断できない場合は、施行しつつ奏上すること。執奏が理に適っているならば、内容に応じて(奏上者の)考を進めること。(不都合を)知りながら奏上しない、及び、奏上が理に適わない場合は、また内容に応じて降格すること。


 

○70 駅使至京条


駅使が京に到着して、機密の事柄を奏上したならば、人と会話させてはならない。蕃人の帰化については、館(蕃客用館舎)に置いて粮食を与えること。これもまた任意に往来を出入りさせてはならない。


 

○71 諸司受勅条


諸司が勅をうけたまわった場合について、中務省を経ずに直接来たもの、及び、口勅(口頭で伝えられる勅)を宣った場合には、従ってはならない。もし口勅をうけたまわって物を求められたならば、中務省を通してはならない。諸司が勅をうけたまわってそのまま供進すること。そのとおりに(?)奏聞すること。


 

○72 事有急速条


緊急時で勅旨を出さざるを得ないときに、もし太政官を経ていては遅滞する恐れがあるならば、中務省はまず諸司に移(=伝達)すること。正勅(2条「勅旨式条」に従った正式の勅旨)は後に行うこと。


 

○73 官人判事条


官人の政務処理について、草案を作成してのち、自ら不備に気付いた場合には、牒を上申して追改するのを許可すること。


 

○74 詔勅宣行条


詔勅を宣行する(=中務少輔以上が覆奏の後、施行のため太政官に送る)とき、文字の脱落、誤りを発見した場合、内容に関わる改動がなければ、本案(=中務省に保管している詔勅の案)を検討し、明らかに知り得たならば、すぐに改めて正しいものとすること。覆奏してはならない。詔勅以外の公文書で誤脱があったときは、長官に報告して改正すること。


 

○75 詔勅頒行条


詔勅を頒行する際、民政に関係する事柄であるならば、頒行が郷に到着したとき、いずれもみな里長・坊長に部内を巡歴させ、人々に述べ示して、一人一人がきちんと詳しくわきまえておくようにさせること。


 

○76 下司申解条


下司〔げし〕(=下級官司)からの上申書は、道理や言葉が不備であっても、みな受理するようにすること。書面にて下推する(=下級官司へ書を下して反報を聞く)こと。(下級官司からの上申が)道理的にも事実面からももっともなことであるのに、(上級官司が)妄りに突き返すようなことがあった、及び、道理であるのに抑え退けたならば、順序を越えて(さらに上級の官司へ)上申するのを許可すること。上符〔じょうふ〕(=上級官司からの下達文書)に理不尽があったならば、また執申する(=現場の意見を上申する)のを許可すること。


 

○77 諸司奏事条


諸司の奏事(=通常は太政官が、諸司の解状を得て、それを天皇に上奏するが、諸司が直接上奏する場合(たとえば71条「諸司受勅条」のような)もある)は、みな長官を経由せずに安易に上奏することはできない。もし機密のことがある、及び、長官のことを論ずる場合は、この例に含まない。


 

○78 須責保条


保人〔ほうにん〕(=保証人のうち、単に事実の有無を証明するだけである証人とは異なり、事実の発生・不発生を担保し連帯責任を負う立場の人。ただし現実には証人も保人も同様の保証責任を負っていた)を必要とするとき(たとえば、条件付きで釈放する囚人には、逃亡しないという保証が必要)は、みな(保人の人数を)5人と制限すること。


 

○79 受勅出使条


勅をうけたまわって使に出るときには、お言葉をうけたまわってから後、正当な理由なしに自宅で寝泊まりすることはできない。


 

○80 京官出使条


京官が公事によって使に出るときは、みな太政官に報告して発遣すること。(目的地に至るまで)経由する諸国に対しての(省台の)符や(府・庫・寮・司の)移は、弁官がみな便使〔たよりづかい〕(=別の目的で発遣される便宜的な使を言い、ここで述べている使者の本来の目的は符移の送達ではないから、こう呼ばれる)に託して送付させること。帰還の日に、(符移を受け取った諸国が発行した受領の)返抄を太政官に送ること{もし使者が直ちに京に向かわない場合は、その返抄は、所在の司(その使者が逗留するところの国司)に渡すこと。(その国の発遣する)便使に預けて(京へ)送ること。急用であれば、専使〔たくめづかい〕(=特定の使命のためだけに発遣される使。便使に対する語)を割り当てて送ること。}。


 

○81 責返抄条


(在京諸司は、)諸々の使が帰還した日には、みな(その使者の持つ)返抄を請うこと。


 

○82 案成条


草案・本案を作成、また他司から来た公文書を記録・成巻したならば、つぶさに収蔵目録を箇条書きに記録する(そして、案にその目録を副えて収蔵する)こと。目録にはみな軸を付けること。その上端には、何年何月に何という司が納めた案目、と記すこと。15日ごとに庫に納めて終了させること。詔勅の目録(及び本案もか)は、別所に安置すること。


 

○83 文案条


文案について、詔・勅・奏の案、及び、考案、補官・解官の案、祥瑞・財物(財物帳=争訟があったときの判断文)・婚(五位以上の妻妾の名簿)・田(田籍・田図)・良賎良賎の別を判定したもの)・市估(市司の作成した貨物時価簿)の案、このような類は、永久に保存すること。それ以外は、年ごとに検討・選択して、3年に1度、除棄すること。つぶさに(除棄したものの)記録目録を作ること。(保存を延長して)保存期限を作る場合は、事情を量って保管収納すること。期限が満ちたならばそれにしたがって除棄すること。


 

○84 任授官位条


任官・授位したならば、任授したところの官司(式部省兵部省、及び、中務省太政官)は、みなつぶさに官・位・姓名、任授するときの年月、本籍、年紀(=年齢)を記録して、名簿(任官簿・授位簿)を造ること{任官簿は、本籍・年齢を除く。}。官人は連署して印記する(その官司の印を捺す)こと。もし転任(=ここでは、時代が下ってからいう遷任も含めた異動)したり、死亡したり、及び、事情があって、正当な理由で任を去ったならば、名簿の下に朱書で注記すること。考によって解官(=解任)した場合、及び、罪を犯して(刑部省が)除名・免官・免所居官することがあったならば、(官や位を)解免した官司は、また解免の事状を記録して、前に準じて名簿(解簿・免簿)を造ること。記録したならば元の任授したところの官司に報告して、(その司にある任官簿・授位簿の)案に注記し、除くこと。もし考解・除免となった人が、再び叙用(=叙位・任用)されることができたならば、叙用した官司は、記録して、解官したところの官司に報告して、(解簿・免簿から)除くこと。(再び)叙位されるまでの間に、本籍地に在って死亡した場合、刑部省に知らせて(解簿・免簿に)注記し、除くこと。その他(四部官(四等官・四分官)以外で)、職掌による必要から(その官職にある人の)名簿を造らねばならない場合は、いずれもこれに準じること。


 

○85 授位校勲条


授位や、叙勲の検討といった類は、原則としてまとめて奏上すべきであるが、考第の判定が未だ完了しないもののあるときには、完了したものから順に奏上すること。(全てが完了するのを)待って、停滞させるようなことをしてはならない。


 

○86 官人父母条


官人の父母が、病患して危篤であるときには、(その官人を)遠使に差し充ててはならない。


 

○87 外官赴任条


外官が赴任するとき、子弟の年齢が21歳以上の場合は、(その子弟を)勝手に随行することはできない{畿内の任官については、この限りではない。}。(任地への)見礼訪問については許可すること。


 

○88 行程条


(標準の)行程について、は1日に70里(約37.1km)、徒歩は50里(約26.5km)、車は30里(約15.9km)とする。


 

○89 遠方殊俗条


遠方の殊俗(=異なる風俗)の人が来朝したならば、(その人が初めて到着した)所在の官司は、ぞれぞれ図(=風俗を描いた絵か)を造ること。その容状・衣服を描き、(図に続けて)つぶさに名号(=国号と人名)・処所(=国の所在・地理)、併せて風俗(=気候・習俗)を注記すること。終わったならば、奏聞すること。




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