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付録:現代語訳「養老令」全三十編:

第二十九 獄令 全63条中01〜20条

(最終更新日:00.03.26

 − 目次 −




 

○01 犯罪条


犯罪があったならば、みな事が発覚したところの官司で審理・判決すること。在京の諸司の人、京及び諸国の人について、在京諸司で事が発覚した場合、徒〔づ〕以上を犯したならば、(身柄を)刑部省に送ること。杖〔じょう〕罪以下は当司で刑を執行すること。衛府が罪人を捉えた場合、京に本籍を置いていないときは、みな(京職ではなく)刑部省に送ること。


 

○02 郡決条


罪を犯したとき、笞〔ち〕罪は郡が判決・刑執行すること。杖〔じょう〕罪以上は、郡が判決して(身柄を)国に送ること。(国衙での)再審を終えて、徒〔づ〕・杖、及び流〔る〕の罪で(本人以外に働き手がない・流刑にするのが不適切などの理由で)杖に換刑すべき場合、また贖〔ぞく/しょく〕す(=物で罪をあがなう)場合は、そのままそこで徒・杖の刑を執行・贖を徴収すること。{刑部省で徒以上を判決したときもこれに準じること。}刑部省及び諸国で、流以上、もしくは除免官当の判決をしたならば、みな案(鞫状〔きくじょう〕(=訊問調書)と伏弁〔ぶくべん〕(=被告が判決を承服する旨の書類)、及び、断文(=判決文))を連写して、太政官に上申すること。太政官で再審して審理を終えたなら申奏すること。太政官で再審して、決着しないことがあれば、在外の場合は使(専使)を派遣して再度審理すること。在京の場合は、あらためて刑部省において審理すること。


 

○03 国断条


国の下した判決について、太政官で再審理が必要なものの場合は、太政官が量って使の人(=覆囚使)を差し向けること。強明に法律を理解している人を任用して、七道(行政区分)別に現在の囚人を巡回審理すること。審理を終了していながら判決が下されていない場合、(覆囚使は、国司の行う裁判の)進行を促し、判決を出させて、すぐに再審すること。再審を終えたならば、記録して報告すること。{もし国司が事実を枉〔ま〕げて判決し、使の人(=覆囚使)の推定によれば無罪であるとき、国司が事実を伏せたことを認め冤罪がはっきりとして免罪する場合は、(覆囚)使が任意に判決して放免すること。そうして事状を記録して報告すること。使の人は、国の判断と異なることがあれば、それぞれ事状を報告すること。もし審理をし尽くして、判決を下すべきであるにもかかわらず、使の人が判決せず、妄りに口実を設けて遅延させたならば、国司は事状を記録して太政官に報告して、使の人の考に附けること。}徒〔づ〕罪(=懲役刑)を国が判決して伏弁〔ぶくべん〕(=被告が判決を承服する旨の書類)を得たとき、及び、盗品を摘発されたり現行犯であることがはっきりしているならば、そのまますぐに使役すること。使を待ってはならない。それ以外は使を待つこと。使の人はそうして全て再審すること。審理し終えて、国の判断と同じになったならば、そのまま国に預けて配役させること。


 

○04 覆囚使条


覆囚〔ふくしゅ〕(=(徒以上の)再審)の使の人が到着したならば、まず獄囚(=犯罪の有無を問わず収監されている人)・枷【木丑】〔かちゅう〕(=首かせ・足かせ)・鋪席〔ふしゃく〕(=獄囚に支給する敷物)・疾病・粮餉〔ろうしょう〕(=(獄囚の)食事)のことを検査すること。法に従ってないことがあればまたその状況をもって報告し考に附けること。


 

○05 大辟罪条


大辟〔だいびゃく〕罪(=死刑)の執行があったならば、在京の場合は、死刑執行する司は3度覆奏すること。{執行の前1日に1度覆奏すること。執行する日に2度覆奏すること。}在外の場合は、符下〔ふげ〕の日(=執行命令の太政官府が出される日)に、(刑部省が(?))3度覆奏すること。{初めの日に1度覆奏すること。後の日に2度覆奏すること。}もし悪逆以上を犯したならば、ただ1度だけ覆奏すること。{家人奴婢が主を殺したならば、覆奏してはならない。}京内で囚(の死刑)を執行する日には、雅楽寮は音楽を停止すること。


 

○06 断罪条


断罪(=徒〔づ〕以上の宣告)をし、刑を執行するときには、いずれも犯状〔ぼんじょう〕(=判決)を宣告すること。大辟〔だいびゃく〕罪の囚(死刑囚)の刑を執行するならば、みな(物部ないし衛士・兵士が)警備して(庶人の場合は)枷〔か〕(=くびかせ)を着けて、刑所へ連行(?)すること。囚人1人に警備20人。囚人1人(増える)ごとに(警備を)5人加えること。五位以上、及び、皇親は、に乗るのを許可すること。親属・友人と決別の挨拶を交わすのを許可すること。その日の未〔ひつじ〕(=午後2時頃)の後に刑を執行すること。囚人の身柄が京外にあるならば、奏報(=執行前の覆奏)のとき、馳駅〔ちやく/ちえき〕(=を使った急使)して(急いで)行き来してはならない。


 

○07 決大辟条


大辟〔だいびゃく〕罪(=死刑)を執行する場合は、みな市で行うこと。五位以上、及び、皇親について、犯した罪が悪逆以上でない場合は、家で自尽〔じじん〕(=自刃)するのを許すこと。七位以上、及び、婦人は、犯した罪が斬でなければ、人目につかない処で絞首すること。


 

○08 五位以上条


大辟〔だいびゃく〕罪(=死刑)を執行するとき、五位以上については、在京の場合は、刑部省の少輔以上が執行に立ち会うこと。在外の場合は、次官以上が執行に立ち会うこと。その他はいずれも少輔及び次官以下が立ち会うこと。立春より秋分に至るまでは、死刑を奏上・執行してはならない。もし悪逆以上を犯した場合、及び、家人奴婢が主を殺したならば、この令に拘わらない。大祀(践祚大嘗祭)、及び、斎日〔さいにち〕(=六斎日=殺生を避ける毎月8・14・15・23・29・30日)、朔日(=ついたち)、望〔もう〕(=陰暦15日)、晦(=みそか=月の最終日)、上下弦(=毎月8・9日と22・23日頃の月齢)、二十四気(立春・冬至・大寒など)、假日(=休日)には、いずれも死刑を奏上・執行してはならない。京に在って囚人の死刑を執行するならば、みな弾正台・衛士府に立ち会わせること。もし囚人が冤罪だとはっきりしていることがあるならば、執行を停止して奏聞すること。


 

○09 囚死条


囚人が死んで(喪に服すような間柄の)親戚がない場合は、みな空き地(空閑地)に仮に埋めて【片旁】(=木標)を上に立てること。その姓名を記して、そうして本属(本籍のある官司)に下すこと。流罪・移郷に処せられた人が道中に、及び、流罪・徒罪に処せられた人が使役中に死んだ場合、これに準じること。


 

○10 犯流以下条


〔る〕以下を犯して、除免官当するとき、奏上以前に死亡したならば、位記は没収しない。奏上のときに死亡を知らず、奏上後に死亡したと伝えた場合は、奏によって定めること。大赦によっても罪を許されないものについては、通常の例に依る(奏上前でも位記を没収)こと。もし雑犯〔ぞうぼん〕(=八虐・故殺人以外の罪)による死罪のとき、刑が定まってから赦〔しゃ〕にあって、刑の執行を完全に免除されたならば、現任の職事(官職)を解任すること。


 

○11 流人科断条


流人、及び、移郷の人の判決が確定したならば、みな妻妾を放棄して配所に赴いてはならない。もし(流移人が)妄りに(どこかへ)逗留(配所に赴かない)、許可なく帰還、及び、逃亡することがあれば、そのまますぐに太政官へ報告すること。


 

○12 配三流条


流人を配すときは、罪の軽重に依って、それぞれ三流〔さんる〕に配すこと。{すなわち、近・中・遠処のことである。}


 

○13 流移人条


流移の人は、太政官が量って配すこと。(流移を判決する)太政官符が(罪人の身柄を収監している刑部省ないし諸国に)到着したならば、季ごとに1度、(罪人を)送り出すこと。{もし太政官符が、季の末月に到着したならば、後の季の人と一緒に送り出すのを許可すること。}つぶさに随う家口〔けく〕(=家族)、及び、送り出す日月を記録して、便宜に従って配所に下すこと。互いに警備の人員を充てて、専使(領送使)が監督して、配所に送り届けること。配し終わったならば、速やかにはじめ送った処(刑部省ないし諸国)へ報告し、併せて太政官に報告して知らしめること。もし妻子が(出発地の)遠くに在って、また、容易に来ることができない場合は、あらかじめ追喚しておいて、一緒に発つことができるようにすること。妻子が到着しない間に、(出発地で)囚の身を使役するときは、取りあえず付近で公役〔くやく〕すること。そうして(妻子到着までに出発地で)すでに使役した日数は記録して、配所に下してからの日数と相殺するのを許可すること。


 

○14 逓送条


死囚を逓送する場合、みな道の途中の軍団の大毅に自ら監督させること。及び、それ以外の囚徒を逓送するとき、禁固する(刑具を着ける)場合は、みな少毅が監督すること。併せて警備を充てて、まちがいなく(罪人を)授受させること。


 

○15 在路条


流移の人が道中にあるならば、みな途中の国が食料を支給すること。食料を受けるごとに停留することが2日を超過してはならない。伝馬を支給するしないは、その時々で処分すること。


 

○16 至配所条


流移の人について、配所に到着して送り届け終わったならば、もと居たところを発った日月、及び、到着日を勘定して、移動期間を計算すること。もし領送の使の人(=領送使)が道中に滞留して、旅程の範囲外となった場合は、(流移人を)受けた官司は、事情に応じて罪に問い裁判すること。そうして事状を太政官に報告すること。


 

○17 六載条


流移の人は{移人とは、本犯が除名(だが、赦に会い移郷)する者をいう}、配所に到着して6年以後、仕官を許可すること。{反逆の縁坐流を犯した場合、及び、反逆(=謀反・謀大逆)によって死を免除して配流した場合は、この例でない。}本犯が流ではないものの特に配流した場合は、3年以後、仕官を許可すること。蔭があるならば、それぞれ本犯の収叙の法に依ること。現任を解いたとき、及び、除名の移郷でない場合は、年限は考解の例に準じること。


 

○18 犯徒応配居役者条


〔づ〕罪を犯して使役に配する場合、畿内は京師に送ること。在外は当地の官役(雑務)に服役させること。流罪を犯して(配所で)使役する場合、またこれに準じること。婦人は裁縫、及び、脱穀・精米に充てること。


 

○19 流徒罪条


〔る〕・徒〔づ〕罪で使役するとき、みな【金太】〔だ〕(=鉄製の首かせ)もしくは盤枷〔ばんか〕(=木製の首かせ)を着けること。病があれば外すのを許可すること。頭巾を着けさせてはならない。旬〔じゅん〕ごとに休暇を1日支給すること。服役している区域より出してはならない。病による休暇はその日数ぶんをあとに回すこと。服役日数が満ちたならば本籍のある官司に逓送すること。


 

○20 徒流囚条


徒流囚が服役中、囚1人に対し2人が警備すること。在京は、物部及び衛士を取って充てること。{1分は物部、3分は衛士。}在外は、当地の兵士を取って、交替で警備させること。




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