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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第二十九 獄令 全63条中43〜63条

(最終更新日:10.09.27

 − 目次 −




 

○43 五位以上条


五位以上が罪を犯し拘禁するときは、在京の場合はみな、先に奏上すること。もし死罪を犯した場合、及び在外の場合は、先に拘禁して後、奏上すること。いずれも(他の罪囚と隔離して)別所に監禁するのを許可すること。婦女の(五位以上の)有位者もまた同じ。もし五衛府の志〔さかん/そうかん〕以上及び兵衛が罪を犯して追捕すべきときは、いずれも鞫獄〔きくごく〕(=取り調べ担当)の官司が、本府(犯人の所属する衛府)に知らせて追掩〔ついあん〕(=指名手配)するのを許可すること。本府はすぐに上奏した上で逮捕し(身柄を取り調べ担当の官司へ)送検すること。主帥及び衛士(が罪を犯して追捕すべきとき)は、(上奏を経ず)すぐに本府が逮捕して(身柄を取り調べ担当の官司へ)送検すること。


 

○44 奉使条


使を奉って犯人追捕に向かうことがあれば、みな本部本司(犯人が所属する官司)に通報すること。単にすぐに収捕することはならない。もし急を要す密(=謀叛以上の犯罪)ならば、かつがつ捕らえられるような場合には、本司に通報してその公文を取る一方で直ちに逮捕に発遣すること。


 

○45 婦人在禁条


婦人を収監しているときは、みな男夫と所を別にすること。


 

○46 当処長官条


〔しゅ〕(=ここでは、収監している未決段階の被告・原告)は、当処(未決囚を収監している官司)の長官が、15日に1度、検行すること。長官がいなければ次官が検行すること。(裁判の遅れで)囚(の状態)が引き延び、長期間禁獄して推問されていない場合、もしその旨を知ったときは、十分な証拠が揃っていないとしても、或いは(原告が)1人を複数の犯罪で告言しているとき、及び、被告の告言された犯罪が複数であるときに、重罪については結審し、軽罪について未だ終えていない場合、このような徒はいずれも、検行の官司はすぐに断決〔だんけつ〕(=判決を下し刑を執行)すること。


 

○47 盗発条


(犯人逮捕の有無を問わず、諸国で)強窃盗事件の発生、及び、徒〔づ〕以上の囚については、それぞれ本犯〔ほんぼん〕(=刑の減免等の処分を受ける前の元々の罪)に依って、つぶさに発生及び判決月日を記録し、年別に帳をまとめて、朝集使に預けて、太政官に報告すること。


 

○48 犯死罪条


死罪を犯して禁獄しているとき、悪逆(=直系尊属への暴行・殺人予備罪、及び、二等親以内の尊属・長上と外祖父母への殺人罪)以上でなく、父母の喪に遭い、婦人が夫の喪をし、及び、祖父母の喪をして相承(跡継ぎ)となる人には、みな假〔いとま〕を7日給って発哀〔ほつあい〕(=挙哀〔こあい〕=(現地へ赴かずに)死者へ哀悼の意を捧げるため哭声をあげること)させること。流・徒の罪(で未だ服役していない人の場合)には20日。すべて旅程は給付しない。


 

○49 鞫獄官司条


鞫獄〔きくごく〕(=取り調べ担当)の官司で、(訊問担当者が)訊問される人と五等の内親であるとき、及び、三等以上の姻戚、併せて、学業を授かった師、及び、復讐や不仲なことがあれば、みな(担当者を)替えて訊問するのを許可すること。帳内・資人を経ているときの(?)、本主についてもまた同じ。


 

○50 検位記条


犯罪があって位記を調べるとき、もし位記が紛失し、或いは遠隔地にある場合は、みな案(=式部省に保管してある写し)を調べること。


 

○51 有疑獄条


国に疑獄(=罪跡がはっきりせず有罪・無罪の判決を下しがたいもの)があって結審しない場合は、刑部省に移送して罪を議すこと。もし刑部でもなお疑わしい場合は、太政官に上申すること。


 

○52 贖死刑条


死刑を贖〔ぞく〕す(=換刑として実刑の代わりに相当額の贖銅〔ぞくどう〕を納入する)ことは、80日を期限とすること。流は60日、徒は50日、杖は40日、笞は30日。もし理由もなく期限が過ぎるまでに納入しない場合は、赦に会おうとも免除しない。披訴〔ひそ〕(=控訴)することがあったとしても、控訴審での判決が前の判決から変更されない場合は、また(赦に会おうとも)免除の範囲にない。もし官物(に損害を与えてその賠償)を徴収する場合は、直〔あたい〕(=労賃(?))になぞらえること。50端以上になる場合には100日、30端以上に50日、20端以上に30日、20端未満に20日。もし官物を損傷して、正贓〔しょうぞう〕(=元の現物)及び贖物〔ぞくもつ〕(=賠償物)を徴収する場合で、それに充当する財がなければ、官(=官司(?))が役使し、その労働で相殺すること。その物(賠償物)が多いとしても、(私人ではなく官に入れる場合は)5年を期限に止めること。{1人の1日に、(労賃ぶんとして)布2尺6寸を相殺すること。}


 

○53 給席薦条


獄には、席〔むしろ/しゃく〕(=「ござ」。い草・竹・藁・蒲〔がま〕・その他植物を編んだ敷物の総称で、鎌倉時代後期以降畳敷きが普及するまでは、もっぱら室内で用いられ、かつ必須であった、現代の畳に相当するような敷物)、薦〔こも/せん〕(=植物「まこも」を粗く織った敷物で、出入口に垂らしたりもする。席よりも粗い)を給付すること。紙、筆、及び、兵刃〔ひょうにん〕・杵棒〔しょぼう〕(武器刃物)の類は、いずれも入れてはならない。


 

○54 有疾病条


獄囚に疾病があれば、主守〔しゅしゅ〕(=看守に当たっている官人)は申牒〔しんちょう/しんぢょう〕(=上申)すること。判官以下は、自ら実状を検知して、医薬を給付し救い癒すこと。重病のときは枷【木丑】〔かちゅう〕(=首かせ・足かせ)を脱がせること。そうして家の者が1人、拘禁されている所に入って看病するのを許可すること。(獄囚が)死ぬことがあれば、またすぐに同じく検知すること。もし(非法な死や自殺など、病気以外の)他の理由があれば、状況に応じて問いただすこと。


 

○55 応給衣粮条


獄囚に、衣粮〔いろう/えろう〕(=衣食)、薦〔こも/せん〕・席〔むしろ/しゃく〕(=いずれも敷物)、医薬を給付するにあたって(の費用)、及び、獄舎を修理する類(の費用に)は、みな贓贖〔ぞうぞく/ぞうしょく/あがもの〕(=罪人が官司に納入した盗品や実刑に代わる代物)等の物を以て充当すること。無ければ官物を用いること。


 

○56 至配所条


流人が配所に到着して居作(=服役)したならば、いずれも官粮〔かんろう〕を支給すること{加役〔かやく〕流もこれに準じること}。もし留住〔るじゅ〕(=現住地に住まわせたまま服役させること)して居作する場合、及び、徒役する場合は、いずれも私の食粮を食〔は〕むこと。家が貧しくきちんと準備できなければ、二親等以上の親族が交代で50日の食粮を準備すること。尽きるに応じて公〔おおやけ〕が(?)支給すること。もし家を離れること遙かに遠く、食粮を送ることができない(?)場合、及び、家の者が知らない(?)場合は、官司(?)が衣粮を支給すること。家の者が到着したならば、支給ぶんに従って徴収し納めさせること。{見囚〔げんしゅ〕(=収監している未決囚や、判決は出ているものの未だ配所へ送っていない囚の類)で、(家の者が)食粮を送ることができない(?)場合は、またこれに準じること。}


 

○57 在京繋囚条


在京の繋囚〔けいしゅ〕(=禁獄されている獄囚)、及び、徒役の処には、常に弾正を毎月巡検させること。(罪人を)安置し役使するにあたって法に従っていないことがあれば、事態に応じて糺弾すること。


 

○58 犯罪条


罪を犯し、及び、官物を欠損した場合に、赦降〔しゃごう〕(=恩赦や犯した罪の軽減)を経て(賠償等を)免除されるべきときに、別勅で推徴〔すいちょう〕(=犯罪の審理や損失分の徴収)の指示があったならば、赦降の例に依って執聞〔しゅうもん〕(恩赦に会った事状を記録して奏聞)すること。


 

○59 放賤為家人条


奴婢を)賤身分から解放して家人〔けにん〕及び官戸〔かんこ/かんご〕とした場合に、当人が逃亡して30日を経過したならば、いずれも再び賤身分に充てること。


 

○60 資財入官条


罪を犯して資財を没収した場合、もし(一部の縁者が)縁坐を免除されたならば、或いは律に依って縁坐としてはならないならば、ぞれぞれ分法〔ぶんぽう〕(=没収資財の返還規則)を計算して(没収資財の一部をその縁者に)返還すること。別勅で罪を降〔ごう〕(=軽減)して軽い罪に準じたならば、没収した物が現存しているときには、また返還すること。{元の罪には縁坐規定がない(したがって資財没収されない)が別勅で資財田宅を没収したならば、罪人の所属する房戸(=罪人の家庭)のみ没収(して残りの縁者のぶんは返還)すること。}もし他人の寄託や貸借を受けたもの、及び質物〔しちもつ〕(=出挙〔すいこ〕(=利子付貸与)の抵当)の類については、没収の段階ですぐに(寄借主ないし質主が)言請〔ごんしょう〕(=申し立て)することがあって、その証拠が明確であるならば、みな(没収対象として)記録する範囲にない。競財〔きおいたから〕(=その帰属について複数の主張がある財物)があって、官司で判断できない場合は、法に依って(裁判を行い)検校(罪人の所有物と裁決が出たならば没収、そうでないときは帰属者に返還)すること。


 

○61 弁證已定条


弁證〔べんしょう〕(=供述と証言)が確定した後で、赦に会ってさらに(その弁證を)翻した場合(たとえば確定した弁證が今回の恩赦の対象であるかないかによって自分が得するような供述に変更するなどの類)、ことごとく赦の前の弁證を以て(罪を)定めるようにすること。


 

○62 傷損於人条


人を傷害した場合、及び、誣告〔ふこく/ぶこく/むごう〕(=虚偽の告発)して罪となった場合、その人が贖〔ぞく〕す(=換刑として実刑の代わりに相当額の贖銅〔ぞくどう〕を納入する)ときには、銅は、告発し、及び、傷害された家に納入すること。両人が互いに犯して共に罪となった場合、及び、同居者が互いに犯した場合は、銅は官司に納入すること。


 

○63 杖笞杖


〔じょう〕(=刑具)は、みな節目〔ふしめ〕を削り去ること。長さは3尺5寸(約106cm)。囚を拷問するとき、及び、通常の杖刑の執行に用いる杖の、大きい頭経〔はしわたり〕4分〔ぶ〕、小さい頭経3分(直径約0.9cm以上1.2cm以内)。笞杖〔ちじょう〕(=笞刑用の刑具)のも、大きい頭3分、小さい頭2分(直径約0.6cm以上0.9cm以内)。枷〔か〕(=足かせ)の長さ4尺(約121cm)以下3尺(約91cm)以上。梏〔こく〕(=字は手かせの意だが足かせのこと)の長さ1尺8寸(約54.5cm)以下1尺2寸(約36cm)以上。杖笞の判決が出たならば、臀〔しり〕に受けること。拷訊〔こうじん〕(=拷問)するときは背中と臀を分けて受けること。数は等しくすること。




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