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皇祖〔おうそ〕(天皇の先祖または始祖に対する敬称。または天皇の亡祖父に対する敬称。※文章の中でこの単語を使う場合、平出(=平頭抄出。敬意を表す意味で改行して行頭に書くこと)する。以下同じ。)
皇祖妣〔おうそび〕(=天皇の亡祖母に対する敬称。)
皇考〔おうこう〕(=天皇の亡父に対する敬称。)
皇妣〔おうび〕(=天皇の亡母に対する敬称。)
先帝〔ぜんだい〕(=太上天皇の崩御の後、またそれ以前のあらゆる天皇に対する敬称。)
天子〔てんじ〕
天皇〔てんおう〕
皇帝〔おうだい〕
陛下〔へいげ〕
至尊〔しそん〕(=天皇)
太上天皇〔だいじょうてんおう〕(=譲位した前天皇の尊号。)
天皇諡〔てんおうのし〕(=天皇の、生前の行迹を累ねた死後の称号。)
太皇太后〔だいおうだいごう〕(=天皇の祖母の身位を示す称号。){太皇太妃〔だいおうだいひ〕。太皇太夫人〔だいおうだいぶにん〕も同じ。}
皇太后〔こうだいごう〕(=天皇の母の身位を示す称号。){皇太妃〔こうだいひ〕。皇太夫人〔こうだいぶにん〕も同じ。}
皇后〔おうごう〕(=天皇の嫡妻の身位を示す称号。)
右はみな平出〔びょうしゅつ〕(=平頭抄出=文中にこれらの語を用いるときは敬意を表して行を改め行頭に書く)すること。
大社〔だいしゃ〕 陵号〔りょうごう〕(=先皇の山陵の名) 乗輿〔じょうよ〕 車駕〔きょが〕 詔書〔じょうしょ〕 勅旨〔ちょくし〕 明詔〔みょうじょう〕(=詔旨の美称) 聖化〔せいか〕(=天皇の徳化) 天恩〔てんおん〕(=天皇の恩恵) 慈旨〔じいし〕(=天皇の言葉) 中宮〔ちゅうぐう〕 御〔ご〕{至尊(=天皇)を指していう場合。} 闕庭〔けつじょう〕(天皇の居所) 朝庭〔ちょうじょう〕 東宮〔とうぐう〕 皇太子〔おうだいし〕 殿下〔でんげ〕
このような類はいずれも闕字〔けつじ〕(=文中にその語を用いるときは敬意を表してその語の上に1字ぶんの空白をあける)すること。
一般論や異国の話など、平闕〔びょうけつ〕(平出と闕字)する名称に言及するとき、特に(その対象を)指して説くのでないならば、みな平闕しない。
天子の神璽〔じんじ〕。{践祚の日の寿〔よごと〕の璽〔しるし〕(いわゆる神器)をいう。宝にして実用しない。}内印(=「天皇御璽」の印){三寸(約8.9cm)四方}は、五位以上の位記、及び諸国に公文書を下すときに捺印すること。外印〔げいん〕{二寸半(約7.4cm)四方}は、六位以下の位記、及び太政官の文案〔もんあん〕に捺印すること。諸司印{二寸二分(約6.5cm)四方}は、太政官に上申する公文書、及び案・移・牒に捺印すること。諸国印{二寸(約5.9cm)四方}は、京に上申する公文書、及び案・調物に捺印すること。
施行する公文書には、みな事状(本文)、数量、及び、発行年月日、併せて、署名、継ぎ目のところ(二紙以上にわたる場合)、駅鈴・伝符の剋数、に踏印(捺印)すること。
駅馬・伝馬の給付は、みな駅鈴(駅馬の利用資格証明)・伝符(伝馬の利用資格証明)の剋数(刻み目)の数に依ること。{急用であれば1日10駅(約30里×10=300里=約159km)以上、緩い用事であれば8駅(約30里×8=240里=約127km)。帰還の日に事が緩い場合は6駅(約30里×6=180里=約95km)以下。}親王及び一位に、駅鈴10剋、伝符30剋。三位以上に、駅鈴8剋、伝符20剋。四位に、駅鈴6剋、伝符12剋。五位に、駅鈴5剋、伝符10剋。八位以上に、駅鈴3剋、伝符4剋。初位以下に、駅鈴2剋、伝符3剋。みな位階に応じた剋数の他、別に駅子を1人給付すること。{六位以下は、事状に応じて増減すること。必ずしも数を限定しない。}駅鈴、伝符は、帰還到着して2日以内に(京ならば太政官の少納言経由で中務省の主鈴に、諸国ならば長官に)送り納めること。
諸国に鈴を給付するにあたっては、大宰府に20口。三関及び陸奥国に各4口。大上国に3口。中下国に2口。三関の国には、それぞれ関契〔げんけい〕を2枚給付すること。いずれも長官が管理すること。いなければ次官が管理すること。
車駕巡幸がある際、京師(京域)に留守番する役所には、鈴契(駅鈴と関契)を支給すること。量の多少は随時量って支給すること。
親王、及び、大納言以上、併せて、中務の少輔、五衛の佐以上には、いずれも随身符(割符の類)を支給すること。左側2つ、右側1つのうち、右符(右側の符)は身につけること、左符(左側の符)は内裏にたてまつること{身につけるにあたっては袋にいれること}。もし家にあって勤務時でないときに別勅で追喚(呼び寄せ)された場合には、符を検査して、合致したならば、然る後に承認し(随身として)任用すること。検査を終えたならば、左符は封印して使者に預けること。もし使者が到着したときに符がない場合、及び、検査して合致しないことがあったならば、承認任用してはならない。本司(大納言/中務少輔/五衛の佐以上の所属する官司)が追喚した場合はこの限りではない。
国に急を要する大事があって、使者を発遣し、馳駅〔ちやく〕(臨時の伝令を発すること)して、互いに報告しあったことがあったならば、毎年、朝集使は、つぶさに(駅を利用した)使の人の位姓名を記録し、併せて、発遣時の月日、利用した馬疋の数、告知した事柄を注記して、太政官に送ること。告知を承けたところもまたこれに準じること。太政官は審査して、駅を発遣してはならないことがあれば、事情に応じて問いただすこと。
国司の使の人は、解文を送って京に到着したときには、10条以上の場合は1日を期限として上申し終えること。20条以上ならば2日で終えること。40条以上ならば3日で終えること。100条以上ならば4日で終えること。
在京の諸司は、用事があって駅馬に乗る場合には、みな本司が太政官に上申して、奏してから支給すること。
駅使が、路程で病気となり、馬に乗ることができない場合、携行している文書は同行の人(奴を除く従人)によって宛先へ送らせること。もし同行の人がいない場合は、駅長によって宛先(への最近接国府)へ送らせること。(文書を受領した)国司は使者を交替して逓送〔だいそう〕(国から国へ送付)すること。
国に、大瑞、及び、軍機(=軍政。つまり軍を動かすこと)、災異、疫病、境外の消息(異国や毛人の動向、または飢饉救援の類)があれば、いずれも使者を発遣して、馳駅して申上すること。
朝集使は、東海道は坂の東(駿河と相模の境界の坂の東。板東)、東山道は山の東(信濃と上野の境界の山。山東)、北陸道は神の済〔かんのわたり〕(越中と越後の境界の河。神済)以北、山陰道は出雲以北、山陽道は安芸以西、南海道は土左(土佐)等の国、及び、西海道は、みな駅馬に乗る(ことができる)。それ以外はおのおの当国の(民間の)馬に乗ること。
内外(京内・京外)の諸司は、執掌のあるもの(職員令で職掌を定めているもの。ただし全てではなく郡司等は含まない)を職事官とすること。執掌がないものを散官とすること。五衛府、軍団、及び、諸々の兵仗を帯するもの(馬寮、兵庫など)は武〔む〕(=武官)とすること{太宰府(地名)、三関の国、及び、内舎人は、武官の限りではない}。それ以外をいずれも文〔もん〕(=文官)とすること。
叙すにあたっては、親王に四品以上、諸王に五位以上、諸臣に初位以上。令の条文の中で階位と称しているものは正従上下を各々1階とすること。2階を合わせて1位とすること(すなわち上下をあわせて1位)。三位以上、及び勲位は、正従を各々1位とすること。その他の等と称しているものは、また階と同じとする。
文武の職事・散官の、朝参行立(朝儀参列時の並び)については、おのおの位順に序列すること。位が同じときには、五位以上は授位の先後を用いること。六位以下は年齢を以て決めること{親王は前に立つこと。諸王、諸臣は、それぞれ位の順にしたがって、(諸王/諸臣が)混じらぬよう、分かれて列立すること。}。
諸王の五位以上、諸臣の三位以上が、致仕(=定年退職)して、その身が畿内に在るならば季節ごとに、(諸臣の)五位以上の場合は年ごとに、いずれも内舎人に1度巡問させ、安否を奏聞すること。
弾正について、別勅で臨時に、他の官司の職務を検校させた場合には、弾正台の本務に当たらせることはできない。
内外の官について、勅で、(異なる管内の)他の官司の職務を執らせたならば、みな権検校とすること。比司(同じ管内で並列する官司、たとえば、ともに民部省管内である主計寮と主税寮といった例)の場合は、摂判〔しょうはん〕とすること(=署名には「判」と記入することになる)。
内外の百官(普通は主典以上の全ての官吏。ただし集解の或説では史生・使部・直丁も含むことにしてある)は、官司ごとに事務の閑繁を量って、それぞれ所属の官司で、分番(=交替勤務)して宿直すること。大納言以上、及び、八省の卿は、この例に含まない{通常の場合についていう。}。
京官は、みな開門の前に参上し、閉門の後に下がること。外官は、日の出に参上し、正午後に下がること。政務が繁忙であるときは、事務量に応じて帰宅すること。宿衛の官(兵衛・内舎人)はこの例に含まない。
詔勅(の発布に関わる事務)、及び、期限の迫った事務がある場合、併せて、過所(=関の通行許可書)の請求/給付、もしくは、官物の輸納/受納する場合、休暇の対象としない。