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内外の文武官の初位以上は、毎年、当司の長官が、その属官を考課すること。考課するにあたっては、みな詳細に1年の功過行能を記録して、それぞれ集めて本人に対し読み示すこと。その優劣を論議して、9等第を定めること。8月30日以前に校定すること。京官畿内は、10月1日に、考文を太政官に申し送ること。外国〔げこく〕は、11月1日に、朝集使に持たせて申し送ること。考の後の功過については、いずれも来年に入れること{もし、本司が考を終わって以後、省(式部・兵部)が校定する以前に、罪を犯してその判決を下され終えた場合には、状況に応じて、解任及び考第を降下するようであれば、そのまますぐに処置をしてから校定すること。功があって進める場合も、またこれに準じること}。長官がいない場合は、次官が考課すること。
官人の行迹の功過を考に付けるにあたっては、みな日々記録しておくこと。前任の官で私罪を犯すことがあり、その裁断がいまの任に就いてから下された場合には、現任の官での犯罪と同じ扱いをする。改任したときに、前任での上日を通計して考課する場合には、前任での功過もみな考課すること。注考の官人(年間の功過行能を総合し9等の考第を注記する役人=当司の長官)は、ただその実際のことのみを記述することができる。みだりにその他のことを加えてはならない。もし、注状が矛盾して考課の上下が不当{行迹や行状が高いのに考第が下がっている、或いは、考第は優秀となっているが行迹は劣っている、といった類をいう}、及び、その功過を隠して、それによって考課を上下させたならば、それぞれ過失の軽重に応じて、当該の官人の考課を下げること。朝集使の考課が不正である場合も、またこのようにする。
徳義が名高いことがあれば、1善とすること。
清潔謹慎が顕著であれば、1善とすること。
公平といえるならば、1善とすること。
勤めに力を尽くし怠らぬようであれば、1善とすること。
最の条。
神祇の祭祀は、常典に違うことがなければ、神祇官の最とすること{少副以上についていうものである}。
献替、奏宣、政治の論議が理に適っているならば、大納言の最とすること。
旨を承ったとき、それを聞き違うことなく、おっしゃったことを明敏に理解するようであれば、少納言の最とすること。
庶務を受理し、滞りなく処分したならば、弁官の最とすること{少弁以上をいう}。
侍従し、覆奏し、滞りなく施行したならば、中務の最とすること{少輔以上をいう}。
人物を選考し才能の抜擢に尽くしたならば、式部の最とすること{少輔以上をいう}。
僧尼が道に適い、系譜の次第が乱れなければ、治部の最とすること{少輔以上をいう}。
戸籍に漏れや詐称といった乱れがなく、倉庫に虚偽不正がなければ、民部の最とすること{少輔以上をいう}。
武官を選考し、兵士・兵器をきちんと整えているならば、兵部の最とすること{少輔以上をいう}。
判決が滞らず、与奪が理に適っているならば、刑部の最とすること{少輔以上、及び判事をいう}。
きちんと保管し、出納が明らかならば、大蔵の最とすること{少輔以上をいう}。
食物産物を供するに有能で、配下の諸部をよく主宰し治めたならば、宮内の最とすること{少輔以上をいう}。
巡察が厳明であり、糺弾したことが必ず当たっているならば、弾正の最とすること{忠以上、及び巡察をいう}。
礼教を興崇し、盗賊を禁断したならば、京職の最とすること{亮以上をいう}。
御膳のみつくろいに浄戒で誤ることがなければ、主膳の最とすること{亮、及び典膳以上をいう}。
統率にあたって、作法や配置がきちんとしており、警守に失態がなければ、衛府の最とすること{尉以上をいう}。
音楽がよく整い節奏を失わなければ、雅楽の最とすること{助以上をいう}。
僧尼が乱れず、番客が満足しているならば、玄蕃の最とすること{助以上をいう}。
国用を支度し、計算が明らかならば、主計の最とすること{助以上をいう}。
きちんと保管し、出納が明らかならば、主税の最とすること{助以上をいう}。
廐の馬をよく調教し飼養し、飼丁の脱走者を出さなければ、馬寮の最とすること{助以上をいう}。
慎重に曝涼し、出納が明らかならば、兵庫の最とすること{助以上をいう}。
朝夕に常侍して、拾遺補闕したならば、侍従の最とすること。
監察を怠らず、出納が明密であれば、監物の最とすること。
宿衛に勤め、進退が礼に適っているならば、内舎人の最とすること。
職事が相当な場所に整理配置されており、その考課が常に正当なものであれば、次官以上の最とすること。
清者を揚げ、濁者をはげまし、考課が常に正当なものであれば、考問の最とすること{式部・兵部の丞をいう}。
訪察が精審で、庶事を兼挙したならば、判官の最とすること。
公の勤めを怠らず、職掌に欠けることがなければ、諸官吏(品官や別勅才伎長上)の最とすること。
事を記すのに勤め、稽失を隠すことがなければ、主典の最とすること。
詳録が正確で、校正が行き届いているならば、文史(図書寮の助以上)の最とすること。
事を記すのに明確で、勅旨を失っていなければ、内記の最とすること。
訓導に方があり、生徒の業が充ちたならば、博士の最とすること。
占候医卜(陰陽・天文・療病・亀卜)で効験が多ければ、方術の最とすること{10回のうちに7回の効験を得たのを多いとすること}。
盈虚〔ようきょ〕(満ち欠け)を推歩〔すいぶ〕し、理を究めることが精密であるならば、暦師(暦博士)の最とすること。
市中が擾乱せず、奸濫が行われなければ、市司の最とすること{佑以上をいう}。
推問することが真情を得ており、申弁が明了公平であるならば、解部の最とすること。
礼儀が興行され、兵具が充備されているならば、大宰の最とすること{少弐以上をいう}。
諸事をしっかりと済ませ、所部を粛清したならば、国司の最とすること{介以上をいう}。
愛憎があることなく、言いつけの任務をよく成したならば、国掾の最とすること。
防人を調習し、兵具を充備したならば、防司の最とすること{佑以上をいう}。
問察に方があり、行き来の人が滞ることがなければ、関司の最とすること。